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韓国の出版業界のホットな最新情報をお届け!

フォレスト出版編集部の寺崎です。

今週は1週間かけて、韓国のソウルに版権売り込みの商談に単身で行って参りました。

「版権の売り込みって、なに?」と思われる方も多いと思いますが、要はフォレスト出版で出した書籍について「韓国語版を出しませんか?」という提案を現地の版権エージェントに通訳してもらいながら、現地の出版社に営業する活動です。

多くの出版社では「ライツ担当」という形で、専任のスタッフが担当することが多いのですが、フォレスト出版では編集者が持ち回りでやっています。各編集者が年1回は台北、ソウル、北京に出向いています。

近くて遠い国、韓国。

コロナ後、二度目の渡韓ということで、今日は韓国の出版業界の最新事情をお届けします。

なぜか、古い日本の本がベストセラーになる国

実際の商談のほかに、現地の版権エージェントさんとランチもしくは夜にお酒を飲みながら食事して情報交換をするのですが、これが商談以上に興味深いネタが拾える機会となります。

今回、もっともビックリしたのが、めっちゃ古い日本の書籍が再ブレイクしていること。

たとえば、齋藤孝さんの『「できる人」はどこが違うのか』という2001年(23年前!)に出た、ちくま新書のベストセラーがあるのですが、これがいま韓国語版が再版されて大ベストセラーとなっているのです。

これが元本。

で、韓国で改めて翻訳されたのがこちら↓。
タイトルは『一流の条件』です。

黒地に白抜きタイトルで、いかにも勝負している感じですが、いま韓国ではベストセラーとのこと。なんでも、パク・ムンホさんという著名な脳科学者がYouTubeで「死ぬまでに読むべき本」と紹介したのがきっかけで、再ブレイク。版権エージェンシーに「まだ、この本の版権は空いてますか?」という電話が殺到したとのこと。

すでに韓国では一度翻訳出版されていたのですが、契約が切れていた状況で、アドバンス(版権を買い取る金額)も相当跳ね上がったそうです。

齋藤孝先生もびっくりじゃないでしょうか。
人生、何が起こるかわかりませんね。

これに近いのが『脳はなにかと言い訳する』という書籍。

これも日本ではかなり古いベストセラーなのですが、韓国でいま翻訳されて大ブレイクしているそうです。

それがこちら↓。

韓国語のタイトルは『人生が揺れるとき脳科学を読みます』というもので、原題とはかけ離れていますが、韓国では学者さんが書いた、脳科学、心理学などのアカデミックな知見をベースにしたエッセイがいまかなりウケているそうです。

そういえば、昨年から韓国では神田昌典さんのブームがあったのですが(「神田さんの版権であれば、なんでもください」というエージェント多々)、これも日本のトレンドが時間差で発生している事象です。

神田さんブームの背景には、普通に企業に就職するのではなく、自分で起業して儲けてやろうという若者が増えているのがあるとか。

書籍テーマのニーズの背景に、韓国の社会的トレンドが反映されていて、なかなか興味深いです。

投資への関心がめちゃめちゃ高まってるっぽい

韓国でも株式投資は大ブームのようで、米国株やらなんやらで儲けた人もいれば、うっかり損した人もいるみたいですが、おもに損した人を中心に「投資の基本を知らないとヤバいよ」というニーズがあるようです。

「(時代や国籍を問わない)そういう本はありますか?」という問い合わせがけっこうありました。

おそらく「ファンダメンタル分析」とか、あるいは「投資マインド」とか、そういう話になってくると思うのですが、「そんな本、日本にはごまんとあるぜー!」と思いつつ、フォレスト出版のラインナップにあったかどうか瞬時には思い出せず、版権の営業マンとしてはいまいちな結果に終わってしまいました。

韓国で「シルバー川柳」が大ブレイク

シルバー川柳をご存知でしょうか。

誕生日
ローソク吹いて
立ちくらみ

書き込んだ
予定はすべて
診察日

こういう感じの川柳がまとめられている『シルバー川柳』というシリーズをポプラ社さんが立ち上げて、日本でもよく売れているのですが、これがいま韓国で大ブレイクしているそうです。

紙面を見せてもらったのですが、そもそも、五七五の世界観を韓国語に置き換えて、それが受け入れられたのもすごいし、もっといえば、こんな企画がよく通ったなと思いました。

おそらく、同じ企画を自分が出したら営業部から「日本の川柳を読みたい韓国の読者はいるのか?」とギチギチに責められ、「いやぁ・・・」と終わったはず。この企画を通した編集者は優秀な編集者ですね。

今後も日本の10年前のベストセラーが再ブレイクする可能性あり!?

加えて、ちょっと面白かったのが、韓国ではいま「働かずに親に寄生しているニート」という存在が社会問題になっているそうです。

ちょっと待った。

これって、日本ではかつて起こった現象です。なんなら、当時のニートが高齢化して、日本では「中年ニート」が社会問題化しています。

「ニート」という単語は韓国社会では一般的に知られていない概念ですが、これが概念として定着させるための書籍があったらいいのではないかというのが版権売り込み担当者の発想。

過去にいい本がないだろうか。
そう、考えるわけです。

というわけで、ちょっと10年前の書籍を漁ってみることにします。

以上、お隣の国の出版事情の小ネタでした。

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