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京急蒲田に現れた救世主と3人の導かれし者たち

よく晴れた土曜の朝。時刻はAM10:30。

わたしは品川から羽田空港に向かう京急線の、快速列車に乗っていた。

混雑率は120%ほど。わたしは基本的に座席にすわらない派なのだが、前日思ったように睡眠がとれず体調が芳しくなかったので、堂々と座らせていただくことにした。



12:15分羽田発、帯広行きのAIRDO_065便

それに乗る予定だった。



その日は大切な大切な、友人たちとの3年ぶりのBBQ。

帯広で10月下旬にBBQを決行するという暴挙。愚行。蛮行。

道民の皆様なら、我々がどれほど強い気持ちで開催に至ったか、想像してもらえるだろうか。


いつもは1時間前に着くように空港に向かうわたしだが、この日は1時間半前に到着するように家を出た。

友人宅では、小3になるやんちゃボーイと5歳の可愛いお嬢様がお待ちだ。

彼らに、わたしが大好きな東京銘菓「メープルマニア」を献上する。それはもはや敷居を跨ぐために必要な貢物だった。


その貢物を吟味する時間も含めた、過剰なほど余裕を持たせた時刻計算。

計画は、完璧だった。


✈️__________


ふいに、周囲にいたはずの人々がいなくなっていた。


わたしはいつも爆音で音楽を聴いており、この日も同様に爆音でbacknumberあたりを聴いていた。


瞬間、察知した。

これ、やばいやつやん。。。


どうやら人身事故が発生して、これより先にはいけません的な話になっていた。

わたしよりも先に下車していた人たちが、困った顔をしてフラフラとうろついている。



わかってねーな。

わたしは光の速さで改札を通り抜けるまでの間に、ここが京急蒲田であること、大鳥居で人身事故が発生したこと、しばらくは運転再開の見込みはないこと、これら複数の情報をハンドボールで鍛えた間接視野から仕入れた。


戸惑う群衆を競歩選手並みの早歩きで抜き去ったわたしだったが、そんなわたしよりも先に改札を抜けていた優秀な人材も数名いた。

勝負はここからだ。


一度も降りたことのない「京急蒲田」

生涯、降りることはないと思っていた駅で遭遇した交通障害。古傷という傷害を負った右足に鞭を打ち、諸外国のしょうがない紛争に目もくれず渉外に励むサラリーマンを横目にひたすら歩く。



向かった先は「大きめの道路」



そう。わたしは「タクシーを捕まえるのが一番早い」と思っていた。



🚖__________


結果、この作戦が見事にハマらなかった。



一向に捕まらないTaxi ーーー

テンパったわたしは配車アプリ「Go」を開くが、時すでに遅し。いつまで待っても「Go」と言ってくれないGoアプリ。


テンパりが極まったわたしは、家でくつろいでいた嫁に連絡し、同じようにGoを使ってタクシーを呼んでほしい旨、何か方法がないか探して欲しい旨を、しどろもどろになりながら伝えた。


「・・・バス、あるんじゃね?」

1分を超えるわたしの無駄な要望を聞いたのち放たれた嫁の金言。さすがだ。勉強はクソほどできないが、頭はキレる。


思えばわたしが改札を出たとき、駅の近くにある陸橋を颯爽と歩く青年たちがいた。あれは、バス乗り場を目指していたのか・・・



わたしは、ハンドボールで鍛えた古傷まみれの脚をモーレツに動かし、バス乗り場らしき場所に向かう。


そして、絶句。


すでに100人を超える人々が、長蛇の列を作っていた。



難民。これ、まさに難民。



絶望のなか、左腕のG-SHOCKを覗く。

時刻は11:10分。


ここから羽田まで、車で20〜30分。

出発時間は12:15分。

保安検査場の締切まで、残された時間は45分…


これ以上、甘っちょろい戯言はいってられない。

わたしは捨て身の作戦に出た。



🌀__________


バス待ちの最後尾に陣取ったが、ここはもうオワコン。絶対に間に合わない。

列に並びながら、注意深く、人を、車を、観察していた。


すると、1台のタクシーがこちらに向かいながらハザードをつけた。


瞬間、わたしは走り出した。

もう、相乗りさせてもらうしかなかった。


同じことを考えていた2名とともに、配車したと思われる男性に懇願した。

「乗せてくださいっ!」


こうして、無事4人でタクシーに乗り込んだ。


🛩__________


時刻は11:15分。

間に合った。間一髪。遅くとも11:45分には到着する。


乗せてくれた男性はめちゃくちゃいけてるお兄様で、快く乗せてくれた上に「料金は均等に割り勘でいいですよ」と言って、千円札を2枚渡したわたしの手に、1枚分を返してきた。


助手席に乗り込んでいたわたしは、運転手さんといつ着くか、どんな状況だったかなど、情報交換をしていた。


すると、後部座席の真ん中に座った女性が、電話を始めた。


「あの、11:45分発のフライトなんですけど、京急線が止まっちゃって・・・振替とか可能でしょうか?」

とても丁寧に会話しているが、その声には80%程度の涙が混じっていた。



まじか・・・さすがに45分はきついか・・・

そう思ったが、一応、状況を聞いてみることにした。


「お姉さん、ターミナルはどっちですか?」

「第二ターミナルです・・・」

「行き先は?」

「宮古です・・・」


まじかよ。宮古島かよ。これ間に合わなかったら、今日行くことさえ出来ないかもな・・・


すると救世主こと配車ニキが、その救世主っぷりを見せつける。


「遅延があったら間に合うかもしれないし、諦めちゃダメですよ!」


おぉ、、、すげぇ。

俺はそんな勇ましいことは言えん。


でも、たしかに。諦めたらそこで試合は終わる。

配車ニキに便乗して、わたしも見知らぬ女性を勇気づけることとする。


「そうですよ。まだわかんないですよ。運転手さん、何分につけます?」


運転手さんもやりとりを聞いて職業魂を揺さぶられたのか

「なんとか35分にはつけるかもしれませんっ!」

と、異常な頻度で車線変更を繰り返すスタイルにモードチェンジ。



「もうダメです。いいんです・・・」

と今にも泣きそうだったお姉さんも

「なんとかなりますかね。なんとかなりますかね・・・!」

と目に力が宿り始めた。



そこから10分間の車内は、駅伝のゴール前さながらの応援合戦。

「いける!もうここまできた!」

「運転手さん、こっちの道の方が早そうっす!」

「おねえさん、すぐ手荷物検査に入れるようにしておかないと!」


そして迎えた11:35分。

Googleマップが示していた予定到着時刻よりも10分早く、わたしたちを乗せたタクシーは羽田空港第二ターミナル、ANA手荷物検査場の目の前に到着。

4人の知識と努力で掴み取った、10分の猶予。


タクシーを降りたお姉さんは「ありがとうございますっ!!」と叫びながら、一目散に駆けて行った。


✏️________


ええと、、、結末ですか?


たぶん乗れたんじゃないかな!

乗れたってことにしておこう!


あれだけ頑張った4人・・・いや、運転手さんも含めた5人の努力が、実らぬはずがなかろう!!


きっとあのお姉さんはこの土日、宮古島で最高にHOTでCOOLな休暇を過ごしたに違いない。


そう、信じている。


あとがき

いやーマジで焦った。だいぶ時間に余裕をもって出たのに、こんなことになるとは。

しかし、その1時間半が功を奏しました。本当によかった。


あと、あのときのお姉さんが奇跡的にこれを見ることを想定して書くんだけどさ。お姉さん、車ん中でずっと「余裕をもって出たのに、なんで、なんで・・・」って言ってたけど

わい、12:15発
配車ニキ、12:15発
もう一人ニキ、12:30発
おねえさん、11:45発

っていう事実が発覚したやん。

んで、そこまではいいんだけどさ、その事実が発覚してからも

「早く出たのに、なんで・・・」

ってずっと言ってたのは、さすがに俺たちもリアクションできなかったし、コントかと思ったよ。

これを教訓に、空港には早めに行きましょう。

まぁとにかく、宮古島旅行を楽しめていること、心より祈っております🙏🙏🙏






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