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蛇についてのメモ

折口信夫は「にじの語源はぬじで蛇の精である」と記している。
虹を蛇に結びつける概念は、ほとんど世界中に分布しているようである。
マレー半島のセノイ(senoi)族に属するセマイ族は虹を大蛇に結びつけ、この蛇は有毒な液体を発するので、虹の下を歩くと致命的な熱病におかされると信じている。

インドでは蛇は重要な信仰の対象となっている。
ナーガ (नाग, Nāga) は、インド神話に起源を持つ、蛇の精霊あるいは蛇神のことである。
上半身を人間の姿で表し、下半身を蛇として描く構図と用いる例もあるようだが、一般的なものではなく、経典等の記述においては、コブラそのものの容姿を思わせる記述としてあり、インドや南伝仏教圏においては純粋に蛇として描かれることのほうが多い。東南アジアのインド文化圏では、頭が七つある姿が多い。
釈迦が悟りを開く時に守護したとされ、仏教に竜王(ムチャリンダ蛇王?)として取り入れられて以来、仏法の守護神となっている。特に法華経の会座に列した八大竜王は有名で、その多くがもとはインド神話でも有名なナーガの王(ナーガラージャ Nāga Raja)であった。天気を制御する力を持ち、怒ると旱魃に、なだめられると雨を降らす。天候に関して責任感も持っているので、自身の感情を抑えたりもする。チベットでは、樹の枝にも棲むとされている吉兆である。 元来コブラを神格化した蛇神であったはずだが、コブラの存在しない中国においては漢訳経典において竜と翻訳され、中国に元来からあった龍信仰と習合し、日本にもその形式で伝わっている。
ヴィシュヌの寝床になっているのはアナンタ蛇王。
天地創造時(乳海攪拌)縄になったのはヴァースキ蛇王。
古代神のインドラ様(帝釈天)が退治した空の竜はヴリトラ蛇王。

レヴィ=ストロースは「生のものと火にかけたものー神話学第一部」で、南米インディオの神話における虹と蛇の結びつきについて触れている。一般に南米の神話では虹と蛇とは同一視されているようである。それは南米だけてはなく、日本の南西諸島、東南アジアのマレーシア、インドネシア、オーストラリアなどに広く分布している。
ベンガル湾東部のネグリトー系のアンダマン諸島住民は、虹を死者の世界との間にまたがる杖とみなし、死者がこの世にやってくるときにはこの虹をつたってくるといい、虹を不吉な兆し、病気の前兆と考えた。
ナイジェリアのイボ族は虹は水の精であり、水の精は蛇として姿を現すと信じている。だから彼らは虹のことを「天の蛇」という。
バヴァリ族は、森の中にいる赤い大蛇は稀に虹になる以外には姿を現さないという。もしこの蛇を殺すと、雨が降らなくなってしまうと考えている。


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