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総務に届く『問い合わせ対応』をしたい(知的障害・発達障害のある社員のためのお仕事ライフハック)~ 総務からはじめる、障害者雇用ノウハウ ~

はじめに(チームより)

「こどもたちのために、日本を変える。」事業開発、政策提言、文化創造の3つの軸で、こども・子育て領域の社会課題解決活動と価値創造を行う国内最大規模のNPOである「認定NPO法人フローレンス(詳しいご紹介はこちら>>)」において、総務関連チームで障害者雇用スタッフのサポートを担当しているジョブコーチ*1の和田です。自己紹介はこちら>>

知的障害・発達障害のある社員が持つ悩みに対して、本人やサポーターが今日から取り入れられる「ちょっとした、お仕事ライフハック」をご紹介しています。


▼本日のお悩み
「総務は社員から声をかけられることが多く、仕事が進みません。障害のある社員に問い合わせ対応をしてもらいたいのですが、何か良い仕組みはありますか?」

ライフハック①社内受付テーブルを作って、有人対応しよう

「備品はどこにある?」「午前中に荷物が届くはずなんだけど、まだ届いてない?」など、総務には、全社のお困り事が日々集まります。質問のある社員が総務に来る度に、総務部全員が『誰が対応するんだろう…この仕事は仕上げたいから手を止めたくない、早く誰か対応してくれないかな...』と心で思う…なんてことになっていませんか?

こんなお困りごとやお悩みの解決策として、「社内受付」テーブルを作って、問い合わせを集約してはいかがでしょうか。市役所に行くと受付窓口がありますよね。そんな感じで、スタッフは当番制でフロアの入り口近くに置いたテーブルに座り、社員対応をメインに行うのです。

フローレンスでは障害者雇用のスタッフを中心に写真のような「社内受付」の窓口担当を行っています。モバイルWi-Fiや共有パソコンといった研修用品など全社で使う貸出備品の準備や貸出から、郵送物の受取・発送などの基本業務に対応しています。さらに「クリアファイルはどこにありますか?」などの備品の案内や、「パソコンの充電器を忘れてきちゃったので貸してくれませんか?」など、ちょっとした質問に答えています。

フローレンスの社内受付です。この写真では誰も座っていませんが、いつもは笑顔で担当者が座っています。

この社内受付があることで、他の総務メンバーは他の業務に集中できるようになりましたし、障害のあるスタッフも社内受付担当になることで、他部署のスタッフとのコミュニケーションも活発化し、受付以外でも挨拶を交わしたり立ち話ができるようになりました。

ライフハック②問い合わせフォームを作って、24時間受付をしよう

「入社する社員がいるのでロッカーを準備してほしい」「社内で飲食付きのイベントをしたいんだけど、ケータリング会社を教えてほしい」など、社内受付ではすぐに対応できない相談も総務には数多く寄せられます。そんな時は、問い合わせフォームを作るのがおすすめです。

フローレンスの総務チームでは、キントーン(kintone※サイボウズ株式会社によるクラウド型業務アプリ開発プラットフォーム)と連携できるWebフォーム作成ツール「フォームブリッジ」で作ったお問い合わせフォームを使っています。

お問い合わせフォームがあることで「質問の切り分け」ができるようになりました。例えば、「通常のルールがあり、よく受ける質問」は、社内受付で障害のあるスタッフが答えて、「ルールがなく、時々しか受けない質問」は、「お問い合わせフォームにお願いします。後で他のスタッフが答えます」と伝えれば良いので、障害のある社員でも安心して対応が可能です。

ライフハック③バックオフィスの問い合わせ窓口を可視化する

どんな職場にも、その職場特有のルールや部署の役割があります。例えば新しい社員が入社した時に貸与するPCやモバイル等は、一般的には情報システム部門などが準備することが多いと思いますが、フローレンスでは、総務チームが準備しています。

そういった「組織独自のルールや部署の役割」を入社したばかりの社員が把握を出来ずに、総務に問い合わせるべき質問が情報システムチームや他のバックオフィスチームである人事や経理に流れ、問い合わせたスタッフ、問い合わせを受けたスタッフ双方に労力がかかっていることが度々ありました。

そこで、写真のような総務を中心としたバックオフィスの問い合わせ一覧表を作り、社内受付の入口の壁に張り出しました。入社した社員へその一覧を周知することで、社内の独特のルールや部署の役割をわかってもらうことで、適切な部署への問い合わせ誘導が可能となりました。

以前の記事「郵便仕分けがしたい」ライフハック③「どう送ればいいの?」を可視化するでも、一覧化についてご紹介しましたが、

組織のルールやチームの役割を一覧化して可視化することは、障害の有無に関わらず、問い合わせにかかるコストの削減や、問い合わせのために考える時間を手放すために必要なのかなと感じます。

最後に

「社歴15年のマーケ担当者が、NPOで障害者雇用を推進するチームに転職して驚いたこと3つ」の「初、バックオフィスでの驚き」にも書きましたが、総務には「どこに相談したらいいかわからないから、とりあえず総務に聞こう」と質問が集まりがちで、総務メンバーには知識量が沢山求められます。

頼りにされることは良いことですが、障害者雇用の社員が総務業務を行う場合は、障害者雇用の社員が対応できる質問の切り分けが必要になります。問い合わせを集約し、切り分けすることで、わかりやすい総務を目指しましょう。

*1「ジョブコーチ」 企業に在籍し、同じ企業に雇用されている障害のある労働者が職場適応できるよう様々な支援を行う人を、企業在籍型ジョブコーチといいます。

執筆の背景

障害者雇用関連の情報は、採用・育成の事例やノウハウばかりで、採用した障害者雇用の社員に「どのような業務を、どうやってもらうのか」のノウハウが足りていません。

そこで、実務ノウハウや、障害者雇用チームの立ち上げ経緯などを公開することで、障害のある社員自身や総務担当者が、はじめの一歩を踏み出せるシリーズを立ち上げました

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