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『妻が怒りの赤鬼化』

『何やってんの!!』

『早くしなさい!!』

『自分でやりなさい!!』

そろそろ7才を迎える長女はいつも怒られてばかりだ。

子供が親から怒られる1番の時期かもしれない。

自分もそうだった様に思う。

当時の僕は、その奥に深い愛が存在していて、将来を思われているが故に怒られているとは考えもしない。

【ママ、こわ】

きっと長女もそうだろう。

先日、初めての授業参観が行われた。

仕事とのタイミングも都合が良く、見に行ける事になったので妻と交代で参加させてもらう事になりました。

授業開始の少し前に学校に到着。

休み時間もどんな感じで過ごしているのか見てみたいし、何より僕を発見した時に気恥ずかしそうに笑うだろうその顔が楽しみだった。

長女のクラスに到着して、教室の中で所狭しと動き回るクラスメイトの中から長女を探す。

固まってお話をしている女の子の集団の中かな?

かくれんぼしている子たちもいる、どこかに隠れているか?どこだろう?

数十人いる中から自分の子供を見つけるのは簡単だろうと目をくるくるさせるが、なかなか見つからない。

その時1人だけ、椅子に座ったまま、机に両手を重ねてその上に頭を乗せて静かにしている生徒を発見。

長女だ。

慌てて近くに歩み寄る。

『どうした?』

『あ、パパ』

期待していた気恥ずかしそうな笑顔はそこになく、あるのは辛そうな表情。

『耳が痛い』

手で右耳を押さえながら訴えてくる。

『え?いつから?』

『さっきから』

『朝は?家出る時は大丈夫やったやろ?』

『家からちょっと痛かった』

『今めっちゃ痛いん?』

『うん』

『じゃ先生に言いに行こう』

楽しそうな声が響く教室の中を長女の手を引き先生の元まで連れて行く。

『あら、どうしました?』

『ほら、自分で言いなさい』

『耳が痛いです』

『え、そうなの?』

『いつから?』

『さっきからずっと』

『保健室いく?』

頷く長女。

『すみません、じゃちょっと連れていってきます』

『廊下出てまっすぐ行かれて右手にあります』

そう教えてもらった保健室で熱を測ってもらう。

『お熱はないね?痛い?』

頷いている。

『そっか、お勉強できないくらい痛いかな?病院行く?』

少し考えたような間があってから頷いている。授業見てもらえなくなることはわかっているのだろう。

大幅な予定変更が決定してしまった。

元気よく手をあげ、答えを発表する姿が見られるかもしれないなんて想像は脆くも崩れ、【耳が痛いらしく早退して病院に連れて行く事になったから、診察券等準備しといて】と妻にLINE。

教室で病院に行くの旨を伝え、ランドセルと荷物をピックアップして帰宅の途に。

玄関を開けると、病院セットを準備完了してくれいる険しい表情の妻。

『大丈夫?』

『、、、痛い』

学校を早退して病院へ、この状況を心配しない親はいない。

大急ぎでそのまま僕が耳鼻科に連れて行くと中耳炎との診断。まだひどくなる前だったから抗生物質と痛み止めをしっかり飲めば、すぐに良くなりますとのこと。

妻に報告を入れて、安心する。
帰宅し、お昼ご飯を食べて薬を飲み痛みが引いて幾分か元気が出てきた長女が僕に話しかけてくる。

『パパ〜誕生日プレゼントさぁ、Switchのゲームにしようかなぁ』

『ダメ!』洗い物をしながら妻が入ってくる。

『あんたこの前買ってもらったソフト全然ちゃんとやってないじゃない!あれだけ欲しいって大騒ぎして買ってもらったのに全然やってないじゃん!どうせまたやらなくなるからダメ!欲しいなら買ってもらったソフトクリアしてからにしなさい!それでなくても昨日はちがうプレゼントが欲しいって言ってたのに、昨日言ってたプレゼントに対する情熱はどこいったのよ!?本当に欲しいモノじゃないでしょ!』

僕たち2人は、半端に欲しいモノなら誕生日を過ぎてからでもいい、しっかり考えなさいと娘には教えている。でも彼女の口から出てくるのはどう聞いても半端にほしいモノばかり。
それを見抜けない親はいないと思う。
しっかりと自分に何が必要か、見極める目を持って欲しい。なのにアレやこれやと変えてくるあたりも妻の怒りの炎に薪をくべている。

誕生日プレゼントのくだりはこれ以上つづけてはならないと悟ったか、話題を変えてくる長女。

だが次の話題は妻の怒りの炎にガソリンを足すようなものだった。

『パパ、小学校にさ髪の毛染めてる男の子いるんだよ』

『へ〜、そうなんや〜』

妻は静かに洗い物をしている。

『なんかね前髪のところがね、金髪なの』

『ああ、パパも見たよ。たぶん3年生とか4年生ぐらいの子やろ』

『そうそう、あの子めっちゃ金髪だよね?』

『ん〜、まあ、そうやな〜』と気のない返事を返す。

なぜこんな話をしてくるのかと言うと、長女は髪の毛を染めることに憧れている。

最初はプリンセスへの憧れからだったが、色々なエンタメに触れるに連れ、プリンセスからYouTuberへと流れ、どのチャンネルなのかはわからないが、子供ながらにしてガッツリ髪の毛を染めているyoutuberの子を見たらしい、そしてその姿に憧れた。

数ヶ月前から、時間があれば髪の毛を染める話をしてくる『どうしてわたしは染めちゃいけないの?』

『どうしてYouTubeのあの子は染めててもいいの?』

子供独特のしつこさで何度も聞いてくる。

妻も僕もウンザリしていた。

子供が寝てから、夫婦で話し合いを持った夜がある。

『髪の毛染める話、しつこいなぁ』

『ね、ほんとに。YouTube撮影の時も言ってたもんね』

子供の頭皮に絶対良くないのは大前提あるとして、あれだけオシャレに興味を持つのは悪いことでは無いのではないかという夫婦共通の感覚もある、で夫婦で出した結論。

夏休みの期間だけ、いつもお世話になってる信頼している美容師さんの元で毛先だけ染めてもらうことを許可しようということに、ずいぶん前になっていた。

しかもそれは長女にもキチンと伝えてある。そして、この話はもう終わりだと。

夏休みだけのしばしのオシャレは許可する代わりに、髪の毛を染める話はもうしないこと。

それが3人で交わした約束だった。

なのにこの日、耳の痛みが楽になったのが手伝ってなのか約束を忘れて堂々と話をしている。

そして自ら、妻の怒りのトリガーを引いてしまう。

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