見出し画像

【社労士×AI】2024年のAI進化と未来を予想します

株式会社Flucle代表、社会保険労務士の三田です。社労士向け労務相談プラットフォーム「HRbase PRO」(https://hrbase.jp/)を提供しています。

2023年の5月に以下の2記事を執筆し、そこからあっという間に約10か月がたちました。

ありがたいことにこれらの記事はたくさんの方に届き、「note読んだよ、おもしろかったよ」とお声をかけていただくことも増えました。

記事をきっかけに執筆依頼や取材のお声をかけていただき、
・月刊社労士11月号に掲載
・ダイヤモンドに掲載(2023年8月)
・各地の社労士会での講演
などの機会を得たことは本当にありがたく思っております。

今回はこの10か月を振り返り、AIがどう進化をしてきたか、社労士業界は、社会からどのような専門家として求められていくのかについて書かせていただきます。

最後までお読みいただけると幸いです。


2023年のAI進化を振り返る

正直、さまざまなことがありすぎてここでは書ききれませんが、ざっくり振り返ってみようと思います。AIに詳しい方には浅く思えるかもしれませんが、お付き合いください。

①マルチモーダル化した

マルチモーダルという言葉は聞きなれないかもしれません。
初期のChatGPTはAIと会話できるだけのサービスでした。つまりテキストとテキストをやりとりするだけだったのですが、最近は入力・出力のスタイルがテキスト、画像、データ(Excelなど)、音声など多岐に渡るようになってきています。これがマルチモーダルです。

マルチモーダルによってAIはより使いやすくなりました。ChatGPTだけでも
・Excelデータを読み込ませて分析ができる。
・画像を読み込ませて、それについて尋ねられる。
・ロゴ作成や画像作成もChatGPT内でできる。
・音声でChatGPTと会話できる。
ができるようになっています。

人間でいうと、頭脳だけではなく、視覚と聴覚を得たようなものです。これからさらに幅広い用途で使われることが予想されます。

②MicrosoftやGoogleに組み込まれた

MicrosoftのOfficeシリーズやGoogleのサービスにもAIを用いた機能が組み込まれてきました。
特にOfficeシリーズはすでに中小企業に展開されており、さまざまな機能が使えるようになっています。

どんなことができるかは、動画を見るのが早いでしょう。

普段の業務でExcelもWordも使っていないという社労士の方はほとんどいないかと思います。
まだCopilot自体が進化途中な感じもしますが、できることが増え、精度が上がれば、普段の業務が効率化されることは間違いないでしょう。

さらにOfficeシリーズを全部使っているとカレンダーやメール、ドキュメント、データがすべて一元管理され、AIによる検索や連携が可能になるので、業務の進め方は相当変わるのではないか、と思います。

たとえば「来週、顧問先の○○さんを訪問するから、以前のミーティングとメールのやり取りをまとめて、パワポで提案書をつくっといて」とAIに命令するだけで、AIが各データを取得し、資料をつくる未来が近づいているということです。

(ただ弊社は社内ツールをGoogleで固めているので、Googleの進化を待ちたいところです・・・)

③生成AI技術を使ったさまざまなAIサービスが生まれた

生成AIのテクノロジーはさまざまなサービスで活用されるようになりました。
2023年だけで「AI搭載」「AIを使った〇〇」というキーワードをどれだけ見たことか・・・。その中から、社労士業務でも使えそうなものをいくつか紹介します。

パワポを自動的に生成してくれる「イルシル」
(パワポ作成系は複数あるのですが、日本人になじみ深いデザインになるののがこちらです)

自動的にライティングしてくれる「AIライター」
(ライティング系も多いのですが、社労士はこれを使っている人が多い気がします)

質問文で書籍が検索できる「BUSINESS LAWYERS」(弁護士ドットコム)
(キーワード検索ではなく、「○○について教えて」みたいな聞き方をしても回答作成や書籍の抜粋をしてくれます)

ただ、日本のサービスの進化よりも海外の方が圧倒的に速い&すごいですね。紹介しだすとキリがないですが、以下などは話題になりました。

2024年のAIの進化は

AIが大きな進化を遂げた2023年ですが、もちろん2024年もさらに大きな進化を見せていますこちらも予想を含めて紹介します。

①さらに賢くなりそう

AIの進化は止まりません。2023年3月にはGPT-4がリリースされ、アメリカの司法試験を上位10%で通過したとして話題になりました。

ChatGPTはOpenAIという会社のサービスですが、Googleも負けてません。Gemini(正しい読み方はジェミナイらしい)というAIをリリースし、全32項目の性能比較では30項目でChatGPTに対してGeminiが勝っています。

というか、このGeminiは人間の専門家をテストで上回っているんですよね。AIは人間より賢くなるか?のような話は常にありますが、このような知能テストではもう勝てない気がします。

さらに、Claudeという別のサービスも出てきたり、OpenAIは数か月以内にGPT-4.5をリリースするという話もあります。GPUチップやエネルギー問題など障害は多くありますが、これから進化が止まらないことは間違いなさそうです。

②AIがPCを操作するようになる

AIがマルチモーダル化していくことは上記でも書きましたが、今後の大きな進化の軸として「PCやツールの操作」ができるようになる、があるでしょう。

社労士の方にはおなじみのRPAも操作を自動化するためのツールですが、それが事前のプログラム設定をせずとも、できてしまうイメージです。

たとえば、海外のAdeptというサービス。依頼を書くだけでホテルの空室を調べてくれたり、ITツールを操作・入力してくれたりします。

これらが一般化されていけば、クリックなどはどんどん必要なくなり、ひたすらやってほしいことをAIに語り掛けるようになるでしょう。

③AIを使った専門家向けサービスがリリースされる

ChatGPTなどの技術を生かしたサービスはたくさんリリースされています。
ただ、今のAIは完璧な回答や作成物をつくれるわけではなく、最後には専門家のチェックや修正が必要です。

ゆえになかなか専門知識のないユーザーには展開しにくく、2024年は専門家の効率化を行う専門家向けサービスが多くリリースされるでしょう。
すでに各士業向けサービスも複数リリースされています。

税理士ロボット
(税務の相談に対して法令通達などを元にロボットが答えます)

補助金エージェント
(補助金の書類を会社情報やインタビューデータ、Webなどを元にAIが作成します)

私たちも、社労士向けのプロダクトとしてAI機能を搭載したHRbase PROを提供しています。

(リリース直後から多くの社労士事務所に使っていただけており、とても嬉しく思っております)

社労士業界は変わったのか

2022年末のChatGPTリリースから、この1年半はさまざまなメディアや雑誌でChatGPTやAIが取り上げられてきました。
では、その話題の中、社労士業界はどの程度AIを利用しているのでしょうか?

社労士に特化した統計データなどはありませんが、各地で社労士向けセミナーを行うたびに挙手でアンケートを取っています。肌感覚ではありますが以下のような結果になりました。

【セミナー参加者の割合】
ChatGPTを使ったことがある人・・・約半分
ChatGPTを有料で使っている人・・・約3%~5%

もちろん私のセミナーに参加する時点でChatGPTなどのAI技術に興味がある人たちなので、社労士業界全体でみると3分の1ぐらいだと仮定して

【社労士業界の割合】
ChatGPTを使ったことがある人・・・約15%
ChatGPTを有料で使っている人・・・約1%

という感じでしょうか?

ChatGPTなどのAIを活用するためには有料化は必須であることを考えると、今の社労士業界で有効活用できている人は約1%程度かと思います。

では一般的にChatGPTがどの程度使われているのか?
ChatGPTの利用率のデータは結構調査会社によってだいぶ開きがありますが、こちらだと12.1%ですね。

NRIが行った日本のChatGPT利用動向調査によると、61.3%がChatGPTを認知し、12.1%が実際に利用したことがあると回答

https://aismiley.co.jp/ai_news/nri-chatgpt-announcement/

AIの一般活用については、そもそも日本自体が大きく遅れており、アメリカでのAI活用はかなり進んでいるようです。

社労士で活用できている人が1%程度であると想定すると、社労士業界は残念ながら、AI活用が遅れている業界であることが分かります。

ただし、逆にいえばこれはチャンスではないでしょうか。

日本自体が遅れていることもあり、今しっかりAIを学び活用することで、業界の最先端に位置できたり、顧問先にAIを用いた品質の高いサービスを提供できるため、事務所をよい方向に転がしていけるのです。

私たちは大きな分岐点に立っているともいえます。

AIの本質と専門家の役割

今のAIが使いにくい理由

今のAIを多くの人がうまく活用できない理由、それは「明確な指示が必要だから」だと思っています。
私の好きなフレームワークで「願望→要求→指示」というものがあります。

こちらのSTUDIOの石井さんが語っていたもので、今のAIに何ができるかを考えるうえで非常に参考になります。(細かい定義なども記事を参考にしてください。)

今のAIを使いこなすためには、自分の「願望」を「要求」に、そして「指示」に具体化してAIに命令する必要があります。

ただ、これが思った以上に難しいことが分かってきました。
特に日本は暗黙知文化です。「いい感じにしといて」「はいよ」のようなコミュニケーションが多く、詳細に指示をすることに慣れていないのです。
ゆえにAIに命令するときに具体化できない、もしくは具体化がめんどくさくなってしまい、AIを活用できていないという現状があります。

専門家の役割

AIのために具体的な指示を出すのが大変だということを説明しましたが、これは逆にいうと顧客のニーズでもあります。

社労士をはじめとする専門家が価値を発揮できるのも、「顧問先の願望を要求、指示に落とし込める」という点ではないでしょうか?

たとえば顧問先から「就業規則に○○という文言を追加してくれ」といわれることは稀です。むしろそこまで具体的な指示であれば、顧問先が自分で作業を行います。

通常は「従業員のために何かしてあげたいんだけど、先生、何かない?」みたいな曖昧相談が多いのではないでしょうか。
そのような相談に対して、法律上の知識やさまざまな事例を元にして、要求や指示レベルまで具体化していくのが専門家の仕事です。
なぜなら顧問先は、自分たちが何をやりたいかが分からないからこそ、専門家に相談をしているのです。

今後のAIの進化

AIは指示だけではなく、要求レベルで、もしくは願望レベルでもユーザーの思い通りに動くように進化をしようとしています。

2024年2月、ChatGPTは過去の会話を覚えて、次の会話に反映するメモリ機能をリリースしました。
つまり明確な指示がなくても、会話から「過去のやり取りを学習し、曖昧な命令でもユーザーのやりたいことに近づく」ことが可能になったのです。

これからのAIはより学習を深め、ユーザーのやりたいことが曖昧でも思い通りの動作をしてくれるようになっていきます(もしくはAI側からさまざまな提案を行うようになるでしょう)

とはいえ、依頼主が「何がやりたいかわからない」のなら、やはり人が「願望、要求から指示への具体化」を行う必要は残ります。

これらの情報をまとめると、専門家のこれからの仕事が見えてきます。

・現在のAIは指示レベルまで落とさないと思い通りに動かない
・人は指示レベルまで落とすのが大変。具体化する力がないこともあるが、専門知識や経験がないと指示レベルに落とせないことも多い。
・専門家の仕事はそういった顧問先の「願望」を具体化していくこと。
・具体化した後の作業はAIが得意なので、AIを活用して効率化する

相手の願望を指示に落とすためには、相手の思いや背景、状況などを深く理解する必要がありますが、そのあたりの話はまた別で書ければと思います。

「AIと専門家」の領域についてはいろんな切り口があり、話が尽きません。

どうすれば専門家がより価値を発揮できるかについて、私も引き続き考え抜いていきますし、皆さまと議論できる機会があれば幸いです。

私たちの進化について

お読みいただきありがとうございました。

4月8日、私たちは自社サービスに「労務相談AI」を搭載し、プレスリリースいたしました。

労務相談AIは、労務相談の質問を入力するとAIが関連資料を集め、回答の要約を自動で作成することができる社会保険労務士特化型AIです。根拠資料の重要性を理解した社会保険労務士と専門チームが開発し、汎用AIでは実現しなかった専門家仕様の回答が生成できることにこだわりました。

イベント選択式でだれでも使えるインターフェースと、作成された要約から引用元にすぐアクセスできるという特徴を持つ、Flucleが業界を先駆けて開発したAIツールです。

どこまで進化するか分からない新しいテクノロジー、AI。その不思議さと可能性に惹かれ、多くのリソースをつぎ込んで開発を進めています。ご興味があれば、ぜひ一度お問い合わせ下さい。

AIやテクノロジー、士業に関する講演会のご依頼もお待ちしております。



この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?