アロンソ、アストンマーチン移籍!
ベッテルの引退発表からわずか4日後の8月1日、アロンソの来季アストンマーチン移籍が発表された。契約は複数年だという。ベッテル引退にも驚いたが、たった4日の移籍劇にはさらに驚いた。
先週末の段階で、アロンソの来季の現実的な選択肢は①アルピーヌ残留、②アストンマーチン移籍、③引退、の3つだけ。アルピーヌはオコンの契約が24年まで続く一方、育成ドライバーのピアストリを早く引き上げないと他チームに奪われかねない状態だった。ベッテルを失うアストンマーチンにとっても、後継ドライバーはブランドの顔になる大物が望ましい。
結果、②が3者全員の落としどころとなったのは、まあ納得の結論。
ハンガリーGP決勝でアロンソがタイヤ交換後にオコンのブロックに遭い、リカルドがアルピーヌ2台をまとめてパスしていくシーンがあった。第2戦でも接触寸前のバトルがあったので、いまさら驚く光景ではないが、第13戦を迎えてもチーム内バトルが行われ、他チームの追い抜きまで許すあたりに妙なきな臭さを感じたものだ。裏で進んだ移籍話も背景にあったのだろうか?
ドライバーとしてのアロンソが健在であることに疑いはないが、仮に2年走った場合は43歳となり、動態視力の衰えが問題とならないかが心配だ。シューマッハも43歳でメルセデスを走ったが、2012シーズン後半は視力の衰えとみられるクラッシュが目についた。アロンソがチームと良好な関係を維持できたのは、デビューイヤーのミナルディを除けばエンストンのチームのみ(ルノーとアルピーヌ)、というのも不安要素だ。
F1は前々から上がっていた噂話(例えば新規メーカー参入など)が数年かけて実化することがある一方、ゼロの状態からたった2、3日で大型契約が決まってしまうこともある。ベッテルはアロンソ移籍の可能性が事前に耳に入っていたのか、アロンソはいつからアストンマーチンと交渉していたのか。引退するベッテルの後釜にアロンソが座るのは偶然なのか既定路線だったのか。
ともかく、来年もアロンソが走れるのは嬉しいわ。
(蛇足の追記)アルピーヌは戦力を維持できるか?
アロンソが出ていくアルピーヌについて。
このチームは1980年代のトールマンの流れを汲み、ベネトンがチームを買収してからは英エンストンに拠点を移し、ルノー、ロータス、再びルノー、アルピーヌと名前を変えてきた。
このチームは個性あるドライバーがいてこそ輝く。古くはセナ、ピケ、シューマッハ、アロンソ、ライコネン。彼らより若干小粒だがベルガー、クビサやリカルドも。ドライバーが好き勝手行動してもうるさく言わないし、ライコネンが一番生き生きとドライバー生活を送ったのもロータス時代だ(「Leave me alone」の無線が有名だ)。
ドライバーが無茶苦茶を言っても内紛の一歩手前で押しとどめるし、チーム関係者もドライバーの檄に応える度量があった。94-95年と05-06年の黄金期はドライバー以上にアクが強いフラビオ・ブリアトーレが監督としてチームを引っ張ったことも大きい。ロリー・バーン時代の吊り下げフロントウィングや、超広角バンクのV10エンジン、昨年の特徴的なPU配置など、技術的挑戦も怠らなかった。
一方で、カリスマ性のあるドライバー不在の状況ではあっという間に戦力を失うのもこのチームの特徴だ。シューマッハが去った96年、アロンソ不在の07年、クビサが重症を負った11年、ライコネンがいなくなった14年がそうだ。15年にルノーが運営に復帰したものの、だれがチームを引っ張っていくか核が不在の状態だった。その意味では、アロンソが昨年復帰した意味は大きい。
そのアロンソが、来年は抜ける。オコンは24年までの契約があり、空いたシートには新人のピアストリが昇格すると思われる。オコンはハンガリーでもアロンソに無用のバトルを仕掛けるなど、チームプレー皆無の攻撃的性格ではワークスのエースドライバーとして引っ張っていく力はない。アルピーヌがなぜ彼と3年契約を結んだか疑問だ。
その点では、F3、F2を圧倒的な成績でそれぞれ1年で駆け抜けたピアストリがどこまで成長するかが楽しみだ。彼が03年のアロンソのような大物ドライバーの片りんを見せるなら、アルピーヌはトップチームの返り咲きも不可能ではないだろう。
すべては、ドライバーのけん引力次第だ。
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