完全にデジタル化した世界の音楽業界で、とんでもないことが起きていた。
フォレスト出版編集部の寺崎です。
昨日、日経新聞を読んでいて、個人的に「おぉぉ・・マジか」となった記事があったので、今日はそれについていろいろ調べて、考えてみます。
驚きの記事はこちら。
5月12 日の日本経済新聞朝刊に掲載された「音楽著作権に投資マネー、サブスク時代、収益予測しやすく 国内ファンドも登場、市場規模3兆円に」という記事です。
要は投資ファンドがミュージシャンから「原盤権」を買い取り、投資家を募って、いわば不動産REITの音楽版という形で著名ミュージシャンの楽曲(バンド名含む)を投資対象とする動きが活発化してるというのです。
記事で紹介されている実際の事例は――
◎老舗ロックバンドの「KISS」
スウェーデンの音楽投資会社ポップハウス・エンターテインメントに、白塗りのフェースペイントやバンド名などの権利を含む楽曲の権利を売却。買収額は3億ドル(約460億円)。
◎ジャスティン・ビーバー
2021年末までに発表した約300の楽曲の権利を2億ドルで英ヒプノシス・ソングス・キャピタルに売却。
◎ポール・サイモン
サイモン&ガーファンクル時代を含む全音楽出版権をソニー・ミュージックに2・5億ドルで売却。
――というもの。
もっと調べてみると、出てきました。
◎ボブ・ディラン
過去に作曲した600曲以上の出版権をユニバーサルミュージックグループに3億ドル(約228億円)以上で売却。
◎ブルース・スプリングスティーン
自身の全作品の権利をソニー・ミュージックに約5億ドル(570億円)で売却。
ボブ・ディラン、ブルース・スプリングスティーンは投資ファンドではなく、レコード会社に売却していました。
ミュージシャンにとっては、将来得られる印税収入を手放すことになるわけですが、どのミュージシャンもわりと高齢。いつどうなるかわからない歳に差し掛かっているため、元気に生きているうちに高額で売ってしまったほうがいいというメリットがあるそうです。
そりゃそうか。子どもや孫にもしっかり財産を残せますしね。
一方、投資ファンドにとっては、Spotifyなどのサブスクがコモディティ化した現在、いま流行っている最新曲だけでなく、古い楽曲からも安定的な収入が得られるためメリットがあるとのこと。
日本でもこうしたファンドが出始めていると記事にはありました。
・・・ここでふと思いました。
レコード会社に権利を売却するのはまだわかりますが、投資ファンドに売却しちゃったら、これまで権利を持っていたレコード会社はどうなっちゃうの???
さらには日本ではJASRACという謎に怖い集団がいますが、彼らがどうなるのかとか、気になる疑問がたくさん湧いてきます。
もっといえば、個人的に「音楽業界は出版業界の先行指標」として見ているのですが、「レコード会社=出版社」と考えた場合、著名作家さんの作品の権利を投資ファンドが買収する世界が今後ありえるのでしょうか。そうなったとき出版社は何で食べていけばよいのか・・・?
出版の世界ではここ数年かけて流通がどんどん貧弱になっています。この流れは加速すれど、留まることはないと考えると、今日ご紹介した日経記事が示す音楽業界の新たな動きは、今後デジタル化が進む出版業界の行く末を占う題材になるかもしれません。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?