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エリートはなぜ「小説」を読むのか?

フォレスト出版編集部の山田です。

今年5月に入社してから、私は上司が担当している書籍の編集作業を一緒に行わせていただいています。もちろん、本番とは別になりますが、私は入社したばかりで編集経験がないので、勉強のために自分がその企画の担当編集者になったつもりで取り組みます。

最近では、来年1月に発売される佐藤優さんの新刊の編集作業をさせて頂いています。今回の新刊は佐藤さんのこれまでのご著書のアンソロジー(選集)になるので、編集のためにさまざまなご著書を読みました。その中で、非常に興味深い考えに触れました。

それは、「見抜く力をつけるために小説を読む」という著者の主張です。

一般的に小説は実用性があるわけではないので、娯楽としてのイメージを持たれる方が多いのではないかと思います。そんな中、なぜ知の巨人として知られる著者は小説を読むべきであると強く主張するのでしょうか。

本記事では、『見抜く力』(佐藤 優 著、プレジデント社)から時間をつくってでも小説を読むべき理由についてご紹介させて頂きます。

小説を読むべき理由について、著者は下記のように述べています。

 若い人たちにも、見えないものを見抜き、感じる力を身につけて欲しいのです。そうした感化力を高める訓練として、私は学生たちに「小説を読め」と言っています。たくさんの小説を読んで恋愛や犯罪の内在的論理を知れば、人間に対する洞察力を鍛えることができるからです

内在的論理とは、相手の信念体系のことです。例えば、相手は何に価値があると考え、何を価値が低いと考えているのか?善悪や好き嫌いの基準はどこにあるか?人生の目的をどのように設定しているか?などが挙げられます。

さらに、著者はマルクス経済学者の宇野弘蔵の言葉を引用し、小説を読むメリットについて次のように述べています。

 「ぼくはこういう持論を持っているのです。少々我田引水になるが、社会科学としての経済学はインテリになる科学的方法。小説はわれわれの心の心情を通してインテリにするものだというのです。自分はいまこういう所にいるんだということを知ること、それがインテリになるということだというわけです。経済学はわれわれの社会的位置を明らかにしてくれるといってよいでしょう。小説は自分の心理的な状態を明らかにしてくれるといってよいのではないでしょうか。読んでいて同感するということは、自分を見ることになるのではないでしょうか」

 内在的論理を知るためには、小説やノンフィクションを読んで追体験しておくことです。多様な読書によって、経験してないことを学べたり、経験しないほうがいいことを避けたりできるのです。

つまり、小説を読むことで人間に対する洞察力を鍛えることができる。また、小説を通してさまざまな経験を追体験することで、実際の人生で起きうる危機を回避できるようになる。だから、小説を読むべきなのだと著者は言っています。

以上、現代屈指の知の巨人が考える小説を読むべき理由についてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。

人間関係を築く上で、私たちは相手の考えや気持ちを理解しようと努力します。しかし、ときに自分が実際に似たような経験をしていないと相手のことを本当に理解することはとても難しいことがあります。そんな時、たくさんの小説を読みさまざまな内在的論理を知っておくことで、より深く相手の気持ちを汲み取れるようになるのかもしれません。

特に、私たちが人生で経験できることは限られています。だからこそ、時間をつくってでも多くの小説を読み、人に対する洞察力を鍛えることがよりよい人間関係を築くためにも重要になってくるのではないでしょうか。


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