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ダイレクトにくるからやめられない

思い起こせば数年前のこと。

大きなオフィスビルと住宅のある建物にに小さな商業施設が入った場所で、大人向けの飲食店で働いていたころの話。
ランチ対応をしていたのだが、大人の厄介さというか、子どもっぽさにうんざりしていた。

「お金さえ出せば何してもいい」「いつものオーダーだろ?そのくらい察せよ」「時間ないからサッサと出せよ」はしょっちゅうで、英語が話せず母国語で当たり前のように我儘注文してくる外国人のお客さんなど、身勝手な大人たちに辟易の日々。

近隣で花火大会なんかのイベントがあると、そんな厄介な大人たちも爆増するわけで。
忘年会や新年会シーズンも然り。

飲食業やってて、接客やってるのにそんな話などタブーかもしれないが、あまりにもあまりで。

毎日毎日、こんな風にもやもやしながら過ごしても仕方ないかななんて少し考えていた矢先、同僚の女子が調理師免許を取ると言い始めた。

理由は「店長のっとってやる」。

さすが若さ全開。ハングリーというか何というか。

この娘の場合、年がら年中、同棲相手の店長とケンカの日々で、「あたしがこの店仕切って、あいつクビにしてやる」が口癖だった。

愛憎パワーおそるべし。

で、そんな同僚ちゃんの頑張ってる姿を見ながら、自分も目指してみようかなという気持ちになってきたわけで。
だけど、ただ、漠然と「免許取る」じゃしょうがないので、目標を立てて勉強するかなと。
そんな気持ちになってた頃、店の周りでいたずらして騒ぐ未就学の子を見て注意しない親にうんざりした気持ちはあれど、子どもに対してはまだ小さいし仕方ないななんて思いながらフッと沸いたのが「保育園でご飯作るか!」だったのだ。

先の同僚ちゃんも店を辞める日取りを決めていて、自分もとりあえず目標ができたので辞めることを決意した。

同僚ちゃんは結局受からずに、夜の蝶ならぬ「あたし夜の蛾として頑張るわw」と元々居た夜の世界へ戻っていった。
自分の場合は、とりあえず補助からスタートしつつ勉強して受験するやり方を選択。
そして飲食店を退職した。

保育園の調理補助の仕事を始めて、間もなく妊娠が解り、仕事としてはロクな経験を積めなかった状況ではあったが、結果的に良かったかなと思っている。

日々の食事やおやつの感想が素直で直球な言葉で反応があること。
大人の昼食やおつまみ時の対応に比べて、なんと純粋無垢な事か。

「きょうね、こんなにたべたよ!」
「おかずおいしかった!!ありがとう!」
「おやつおいしかったよ!」

などなど。

慌ただしくしていて、昼でもピリついた大人の世界じゃ想像できない言葉をたくさんかけてもらった。

そして、お腹の子どもが育ってきた頃、見ても目立つ形になってきて、勤務先の園の子から「せんせー、あかちゃんいるの?」とか「かわいいあかちゃんだといいね」なんて話しかけられたりもあった。

行事があると、子どもと接する機会もあった。我々、普段接する機会がない職員にも子どもたちからプレゼントがあったり、外から調理室をのぞいて「おはよー!」「ばいばい!」と声をかけてくれたり、人数調べのお当番や、食育で行った食材を届けに来てくれたり、とにかくあたたかい気持ちと笑顔になれる場面がいっぱいの仕事だと思っている。

アレルギー児の子が段々とアレルギー解除になっていく様子、成長に伴い、処理の仕方が変わり、その成長を嬉しく思えたときなど。

タイミングや職場環境という大人の事情で、何か所かの園で働くパターンだったが、自然と笑顔になれることが多かった。


話の方向が逸れてしまうが、なぜ学校や老人ホームや病院を選ばなかったのかというと、「生(せい)のパワーに囲まれていたかった」というのも理由の一つだった。
これは自分だけの感覚なので、他人には理解しずらいかもしれないが、病院や老人ホームは命が終わる場所でもある。
元々、人間の感情の渦に置かれることが得意ではなかったので、終(つい)の家で毎日を過ごすのは、自分にとっちゃあまりにもハイリスクすぎるのだ。
うっかり目撃したり、聞いてはいけないものを聞いてしまうところも持っているので影響を受ける=命を吸われてくタイプからすると危険と判断したから、生のパワーあふれる場所を選択したというワケだ。
学校はいきなりハードルが高すぎというわけで選択肢外。

保育園も大変だけど、やってよかった仕事の一つだったなと今でも強く思う。

今は病気が何だとか、当時は想像もつかない出来事が起きて、全部ぶっ壊されてしまってるので、もう同じ仕事に就くことはないだろう。
わが子の成長に伴い、保育園から学校へというルートも視野に入れていたが、またもや大人の汚いルールとやり方に世間が壊されているので、それどころではないのかなと。


自分の中では保育園調理員の仕事は笑顔になれる仕事だと思っている。


いつかまた子どもの食事に関われればなあ。


当時の職場の園の子どもたちみんなにありがとう。
いっぱい食べて元気に大きくなってね!!

#はたらいて笑顔になれた瞬間

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