見出し画像

【フォレスト出版チャンネル#127】フリートーク|編集者おすすめの3冊【3】

このnoteは2021年5月11日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

ビジネス書編集者おすすめの小説3冊

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティーを務める今井佐和です。本日は「編集者おすすめの3冊」というテーマで、編集部の稲川さんとお話をしていきます。稲川さん、どうぞよろしくお願いいたします。
 
稲川:よろしくお願いいたします。
 
今井:さっそく、稲川さんおすすめの本ということなんですけども、稲川さんは普段はどんな本を読みになるんですか?
 
稲川:私はビジネス書の編集者でありながら、実はあんまりビジネス書って読まないですよ。
 
今井:そうなんですか?
 
稲川:もちろんビジネス書は仕事で斜め読みとかバーッと読むことはするんですけども、それよりもいろいろな他の本を読んだほうが楽しいですし、心も豊かになるかななんて思っています。ということで、今回は私がおすすめの3冊ということで、小説から選んでみました。
 
今井:ありがとうございます。それではさっそく稲川さんおすすめの3冊を紹介していきたいと思います。

【おすすめ①】『そして、バトンは渡された』(瀬尾まいこ・著)

稲川:まず1冊目なんですが、こちらは2019年の本屋大賞を受賞した、瀬尾まいこさんの『そして、バトンは渡された』という本ですね。こちらは有名な本なんで、皆さんの中には読んだ方もいらっしゃると思うんですけれども、2018年2月に文藝春秋より刊行されて、私が読んだのは2020年9月に文春文庫になった作品ですね。こちらはもうベストセラーなので、私が言うのもなんですけど、読まれてない方はぜひお読みいただきたいなと思っております。

今井:こちら、あらすじはどんな感じになっているんですか?
 
稲川:その前に、実は映画化されて、今年(2021年)の秋10月29日から公開されるそうなんですよ。
 
今井:映画化まで。
 
稲川:はい。主人公の森宮優子さんの役は女優の永野芽郁さんで、同居する血のつながらない父親、重要な役なんですけども、この森宮壮介さんは田中圭さん。
 
今井:大人気俳優さんですね。
 
稲川:で、優子さんと長年一緒に暮らしていたものの突然姿を消してしまうというシングルマザー、梨花さんという役に、なんと石原さとみさんが出演するっていうことでね。豪華キャストなんですけどね。ベストセラーになったので、映画化にもなったっていう本で、皆さん、映画を見る方は楽しみにされているんじゃないかなと思います。内容はネタバレしないようにはお話ししますけれど、この主人公の優子はここでは高校生から登場するんですけども、この優子の成長を描くストーリーなんですけど、優子の家族遍歴というか、これがすごいんですよ。
 
今井:家族遍歴。
 
稲川:はい。幼い頃に、お母さんと死別して再婚相手の母親に引き取られると。これがシングルマザーの梨花さんなんですよね。お父さんはある事情で離れてしまうんですけども、またその母親の再婚相手の父親と一緒に過ごすんですね。で、今後はその梨花さんのさらなる再婚相手で優子さんと20歳しか違わない父親と過ごすという。ここで高校生活が始まるところからストーリーが入っていくんです。
で、17歳の優子は実はどの親からも、いっぱいいろいろな親がいたんですけど、愛情いっぱいに育てられて、そういった環境にめげずに生活しているんですよね。逆にたくさんの親に接してきた分、人間関係の築き方と言うか、高校生活でも意外とドライな考え方なんです。でも、ドライながらうまく付き合うことはできるんですね。いろいろな親たちと生活してきたわけですから。
 
今井:そうですよね。コミュニケーションレベルがちょっと違いそうですよね。
 
稲川:そうです。その優子が高校生活を経て、20歳ぐらいしか違わない父親と一緒に過ごしていく中で、やがて社会人になっていくわけです。で、ある男性に会って、ここはある男性としておきますけれども、その人とのこれからの人生を考えているうちに、今までの家族っていうものがいろいろとフラッシュバックしてくるというような、そんな物語なんですよね。今はコロナとか、大震災もありましたけど、家族の在り方とか家族愛ってなんだろうって、みんな考えますけども、やっぱり家族って温かい存在なんだよっていうことをこれだけの家族編歴を持つ優子から、実は私たちが教えてもらう。そんな温かい物語になってますね。ぜひ読んでない方は読んでいただければと思います。

【おすすめ②】『三途の川のおらんだ書房』(野村美月・著)

今井:はい。稲川さんおすすめの1冊目は『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこさんでした。それでは続いて、稲川さんおすすめの2冊目をお願いいたします。
 
稲川:はい。次の本は『三途の川のおらんだ書房』という本です。こちらも文春文庫から発売された本なんですけど、著者は野村美月さんという方ですね。この方はずっとエンタメ大賞なんか取って、いわゆるエンタメ小説って言うんですかね。そういったジャンルの本当に楽しく軽く読める本を書いていらっしゃる方です。
で、これ「おらんだ書房」って付いていて、サブタイトルが「迷える亡者と極楽への本棚」ということで、私はやっぱり本とか書店とか、そういう名前が入ったタイトルって職業柄、手に取ってしまうんですよね。小説なんですけども手に取ってしまうということで、この本も最近読ませていただきました。この本のおもしろいのは、物語の設定なんですけど、「人は死ぬと三途の川を渡る」って言われますよね。

今井:はい。
 
稲川:実は三途の川を渡る船が来るのに数日待たなきゃいけない設定なんですよ。それまでに皆さんは河原で過ごすわけなんですよ。
 
今井:はい。石積むイメージがありますけどね(笑)。
 
稲川:そうですね。河原で皆、暇しちゃうんですけど、そこにさまざまなお店、レストランとかテーマパークとかがバーっと立ち並んでいるらしいんですよ。
 
今井:楽しそうですね。
 
稲川:そこでは1枚だけ6文銭の紙が渡されて、三途の川を渡る前に1つだけ、その紙でお店なりレストランなりテーマパークなり、どこでもいいんですけど、願いを1つだけ叶えてくれるっていう、そんな物語が始まるんですよ。
 
今井:おもしろそうですね。
 
稲川:はい。そこには当然、1軒「おらんだ書房」という本屋さんもあるんですね。
 
今井:お! そこに「おらんだ書房」さんが!
 
稲川:それで、死ぬ前に、っておかしいですけども、死んでるんですけど、実際に。でも、その人がどうしてその本屋を訪ねて最後の1個の願いを叶えてくれるっていうものが、なぜ本なのか。ここがすごく不思議でおもしろい。「なんでだろう?」って考えさせられてしまう。これは三途の川ですけど、自分が死ぬ前に1冊本を読めるって言われたら何を読みたいって思います?
 
今井:深いですね。
 
稲川:絶対選べないんじゃないかなと思うぐらい読みたい本って世の中に残してあって、ごまんとありますから。でも、この本屋に尋ねてくる迷える亡者ですよね。この人たちがどういう本を読みたくてとかそういうので、この店主に訪ねてくるわけです。その悲喜こもごものおもしろい話が載っていて、例えば1番最初に書いてあるかな? 本が大好きでたまらない人があるとき死んじゃうんですよ、本に押しつぶされて。
 
今井:おー……。願ってもいない亡くなり方というか、何と言うか……。
 
稲川:その人が真っ先に三途の川のこの状況を知ったときに、本屋に駆けつけるわけですね。そして私にふさわしい1冊っていうのを選ぼうとするんですよ、自分で。最後の1冊。でも、選べないんですよね。そこで、「おらんだ書房」の店主が、ちょっと変わった設定で出てくるんですけど、亡者達に「最高の1冊をお選びしましょう」と約束して、三途の川を渡る日までに本当に極上の1冊を用意してくださるという、これは非常におもしろいですよ。
 
今井:へー。どうやって探すんだろうって思っちゃいます。
 
稲川:その本の亡者は何の本を渡されたと思いますか?
 
今井:予想なんですけど、真っ白の何も書いてない本で、自分で今度は物語を書きなさい的な。
 
稲川:いいですね。いい発想ですね。違うんですけど(笑)。
 
今井:あー……。
 
稲川:答えは、本を読んでくださいということしか……。ここで言ってしまうとね(笑)。
 
今井:そうですね。ネタバレに。
 
稲川:ここでは内緒にしておきますけど。あとは、思い出に残したい本とか、自分の思い出に残ってる本とか、いろいろな……。最後の絶妙な本選びっていうところにハッとさせられる物語です。


【おすすめ③】『ちびねこ亭の思い出ごはん』(高橋由太・著)

今井:稲川さんおすすめの2冊目は、『三途の川のおらんだ書房』野村美月さんでした。それでは、最後、稲川さんおすすめの3冊目をお願いいたします。
 
稲川:はい。3冊目、最後になるんですけれども、こちらは、光文社文庫から発行されております『ちびねこ亭の思い出ごはん』、高橋由太さんという方が書いていらっしゃる本です。

今井:かわいいタイトルですね。
 
稲川:そうですね。『ちびねこ亭の思い出ごはん』というんですね。こちらは今現在シリーズで2冊あるんですけども、文庫の書き下ろしです。なので、こちらはハードカバーでは出ていない本なんですけども、2冊ありまして、1冊目のサブタイトルが「黒猫と初恋サンドイッチ」っていうサブタイトルで、シリーズ2冊目が「三毛猫と昨日のカレー」ということなんですね。
私は“猫”ってついたタイトルも手に取ってしまう習性があります。猫を飼っているんで。でも、読んでみたらとても心が温まってちょっと泣けてくるような、そんな物語なんですけども。この方は千葉県出身の作家さんで、想定は千葉県なんでしょうけど、海辺の田舎町に亡くなった人にもう一度だけ会えることができるっていうレストランがある。
 
今井:えー。
 
稲川:そこでは亡くなった人との思い出のご飯を提供していて、いわゆる陰膳を供えて、亡くなった人と一緒に食べる。そのときにその死者が現れるというような、そんなお話なんですよ。
 
今井:うーん。興味深いですね。
 
稲川:で、思い出ごはんって言うくらいですから、それぞれの依頼人が亡くなった人との思い出のご飯をこの「ちびねこ亭」に注文するんです。
 
今井:だから、サブタイトルにサンドイッチとか、カレーとか、付いていたんですね。
 
稲川:そうなんです。例えばこの「初恋のサンドイッチ」は依頼人が小学生なんですけども、好きなのに嫌いって言っちゃって女の子に嫌われるようなパターンってありますよね?
 
今井:はい。
 
稲川:そのときに女の子から「これ、食べる?」って言われたサンドイッチは、彼の彼女との思い出ごはんになるんですよね。当然、思い出ごはんって言うぐらいですから、彼女は亡くなっちゃうんです。そのときに小学生の彼は、思い切って「ちびねこ亭」で思い出のサンドイッチを注文するんですよ。そして、この思い出ごはんを「ちびねこ亭」で食べていると、そのときに女の子が現れて……というね。
そのときにやっぱり亡くなった方に皆さん言い残したこととか後悔とか伝えきれなかったとか、いろいろな思いがあると思うんですよね。それをやっぱりもう一度だけ会って話したいという思いで、皆さん、この「ちびねこ亭」を訪れるんですけど、そこで亡くなった人と会った数々の登場人物がそのあとどうなっていくのかっていう話が描かれていくっていう、本当に感動する物語だと思います。で、おもしろいのは、想い出ごはんのレシピが書いてあるんですよね。
 
今井:レシピまで! 本当だ! 書いてありますね、料理本のように。
 
稲川:そうです。今、パラっと開いたんですけど、豚バラの唐揚げ。
 
今井:さっそくおいしそうです。
 
稲川:おいしそうですよね。唐揚げというと鶏ですけど。
 
今井:豚バラなんだっていう。
 
稲川:豚バラ、ちょっとこれ作って食べてみたいなって思うことと、ここに出てくる食材は、著者が千葉県出身ということですので、千葉の地場のものを紹介しているんですよね。だから、本当にこの方は千葉を愛して、こういったかたちで料理も紹介して、感動の物語を綴るっていうことで、本当におもしろいと言うか、いい本だなと思っております。
 
今井:千葉と言えばピーナッツなんですけど、ピーナッツのお料理もあるんですか?
 
稲川:落花生ごはんというのが出てきますよ!
 
今井:ほー!さすがですね(笑)!
 
稲川:ぜひこちらもお読みいただければなと思います。

小説から得られるもの

今井:はい。『ちびねこ亭の思い出ごはん』でした。ということで、ここまで稲川さんのおすすめの3冊の小説を紹介させていただいたんですけれども、ビジネス書づくりに携わりながら、小説を読まれてるっていうことだったんですけど、やっぱり小説から何か得るものとかもあるんですか?
 
稲川:そうですね、実は仕事でも結構活きてくるということがあるんですよ。やっぱりビジネス書をつくると言っても、ビジネス書の話ばっかりを著者さんとしたりするわけじゃないし、出会った人とお話するわけではないんですよね。そのときに「稲川さん、最近どんな本読んでるの?」って絶対聞かれますよね。
 
今井:そうですね。編集者さんですもんね。
 
稲川:そのときに、意外と小説とか感動した物語とか、おもしろいものを紹介すると、相手の方も「それって、どういう本? 読んでみたくなるなー」って思ってくださるんですよね。そうなると、そこでの人間関係って言うんですか、またビジネスだけじゃない部分からこういった人間関係っていうのがすごくうまく築けたりする場合がとても多いし、あとは逆にそういった本の話だけで、「今度一杯飲もうよ」みたいな、そのぐらい発展することもあるので、小説はそういう意味では人生そのものも、人間関係も豊かにしてくれるようなものなのかもしれないですね。
 
今井:物語自体もおもしろいし、ある意味、ビジネス書よりも人間関係が深まるビジネス書というか、そんな側面も持っているんだなって、今お話しを聞いていて思いました。
 
稲川:そう言っていただけると、読んでよかったなと思っております(笑)。
 
今井:ぜひVoicyをお聞きの皆さんもおすすめの3冊、とてもおもしろそうですので、読んでみていただけたらと思います。 本日は、「編集者・稲川さんおすすめの3冊」ということでご紹介いただきました。稲川さん、どうもありがとうございました。
 
稲川:ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?