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パブリッシャーの最新グローバルトレンドとメディアの価値を高める考え方【FLUX×Browsi共催イベント】

こんにちは!株式会社FLUX 広報担当の山田です!

FLUXは「テクノロジーをカンタンに。経済価値を最大化する。」をミッションに掲げ、AI技術を開発スキルや知識がなくても簡単にビジネス活用できるノーコードAIプラットフォームの「FLUX AI」を通じて複数のサービスを提供しています。

パブリッシャー向けサービス「FLUX AutoStream」では、パブリッシャーの皆様の広告収益最大化・運用工数削減の実現のために、様々な課題を解決するソリューションを展開しています。

2023年6月1日(木)にパブリッシャーの皆様をお招きして「Publishers DAY 2023」と題したイベントを開催いたしました。本イベントはBrowsi社と共同で開催し、Pivot株式会社やパブリッシャーエンジン合同会社をゲストにお迎えし、媒体ビジネスにおける世界のトレンドやビデオ広告の潮流、媒体価値を高める方法についてお話しいただきました。

【イベント概要】
日付:2023年6月1日(木)
場所:TRUNK HOTEL
主催:株式会社FLUX、Browsi
ゲスト:Pivot株式会社、パブリッシャーエンジン合同会社

【イベントコンテンツ】
1. これが世界のトレンドだ!最新グローバルイベントレポート
2. Browsi Videoの全貌
3. FLUXが考える次の一手
4. パネルディスカッション「ユーザー体験と広告価値の両立を考える」
5. Q&A セッション

各コンテンツの詳細について、当日の写真を交えながらご紹介いたします!ぜひご一読ください!


1. これが世界のトレンドだ!最新グローバルイベントレポート

1つ目のセッションでは、Browsi社のAsaf氏からパブリッシャー向けのAIとCookieレス環境についての見解、Pivot株式会社の梅野氏からアメリカで開催された「Programmatic I/O Las Vegas」、FLUXの布施より「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT」に参加して感じたメディアトレンドについての紹介がありました。

【登壇者】
Pivot株式会社 代表取締役 梅野 浩介氏
2015年にアマゾン ジャパンの広告サプライ事業(Amazon Publisher Services)を日本で立ち上げ、2018年にAPSシリコンバレー本社に異動、シニアプロダクトマネージャーとして就任。2020年にアマゾンジャパン広告事業にて、Amazon Marketing Cloudや動画広告プロダクトを立ち上げる。 2021年8月よりGlobaliveを立ち上げ、欧米とイスラエルを中心としたスタートアップの日本及びAPACでのビジネス開発を行う。

Browsi CEO Asaf Shamly氏
イスラエル国防軍8200情報部隊の将校、動画関連サービス企業Avantisのプロダクトリードなどを経て2017年にBrowsiを共同設立。同社CEO。8年以上にわたりアドテク業界で画期的なプロダクトを構築している。オープンソースコミュニティの活発な活動メンバーでもある。

株式会社FLUX 取締役COO 布施 元大郎
三菱商事にて、衣料品の原料調達・及び最大手衣料品メーカーのサプライチェーンを担当。その後自身での起業を経てFLUXに参画。

始めにBrowsi社のAsaf氏から、アドテク周りの最新のトピックについて2点お話がありました。1点目は、パブリッシャーが活用できるAIや、そのAIの活用によりいかにコンテンツを増やし、どのように収益に貢献できるのかということ。2点目はCookieレス環境についてのトピックの中で、現地で感じたAsaf氏の見解についてです。

Asaf氏:まず私からは、パブリッシャー向けのAIについてお話しします。

皆さまもご存知の通りOpenAIのChatGPTをはじめとするAIの活用はパブリッシャーにとって大きなチャンスである一方で、同時に懸念事項ともいえる状態です。

例えばAIを活用してコンテンツを生成することや、特定のニュース記事を様々なメディアのトンマナ(スタイル)で書くことが可能です。より早くコンテンツを提供することで、ユーザーとのエンゲージメントを高めることもできるでしょう。一方で他のパブリッシャーが同じようなコンテンツを生成したり、時にはコピーしてしまう懸念もあります。

そのような状況でAIを使用しないという選択を取るのではなく、ユーザーや広告主とのエンゲージメントを高めるために、どのようなAIの使い方をするべきか考えていくべきだと思います。弊社も含め、数多くの会社から新しいAIツールが登場しており、最適なツールを採用すべきだと考えています。

もう1つ大きなテーマとして、Cookieがなくなってしまうということがあります。多くのパブリッシャーはこれに対して恐れを感じていると伺っていますが、別の角度で見てみたいと思います。

3rd Party Cookieが使えなくなることは何年も前から語られてきましたが、まだ起こっておらず、十分に対応できるような状況です。Cookieレスの環境に備えて、さまざまなツールも出てきています。アメリカやヨーロッパにおけるパブリッシャーの方も、Cookieがなくなる状況に備えてきました。iOSのプラットフォームでも、すでにその事態はやってきています。そのため広告主なども独自のツールに投資することなどを通して、適切な解決策を見つけようとしています。

次に、Pivot株式会社の梅野氏から、ビデオ広告の台頭や3rd Party Cookieの変化を受け、1st Party Cookieの重要性をより体感したといった内容についてお話しがありました。

梅野氏:2023年5月に、アメリカのラスベガスで開催された「Programmatic I/O」というイベントに参加してきました。「Programmatic I/O」とは、世界最大級のイベントの一つで、アドテクノロジー業界が注目しているカンファレンスの一つとして、日本からも多くの参加者が集まります。

イベントでは大きく3つのトピックがありました。

まず、1つ目がCTVとビデオ広告です。CTVとはコネクテッドTVのことで、アメリカでは、インターネットに接続されているテレビ端末の普及がかなり進んでおり、アメリカの93%の人口がアクセスできる状況になっているそうです。

そこにNetflixやAmazon Prime Videoのようなアプリを入れて、ストリーミングビデオが見られるようになっています。今までサブスクで月額10ドル払って動画を見ていたのが、Netflixが広告が含まれる安い月額料金のプランを出していたり、そもそも無料だったりと、金額がお手頃なサービスが増えてきています。視聴者もそれを求めていて、広告を見てもいいから安い方がいいというユーザーがかなり増えているのが現状だそうです。

さらにテレビを見ながら携帯を触るユーザーも非常に多いです。「ながら視聴」をしているユーザーに対し、どのようにするかが今後の課題であり重要だという話がありました。パブリッシャーとしては、いかに動画コンテンツを充実させ「ながら視聴」の対応をしていくか、どのように共通IDやIPアドレスをとるかが大切です。ターゲティングとメジャーメント、計測をどうクロスデバイスするかも大切な要素の一つです。

2つ目に、Google Chromeの3rd Party Cookieの廃止です。日本のブラウザの約半分くらいのシェアを占めるSafariやMicrosoft Edge、Firefoxなどは3rd Party Cookieがすでに使えない状況になっています。さらに残りの50%もどんどん減っていくというお話しもありました。

3つ目は、1st Partyデータをいかにパブリッシャーが溜めるかということと、それと同時に共通IDが重要になってくるということです。コンテクスチュアル系のSSPも増えてきているので、そういった方々と一緒に取り組むのもいいかと思います。

新しいテクノロジーはどんどん出てくるのでそれをやってみて、良かったものは続けて、だめだったら次という形でどんどん切り替えてやっていただければと思っています。

最後に、FLUXの布施より「DIGIDAY PUBLISHING SUMMIT」への参加から、市場環境が厳しい中で、マネタイズポイントの多角化に取り組んでいるパブリッシャーが増加していることをお話しさせていただきました。

布施:私からは、DIGIDAY PUBLISHING SUMMITに参加してきた際にお聞きした内容をメインでお話します。DIGIDAY PUBLISHING SUMMITとは、2023年3月にアメリカで開催されたパブリッシャーや広告関係者が集い議論するイベントです。

参加して一番感じたのは、パブリッシャーがマネタイズポイントをどれだけ持てるかという話が多かったことです。市場環境が厳しい中で、データ活用やフォーマットの実装などの広告収益の強化や、コマースメディアやサブスク強化など非広告収益の強化についてもお話しがありました。

特に大事になってくるのは、パブリッシャーがマネタイズポイントを何個持てるかということです。小規模のパブリッシャーにとっても、何を1と数えるかで変わってきますが、大体5つほどのマネタイズポイントがあります。大規模のパブリッシャーだと、その数は10前後になるかと思います。

もともとFLUXは広告回りの印象が強いかと思うのですが、複数のマネタイズポイントもサポートしていき、パブリッシャーの皆様にますます貢献ができればと考えています。

2. Browsi Videoの全貌

2つ目のセッションは、Browsi社のAsaf氏よりBrowsi Videoの全貌を語っていただきました。パブリッシャーが抱えている課題や動画広告が生み出すポジティブな効果、また理念に基づくBrowsi社のプロダクトについてもお話しがありました。

Asaf氏:私からは動画広告の台頭と、動画コンテンツがなぜパブリッシャーにとって重要なのかについてお話します。

私たちは2022年から2023年にかけて、パブリッシャーがどのような課題に直面しているか調査しました。課題は、ユーザーがTikTokやInstagramなどのSNSに流れていってしまうことや、広告に疲れを感じ、ディスプレイ広告は認知されづらいという現象が起こっていることでした。このような状況下で、動画広告が解決策の一つになりうるのでしょうか。もちろん動画広告で全ての課題を解決することはできませんが、ユーザーを維持するためにどのような方法があるのか、またパブリッシャーにとってはどんなメリットがあるのでしょうか。

動画広告がユーザーにもたらす恩恵は、視覚的に情報が伝わりやすい点と、動画であること自体がユーザーの目を引き、さらにそのまま動画広告を視聴してくれやすい点です。
ユーザーは動画に馴染みがあるので、押しつけがましくないように感じることが特徴です。また、パブリッシャーにとってはよりビジュアル的にメッセージを訴えることができます。長い間従来型の在庫を使ってきた中で広告主としては新しい形式を求めており、YouTubeなどにも予算をかけています。多様な広告の在庫獲得は、結果としてKPIが向上する恩恵をもたらします。

さらに、ユーザー層はどんどん若くなっています。若い人たちは、短いコンテンツにTikTokやInstagramを通じて慣れていることもあり、彼らを惹きつける意味では、動画でないとなかなか難しい部分があるかもしれません。動画広告に関して適切なツールを使えば、ユーザーにとって、よりよい体験を提供できます。例えば、同じパッケージの中にインライン広告や動画広告を組み合わせて展開し、それらの効果計測を行うこともできます。

動画広告がパブリッシャーにもたらす恩恵としてKPIが向上すると申し上げましたが、RPMで見た場合には13%増、それからページ滞在時間に関しては25%増といった成果も現れています。

加えて、動画広告のビューアビリティがディスプレイ広告を上回ったという調査の報告もあります。その状況下で、日本はアーリーアダプターになるべきだと考えています。すでに、アメリカやヨーロッパなど有名な大手メディアでも、動画広告の利用が増えています。日本のパブリッシャーも確実にこれを見逃すことがないようにしないと、今のユーザーは他のパブリッシャーなどに流れていってしまうかもしれません。

Browsi社では、パブリッシャー向けにAIなどを活用したプロダクトを展開し、あらゆるユーザー体験はユニークでなければならないという思想のもと、最も良い経験をユーザーに提供できるようお手伝いしています。動画広告のプロダクトも展開しており、RPM36%向上あるいはページ滞在時間が43%向上している結果も出ています。

パブリッシャーにとって、広告フォーマットが柔軟で、かつコントロール可能であることが重要です。運用管理を行うダッシュボードでは、収益やCTR、ユーザビリティ、在庫の状況だけでなく、デバイスやブラウザーの状況、それから収益に関する影響など、運用に必要な数値を見ることができます。また、動画コンテンツについてですが、多くの日本語コンテンツライブラリを日本のパブリッシャー向けに用意しており、どういう種類があるかご覧いただいた上で選択できます。また、パブリッシャーが持っている動画をアップロード、あるいはパブリッシャーが持っているYouTube動画をアップロードしての利用などにも対応できるようにしています。

最後になりましたが、私たちはFLUXの皆様と共に連携しながら、今後とも日本のパブリッシャーの収益源を多様化していくことにますます貢献していきたいと考えています。ありがとうございました。

3. FLUXが考える次の一手とは

最後のセッションでは、FLUXの平田が登壇しFLUXが考えている次の一手について、現事業の発展とよりパブリッシャーに入り込んだビジネス展開に関してお話しさせていただきました。

【登壇者】
株式会社FLUX 取締役CBDO 平田 慎乃輔
カカクコムにおいて、データ分析・マーケティング・広告収益化などに従事。食べログ・価格.com等の大型媒体の収益を統括。その後FLUXを共同創業し、パブリッシャービジネスを統括。

平田:FLUXの現事業の継続、現事業の発展、パブリッシャーに入り込んだビジネスと3つお話しさせていただきます。

私たちがプロダクトを作る際にスタートとなるのが、パブリッシャーのオンラインビジネスの最大化です。それに紐づく形で、広告売上最大化やオペレーションコスト削減を図っていくプロダクトを作っています。広告に限らず、新しいもう一本の軸を作っていこうという動きもあります。

まず、ビデオの新規プログラムをやろうと思っています。FLUX Videoという形で皆様にご提供していますが、動画のコンテンツの種類が少ないとか、字幕のものがあるなど、もう少し日本でのコンテンツを量産できないかと考えています。また「Video Syndication Program」という自社サイトで作成した動画をFLUXへ預けるシステムを作成予定としています。収益が発生するので動画を作っている会社もマネタイズでき、動画を入れられるメディアもマネタイズできるという仕組みになっています。

加えて「Video Contents Exchange」という作成した動画を自社サイトや他サイトに掲載して、マネタイズを実施出来る仕組みを構築しています。さらに「FLUX Professional Service」では、それぞれの課題に応じて、プロダクトだけでなく多くのパブリッシャーやベンダー出身者、エンジニアリングやデータ領域等のスペシャリストの人的リソースなどを提供をし、GAMの運用や商品設計、SEO対策まで幅広く対応していくことを想定しています。

「FLUX Dashboard」のアップデートも図っています。ユーザーの流入経路や流入記事を把握することで、これまでよりも詳細な運用が可能になるアップデートを検討しています。レポートはGAMで取得する為、AdX/Prebid/TAMの経路毎の数値把握を実現できます。

そして「FLUX Market Place」の強化も考えています。パブリッシャーの配信枠を媒体や枠の特性、1st Partyデータ等を用いてパッケージ化し、そのパッケージを活かして各SSP・DSPからPMP案件の引き合いを獲得、高単価案件の配信を実施することを検討しています。サイトとマッチ率の高い広告表示をすることで、コンテンツと広告の親和性を高めていきます。

最後になりますが、データとAIを活かした事業推進支援サービスについてもお話しさせてください。私たちは膨大なデータ処理に強みがあると考えています。AIの活用は得意領域であり、それに応じてビジネスのサポートをできればと考えています。お客様の事業フェーズに合わせて、新規事業開発やプロダクト開発など最適な支援パッケージをご用意しています。

データの取得やマネタイズを軸としながら、パブリッシャービジネスに精通したメンバーと、データと掛け合わせた事業開発の知見を活かすことによってマネタイズ強化をご支援できたらと考えています。パブリッシャー向けのプロダクト開発はもちろん、それ以外の領域に関しても展開を広げていきますので、今後ともいつでもご相談ください。ありがとうございました。

4. パネルディスカッション「ユーザー体験と広告価値の両立を考える」

パネルディスカッションでは「ユーザー体験と広告価値の両立を考える」をテーマに、メディア業界でのご経験が豊富な3名にお話をいただきました。

【登壇者】
Pivot株式会社 取締役 池田 寛氏
Supership株式会社の執行役員として、SSP、DSP、DMPなどアドプラットフォーム事業を統括。パブリッシャー向け広告プラットフォーム「Ad Generation」は「ジ・アドジェネ」として立ち上げから事業拡大までを牽引。2022年に同社を卒業し、Globalive社及びPivot社に所属。2022年7月1日より株式会社Leave it to meを設立し、両社にて海外ソリューションの日本進出の支援事業を展開中。

パブリッシャーエンジン合同会社 代表社員 生崎 文彦氏
日経BPに1997年入社、記者兼編集者として記事制作に携わったのち、デジタル広告と日経ID基盤関連の事業開発に従事。2017年より東洋経済新報社でメディアグロースを経験。2019年から個人事業とXimera(キメラ)で、放送局・新聞社・出版社・広告代理店メディアの現場に伴走。2021年パブリッシャーエンジンを創業。アプリ「パブリッシャー記事検索」を提供、メディアのPDCAやリニューアルを支援。

株式会社FLUX アカウントエグゼクティブ部 部長 柳田 竜哉
2001年に朝日新聞社に入社。広告局、デジタルメディア本部においてメディアマネタイズに従事。2010年より朝日インタラクティブ社でCNET、ZDNet、CNN日本語版などのメディアマネタイズを統括し、取締役として経営にも携わる。2016年に朝日新聞社に帰任後はアドテク領域に注力。2020年3月に朝日新聞社を退社し、FLUXにジョイン。

池田氏:パネルディスカッションのテーマが「ユーザー体験と広告価値の両立を考える」です。一緒に登壇している生崎さんも柳田さんも、現職に就く前は有名サイトのマネタイズを中心的にやっていた方々なので、今だから言える当時の本音に迫りたくてこのテーマを考えました。

早速ですが質問です。

当時皆様が追っていたKPIなどの目標設定に違和感は感じていませんでしたか?
マネタイズ担当者と編集担当者は売上アップという目標は共通だとしても、その目標値がチャレンジングすぎた場合、ユーザビリティを犠牲にしてしまうケースがあると思います。

わかりやすく売上を伸ばすために「インプレッションを増やす=PVを増やす」という双方の思惑が一致した数式を追ってしまうと、過度に広告やPVを増やしたりすることで、CPMやRPM向上といった広告の質に関連する指標を追いにくくなるケースもでてきます。

例えば、記事を複数ページに分割して読んでもらう仕組みの「ページネーション」です。記事の下に「1」「2」「3」・・・「8」みたいな表示を良く見ませんか?この場合、記事を最後まで読むのに7回もページめくる必要があり、それを見つけると読む気がなくなった経験はありませんか。長い記事を適度に分割するのは、読者にとって良いケースもあるかもしれませんが、やりすぎではと思うこともよくあります。

サイト運営者からすると、ページを増やすことで広告設置できる箇所が増えるので、インプレッションも増やせてPVも増やせるので、マネタイズ担当と編集担当で双方winwinな施策にも思えますが、ユーザービリティという観点ではどうでしょうか。

また、インタースティシャル広告などの極端に大きな広告があり、しかも閉じるための「✕」ボタンが小さいなど、記事回遊が本来の目的であるレコメンドウィジェットがほとんど広告になっていたりします。売上アップのためには必要かもですが、ユーザーのためにはなっていないケースが増えてきている印象です。特に広告予算が、大手プラットフォーマーにどんどん集中してきている状況だと悪い方向にさらに向かうのではと懸念しています。

このような背景を踏まえ、改めてパネルディスカッションのテーマに入っていきたいと思います。1つ目は「広告マネタイズ担当者時代、本当はやりたくないのにやった施策はありますか」というテーマです。柳田さんから伺ってもいいでしょうか。

柳田:そうですね、5年以上前のことですので、今では当たり前のように許容されているサイズですが、最初は大きい枠、ダブルレクタングル(600x300)に抵抗がありました。単価が高いこともあり、受けざるをえないところもあり解禁しました。迷いもあったのですが、クリエイティブが良ければありだと思いました。実際、収益は高かったと思います。

池田氏:生崎さんはいかがでしょうか?

生崎氏:インタースティシャル広告が挙げられます。当時スマートなインタースティシャル広告ではなかったので、アナリティクスに悪影響を及ぼしていました。読者にとっては記事が読みにくく幸せではないし、メディア運営側もどこからユーザーがきているか分からなくなるので、私にとって悩ましい部分でした。

池田氏:そうですよね、大きいサイズの広告は収益性が高いですもんね。ただ、大きいサイズの場合、上下、左右に余白を持たせたり「✕」ボタンを大きくするとかの工夫があると良いと思っています。先程、例として挙げたぺージネーションについては、どう思っていますか。

生崎氏:ぺージネーションは、もともとはインプレッションを出すためにページ分割をしていると思います。編集者はPVをたくさん取れると嬉しいですよね。そのため細切れにすればするほどPVが伸びるので、どれぐらい細切れにするといいのか、一番PVがとれるかというのを頑張っている人もいらっしゃると感じています。

池田氏:すごいですね、そのようなPV職人の方もいらっしゃるのですね。編集側はPVが多い方が成績が良く評価されるなど、様々な事情もありますよね。

生崎氏:ページ分割をやめて、Browsiみたいに差し込んでいくのが一番スムーズにインプレッションが取れ、読みやすいから良いとも思います。スマホのページだと1ぺージ、2ぺージ、3ページと立て続けになっていて、その縦につながっているページの途中にきれいに入っていて、理想的だと思います。

池田氏:ページが分割されすぎていると、離脱する人もいます。すっきりとページを1つにして広告をレイアウトし、その後に興味を持ってくれるようなレコメンドをいれるほうが滞在時間も伸びて収益も上がるかもしれません。

「居心地の良さ」をどうやって感じてもらうかということが大事なので、本質的に滞在してもらえるようなブラッシュアップをするべきだと思っています。ページネーションは難しい部分もあると感じているのですが、柳田さんはどう思いますか。

柳田:2つや3つの分割された記事が、極端にユーザビリティが低いかといったら必ずしもそうだとは思わないです。ユーザーが閲覧する上で自然な導線であれば、問題ないのではとも思います。安易に編集の目標となっているPVを達成するためにというのは少し違うなと思います。

池田氏:ありがとうございます。そうですね。居心地の良い分割であれば問題ないですよね。では、次のディスカッションテーマにいきたいと思います。「広告マネタイズ担当者時代、目標・方針・KPIがなければやりたかった施策は何ですか」というものです。では、柳田さんからお伺いしてもよろしいでしょうか。

柳田氏:色々なケースごとに、広告の位置を柔軟に置き換えてみるということを試したかったですね。ただ社内調整が難しくて実現できませんでした。編集サイドの了解をとり、実装面で技術サイドと調整するということが、少し枠の位置を変えるというだけで必要でした。

新聞は紙面では1ページの面積が決まっているので、記事と広告の総量は変えられず、それぞれの位置がある程度決まっています。テレビでもラジオでも概ね変わらないです。一方WEBサイトは、1ページあたりの情報量に制限がないので、記事の長さが短かったり長かったりと自由です。そうであれば、広告も自由な配置をやってみてもいいのではと思います。当時そう言えたら良かったと思っています。

池田氏:その話はとても面白いですね。従来、メディアの紙面の制約の慣習が少なからずWEBサイトの広告設計に反映している部分はあるかもしれませんね。柳田さんの言う通り、WEBサイトだと情報量の制約もありませんし、読者によって記事を読むスピードやスクロールするタイミングも違います。

そういう意味では、生崎さんも言ってたようにBrowsiのようなソリューションに全てを委ねてみるのも面白いですね。AIが、読者一人ひとりに合わせた広告掲載位置や表示タイミングの最適化を行うのはWEBサイトでしかできない試みですし、今の時代に沿った運用なのかもしれません。

今のBrowsiの導入は、既存の広告枠はそのままにして、更に増枠する部分をBrowsiに委ねて最適化しているケースが一般的になっています。数値としては滞在時間や離脱率に影響がないことが確認できても、広告が増えた印象を受けます。既存の広告枠を撤廃して、全てをAIに委ねてみるというのが今後のトレンドになるかもしれません。生崎さんはいかがでしょうか。

生崎氏:広告マネタイズ担当者時代、目標・方針・KPIがなければ、ぺージネーションの上側に広告枠を入れてみたかったです。既にやっている方もいらっしゃるかとは思うのですが、時代によって変化がありますね。

池田氏:生崎さんならではのお話ありがとうございます。では、最後のディスカッションテーマに移ります。「広告マネタイズ視点でもユーザー体験と媒体価値の向上は成り立つと思いますか」というテーマです。柳田さん、いかがでしょうか。

柳田:私は可能だと思います。運用担当者もマネタイズ担当者も一番大事なのは、いちユーザー視点を持つことで、読者の視点というのは常にもっておくべきだと思います。また、広告のクオリティも重要だと思います。

池田氏:広告のクオリティはどのように調整するのでしょうか。

柳田:それはブロックで調整します。読者を不快にさせるような広告をブロックするべきです。最近またちょっとひどい広告が増えているように思います。

池田氏:ありがとうございます。目標に翻弄されて自分が読者としての視点を見失うこともあるかもしれませんが、本当に大事ですよね。生崎さんはいかがでしょうか?

生崎氏:収益を取るにあたっては、広告枠はある程度リッチにしないといけないこともあると思います。

池田氏:それもありますね。クリエイティブ含め広告枠自体の価値を上げることで、あの広告枠に出稿したい、と広告主さんに思ってもらえると最高ですね。

私は、ユーザーが居心地が良い=メディアの価値が高いことだと思っています。最小限の広告で最大限の効果を上げるというチャレンジもどこかのWEBサイトさんとやれたらいいなと思っています。これからも自分が読者だったらという気持ちを忘れずにいたいです。

5. Q&A セッション

トークセッションに続いて、最後にQ&A セッションを実施しました。今後のパブリッシャーの在り方を問うような質問が、活発に投げかけられました。

Q1:動画広告の市場は伸びていると思いますが、3rd Party Cookieが廃止になった場合でも、動画広告にはそこまで影響はないと思いますか?

池田氏:動画広告が大きく伸びているのはOTT(Over The Top:インターネット回線によってアクセスできるコンテンツ配信サービスの総称)で、YouTubeやTVer、ABEMAなどです。各自の1st Partyデータの活用が可能なので、大きな意味での動画広告市場の伸びには影響はほとんどないと思います。ただ、OpenWeb(大手プラットフォームを除いた一般メディア)においては、今後、3rd Party Cookie規制の対策は必要だと思います。

Q2:リテールメディアがどういうメディアを目指していて、アメリカだとどういう勝ち筋が見えそうなのか、改めて解説いただけるとありがたいです。

梅野氏:リテールメディアはアメリカだとAmazon独り勝ちの状態です。例えば、Amazonの中で商品検索すると、広告枠が上の方に出てきたりします。Amazonの利益率はとても高くなっています。そのテクノロジーを提供している別会社がいくつもできていて、そういったソリューションを、小さなEコマースサイトなどに販売しています。既に商品を売っているリテールメディアやECサイトが、Amazonのようなソリューションを提供することを目指していくのが、勝ち筋に繋がってくると思います。

Q3:インターネット広告市場は2兆円で、毎年右肩上がりというデータがありますが、この中でメディア側に掲載するプログラマティック広告市場はどの程度で、どういう推移をしているか想定をお伺いしたいです。

池田氏:今の状況だと、今後のID規制などの影響で大手プラットフォーマーに広告予算は集中していくと思います。OpenWebでのプログラマティック広告市場は全体の10%以下だと思っています。しかし、ヨーロッパなどではOpenWebの勢いがでてきていたります。梅野さんはどう思いますか。

梅野氏:アメリカという巨大な国があり、ヨーロッパのほとんどの国が個々の情報の漏洩とか保護など、大きな会社に勝手に情報を使われている、つまりマネタイズされているというところで法律面やソリューションなど様々な対策をしていると実感していますね。

最後に

最後までお読みいただき、ありがとうございました。媒体ビジネスにおける世界のトレンドや、ビデオ広告の潮流など、今後のビジネスのヒントとなる学びや情報交換の場として、パブリッシャーの皆様にとって参考になる有意義なイベントになったのではないかと思います。

イベント実施後のアンケートでは「業界の生の声を聞くことで知見が深まり勉強になった」「動画広告の重要性を認識し、前向きに検討したい」などの声もいただきました。

引き続きFLUXとしても、パブリッシャーの皆様にとって価値ある存在となれるよう、ますますパワーアップしていきます。ご興味をお持ちいただけた方はぜひお気軽にお問合せください。


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