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海外トレンドから考えるパブリッシャー向けテクノロジーの可能性【FLUXイベントレポートvol.2】

みなさん、こんにちは!

FLUXは「テクノロジーをカンタンに。経済価値を最大化する。」というミッションを掲げ、現在はオンライン売上最大化サービス「FLUX AutoStream」と、ノーコードウェブサイト作成サービス「FLUX siteflow」を提供している会社です。

先日、Globalive株式会社様と共催で、媒体社様向けのリアルイベントを実施いたしました。海外広告市場のトレンドや媒体社様のベストプラクティスなど注目情報が目白押しで、参加者が100名を超える大盛況に終わりました。

今回の記事では、3部にわたって行われた本セミナーのうち、第1部「海外イベントのレポート」の内容をお伝えいたします。海外の媒体社様の先進事例、トレンドなどをご紹介いたしますので、是非ご一読くださいませ。

ATS London:Open Webの可能性について

まずはGlobalive株式会社の梅野様に、『ATS London2022(イギリス)』、「Cannes Lions(フランス)」のレポートをご共有いただきました。

【スピーカー】
Globalive株式会社 梅野浩介 様

2015年にアマゾン ジャパンの広告サプライ事業(Amazon Publisher Services)を日本で立ち上げ、2018年 APSシリコンバレー本社に異動、シニアプロダクトマネージャーとして就任。2020年アマゾンジャパン広告事業にてAmazon Marketing Cloudや動画広告プロダクトを立ち上げる。 2021年8月よりGlobaliveを立ち上げ、欧米とイスラエルを中心としたスタートアップの日本及びAPACでのビジネス開発を行う。

欧州で盛んに議論されていたのは、「Open Webの可能性」「リテールメディア」「データ・ドリブンTV」「ウォールドガーデン」「サービスレイヤー」でした。2022年のアドテク業界の柱はこの5つといえるでしょう。

中でも特筆すべきは「Open Webの可能性」です。Open Webとは、誤解を恐れずにいえば、GAFAのような「ウォールドガーデン」とも呼ばれる巨大プラットフォーム「以外」のメディアを指します。多くの媒体社様が該当されるのではないでしょうか。欧州で開催された両イベントでは、GDPRに代表されるような、ある意味ウォールドガーデンに対する国家レベルの施策を実行に移しているだけあって、Open Webの活況を肌で感じることができましたし、本当に元気いっぱいでした。

独立系アドテクノロジーの動向

Open Web領域でのマネタイズを図る上で、媒体社様がまず注視すべきは、独立系アドテクノロジーの動向です。

カオスマップの通り、Open Web領域では新しいアドテク企業が次々に誕生しています。これはOpen Webに可能性をみる企業が多い裏付けとも考えられます。まさに「ピンチはチャンス」を具現化していると言えるでしょう。

新しい切り口でのクリエイティブ、プライバシー観点でのCookie-lessやデータクリーンルームなどにフォーカスしたソリューションがトレンドになっている印象でした。

こうした独立系アドテクノロジーのソリューションは日本の商習慣や、運用実態とのギャップもあるため、目利きも重要になってきます。業界イベントなどを通じた情報収集や、我々のような会社に色々聞いてみるのが良いと思います。

そして、良いかも、と思ったソリューションは是非積極的に試してみることをおすすめします。一部導入や、ABテストなどもできるようになっていることも多く、チャレンジしやすい環境が整っています。まずはやってみることが重要だと思いますし、何もしないと何も変わりません。欧州のOpen Webの活況を日本でも実現したいですね。

Cookie-less対応の重要性

Chromeブラウザでの3rd Party Cookie規制が延期されたとはいえ、Cookie-lessへの対応は引き続き重要です。

そもそも、日本の場合、Safariの利用が多いため、約45%のトラフィックはすでにCookie-lessだと考えられています。この約45%をどうマネタイズするかも重要ですが、ユーザーに興味のない広告が配信されてユーザー体験を阻害することはもちろん、広告主の視点からも、フリークエンシーコントロールなどの精度が落ちることにより無駄な広告費が発生するなど、非効率な広告配信がされているという実態もあります。

では媒体社様は何をすべきでしょうか?

ID5、LiveRamp、IM-UIDといった「共通ID」をプライバシーに配慮した形で実装することは引き続き良い選択肢だと思います。

まずは、共通IDなどによりコントローラブルな土俵を媒体社側が先行して整えることは重要です。欧州では積極的にこのような環境構築に動いており、ユーザー、媒体社、広告主との良い関係が整ってきています。

また、ID関連のトレンドとして、CTV(コネクテッドTV)、アプリ、ブラウザなどのクロスデバイス関連のソリューションや、3rd Party Cookie規制の延期に伴って、Cookieシンク率を高めるようなソリューションもトレンドとなりそうです。例えばID5のCross-Device GraphやPartner Graphといった広告事業者向けのソリューションが注目されています。

データクリーンルームの活用

次に、1st Party Dataの活用もトレンドになっており、Cookie-lessの世界でも広告の精度をさらに高める取り組みが盛んです。その肝となるのが「データクリーンルーム」です。「個人が特定されない安全なデータ環境」を指します。

多様な情報をデータクリーンルームに格納し、Emailアドレスや共通IDを使ってセグメンテーションを行い、広告配信や結果検証を実施する事例が欧州を中心に広がりをみせています。

現在、別々のデータクリーンルームが情報を共有し合うことは基本的にできませんが、インターオペラビリティ(相互接続性)が実現すれば、さらに普及が進むでしょう。

複数のOpen Webが共同となり、データクリーンルームを繋ぎこむことができるなら、非常に大きな可能性を秘めた技術となりえます。まだ初期段階ではありますが、間違いなく今最もホットな分野のひとつです。例えば、Ocptable社のソリューションなどは、今後注目されていくことになるでしょう。

Programmatic I/O:USに学ぶ重要トレンド

次にFLUXの平田より、5月にラスベガスで行われた「Programmatic I/O」のイベントレポートをお届けいたしました。

【スピーカー】
株式会社FLUX 平田慎乃輔

2015年株式会社カカクコム入社。価格.com、食べログ、webCGなどのメディアマネタイズ業務を担当し、ヘッダービディングの導入やPMP販売などを担当。2018年カカクコムを退職し、株式会社FLUXを共同創業。ヘッダービディングを中心にメディアマネタイズのサポート、プロダクト開発/販売などを行う。

Programmatic I/Oでは、下記の4項目が重要トレンドとして取り上げられていました。

①CTVが成長領域として注目を浴びる
②Programmatic領域は今後も拡大する
③Googleは3rd Party Cookieの廃止を2023年からさらに延期する(確定済み)
④IPアドレスはUSで使えなくなり、Cookie-less IDの活用が進む

USの媒体社のこれから

US媒体社に関しては、今まで「アドユニットのリフレッシュ」「ビデオ広告枠」「レコメンドウィジェット」「オーバーレイ/イグジットバナー」といった手法が主流でした。

一方、今後は「フロアプライス(1インプレッションあたりの最低単価)の最適化」「オーディエンスセグメントの商品化」「技術基盤への投資」が盛んになるだろうと予測されております。

広告領域における注目施策

Contex広告の可能性
記事コンテンツに連動させた広告配信の可能性についての議論もありました。

例えば、とある自動車のリコール記事があった場合、ネガティブな印象を鑑み、自動車メーカーは広告を出稿しないことが一般的です。しかし、ここで他の自動車メーカーが自社製品の安全性を訴求する広告を配信できれば、効果的で単価の高い広告となる可能性があります。

事業会社の広告戦略
多くの会員を抱える企業の強みについても言及されました。

eBayやWalmart、Krogerなど、媒体社でなくとも、「大量のユーザーデータを持つ企業」が広告によるマネタイズに成功しています。

日本でも同様の傾向がみられています。例えば、直近では読売新聞東京本社がソニーグループ傘下のマーケティング企業「SMN」と、朝日新聞社がチケット販売大手「ぴあ」傘下のマーケティング企業「ぴあネクストスコープ」と資本業務提携を締結しています。

ケーススタディ:New York Timesの成長戦略

USの事例の最後に、老舗メディアでありながら大幅な成長を遂げているNew York Times社のケーススタディをご紹介します。

同社の成長戦略は、大きく「①広告体験の最適化」と「②顧客体験の多様化」に分類されます。

①広告体験の最適化に関して、特筆すべきは「Googleアカウントとの連携」です。

New York TimesのWebページにあるログインボタンを押すと、会員登録画面ではなく、すぐにGoogleのログイン画面が開きます。ログインのハードルを下げることで離脱を最小限に抑え、効率的に会員を囲い込むことに成功しています。

②顧客体験の多様化に関しては、「ゲームの提供」が重要なトレンドです。

『Wordle』をはじめとし、「HTML5」と呼ばれるブラウザ上で動くゲームを展開することで、顧客満足度の向上、ひいては会員数の維持・増加につなげています。

Google AdsenseはH5ゲーム上に広告を表示することで収益化ができるプログラムのβ版を開始しており、今後の動向に注目です。

Browsi社:動画実装の拡大が進む

第1部の最後には、Browsi社のAsaf Shamly様に新型コロナウイルス前後の業界トレンドを語っていただきました。

【スピーカー】
Asaf Shamly氏

イスラエル国防軍8200情報部隊の将校、動画関連サービス企業Avantisのプロダクトリードなどを経て2017年にBrowsiを共同設立。同社CEO。8年以上にわたりアドテク業界で画期的なプロダクトを構築している。オープンソースコミュニティの活発な活動メンバーでもある。

媒体社はCOVID-19から回復しているか?

まず、コロナ禍ではウェブページへの流入数が劇的に増加しました。これはパンデミックの情報を得たいという需要に加え、在宅時間の増加に伴ってウェブコンテンツを消費する機会が増えたことにも起因しました。

現在、世界的にパンデミックは終息へと向かい、通常の生活が戻りつつあります。これにより、多くの媒体社において、ユーザーあたりのPV数は約20〜30%ほど減少したとされます。

一方、購買活動が回復している分、企業が投じる広告費が増え、CPMは世界的に大幅な上昇をみせています。(もっとも、日本では遅れが見られています。)

多くの媒体社は、コロナ禍で深刻なコスト削減に迫られました。縮小傾向が続くプリント版を廃止し、デジタル版のみの展開に切り替える事例も多々ありました。

その一方、新たな収益源を育てるべく、「サブスクリプション」「ビデオ」「Eコマース」といった領域に投資を進める動きが増えております。

動画実装の拡大

ここ1年半の重要なトレンドとしては、「動画の実装」が挙げられます。

かつては放送局など大手媒体社のみが動画を制作できましたが、近年は誰もが安価に動画を制作できるようになりつつあります。小さな媒体社にとっては、外部の動画ライブラリを活用し、記事に合った動画を流すことも選択肢の一つです。

ただし、ビデオの実装にはユーザー体験上の注意点もあります。例えば、音声付き動画が自動再生されると、本当に読んでほしい記事からの離脱を招きかねません。

動画はすでに媒体社の平均収益の約20〜30%ほどを占めており、拡大を続けています。今後の成長戦略の中で最優先事項の一つといっても過言ではありません。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!
セミナー報告はまだまだ終わりません。

第2部「Publisherに役立つサービス〜コンテンツ/ツール紹介〜」、第3部「PublisherにFLUXが提供する価値〜顧客事例/プロダクト紹介〜」に関しても、後日更新していきますので、ご期待くださいませ!

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