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禁煙麻雀スーパーマンの思い出

2020年10月11日、横浜のとある雀荘が閉店することになりました。

「禁煙麻雀スーパーマン」という雀荘です。

僕は一時期この雀荘に通っていたことがあります。今さら記事なんて書いても何の生産性もありませんが、当時の記憶がただただ忘却の彼方に消えていってしまうのも寂しいものです。こんな雀荘があったんだということを後世に残すためにも、あの日の思い出をネットの海に漂流させたいと思います。

初めてのスーパーマン

スーパーマンは横浜から少し離れた日ノ出町という場所にあります。桜木町の近くです。当時の僕は京急線ユーザだったので、仕事帰りに少し寄ってみようかなということで立ち寄ることにしました。

日ノ出町というのは結構怪しげな土地です。大人のディズニーランドのような店がエレクトリカルパレードのようにズラッと並んでいて、近くの川面に反射してアダルトな輝きを放つような街並みです。酒の空き缶がそこら中に置いてあり、特級呪霊化したおじさんが呻き声をあげて彷徨っています。昔はアヘン街として有名だったそうです。

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僕もまともな精神ではいられないなと思ったので、大岡川のほとりでビールを飲んでから店に行きました。店はビルの二階。暗くて細い階段を登ります。入店を知らせる変なブザーが鳴ってしまったのでもう引き返せません。

呼吸を整えてドアを開くと、意外にも小綺麗なオフィスのような場所でした。その日は確か二卓くらい立っていたと思います。常連の人が中心で落ち着いた感じでした。禁煙なので空気は綺麗だし、スリッパに履き替えるので、店内はとても綺麗です。

ルールは某Mチャオとほとんど同じでthe・ピン雀という感じでした。店長もメンバーも丁寧で安心です。おしぼり・ドリンク・近代麻雀という待ち席三種の神器もちゃんと揃っていました。預かり10000Gくらいを出して、コーラを飲んで案内を待ちます。

こうして僕はスーパーマンデビューしました。チップ1枚500Gなので赤ドラがあると燃えますね。リーチが飛び交うし、赤がある人はゼンツしてくるし、非常にスリリングな麻雀です。

もうかなり前の話ですが、その日は結構勝った気がします。新規の特典ももらってホクホクでした。帰りに赤レンガ倉庫まで歩いて、勝利のビールを飲みました。停泊中の豪華客船の灯がキラキラと輝き、爽やかな海の風が吹いています。あぁ俺はこの一瞬のために生きて来たんだ。

メンバー強すぎ問題

初めて訪問した時は全く知らなかったのですが、スーパーマンのメンバーには天鳳高段位者がゴロゴロいたみたいです。十段も何人かいたとか。見た目は「最近麻雀デビューしました🤗」みたいな感じなのに、打牌速度や鳴き判断はガチ勢…。その後通っているうちに大学方面でいろいろトラブった人たちなんだと知りますが、当時の僕は「こいつら強すぎひんか…?雀力にステ振りしすぎちゃう?」と薄々感じていました。

その日、スーパーマンでは「連勝戦」というイベントをやっていました。開店から最初に2連続トップを取った人にお店から10000G出すという脳汁噴出の激アツイベントです。僕は14:00くらいに行ったのですが、当然満卓になっていました。そのほとんどがネット麻雀強者だったのではないかと思います。メンバーが天鳳界で有名だと客も強い奴が集まるんですね。もし天鳳の鳳凰卓をリアルに再現したらあんな感じでしょう。都内でも中々見ないような光景でした。普通なら絶対イヤですが、僕は「俺より強い奴に会いに行く」の精神で臨みました。麻雀サイヤ人の血が騒ぎます。


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最終的にカゴを没収されるまで戦いました。連勝戦に来たのに2連続地蔵ラスです。圧倒的ヤムチャ目線で辛かった…。諭吉3枚が英世3枚になってしまいましたが、あんなバチバチの戦場も中々ないので高いゲーム代だったと思いましょう。強くなれる理由を知った…今となっては良い思い出です。

麻雀エンジョイ効率

ある日、僕はいつも通り麻雀を打っていました。3Gくらい打ったしそろそろ帰ろうかなと思っていたところです。

「何か食べますか?」

隣の卓で打っていたダンディなオジサンが急に声をかけてきました。突然のことだったので「え…あ…ぁ…」みたいな偏差値30の言葉しか出てきません。日ノ出町特有のヤバイ隠語か?怪しいキノコでも売ってるのか?と思考を巡らせます。他のお客さんやメンバーを見ると「社長!今日はどれにします?」とノリノリです。

「今日はココイチかな!」

ココイチ…?え、CoCo壱?いやカレー屋かよ!

実はこのオジサン、店のオーナーの方でした。オーナーがみんなの晩飯を奢るという神イベントだったのです。断るのも申し訳なかったので、とりあえず僕もカレーを頼みました。「その分この雀荘に通えば良いんだ」と言い聞かせて。

「うちの系列に弁当屋があるんですけど…食べますか?」※オリジン弁当

「昨日はカレーだったから今日は牛丼にするか?」※松屋

オーナーの奢りイベントにはその後もお世話になりました。麻雀でボコボコに凹んでも、何か食べてお腹いっぱいになればそれで満足してしまうものです。あるとき、CoCo壱で5辛のカレーを頼んだことがあるのですが、5辛って結構辛いんですよね。汗が止まらない止まらない。おしぼりたくさんもらって、汗が引くまで代走してもらいました。オーナーはそれをみてケラケラ笑っていました。

オーナーは自ら卓に入ることも多くて、僕もよく同卓しました。赤ドラがあるとすぐに顔に出てしまったり、リーチ後に赤を持ってきて放銃するとこの世の終わりのように絶望したり、とにかく赤ドラが好きな人でした。九連宝燈に振り込んだ話を常連みんなに楽しそうに話す。メンバーの若造リーチを追っかけで討ち取る。テンションが高くなり過ぎると、店長に渋々注意される。あの店で一番麻雀をエンジョイしていたのはオーナーでしょう。それにつられてメンバーや常連も麻雀をエンジョイしてました。日ノ出町という土地柄に似合わず、アットホームで良い雰囲気の雀荘だったと思います。


そんな感じでちょこちょこ通っていたのですが、今年の初めくらいから足が遠のいて行かなくなってしまいました。コロナで店が閉じていたのもありますが、在宅勤務で京急線に乗らなくなったのが大きいですね。最後くらい行きたいなと思っていたのに、都合が悪く残念です。スーパーマン関係者のみなさん、ありがとうございました。


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最近は新型コロナで色々と大変な世の中ですが、この調子で行くと数十年後にはフリー雀荘という文化自体がなくなってしまうかもしれません。フリー麻雀に行ったことがないひとはわからないかもしれませんが、「名前も知らない誰かと卓を囲む」というのはとても貴重な経験です。

年下の大学生に舌打ちされたり、良い年したおじさんにリーチ合戦で競り勝って悔しそうにされたり、役満をツモられてみんなでゲンナリしたり、プロがチョンボしてホンワカしたり…

麻雀の打ち方は十人十色、必ずその人の性格や人柄が出ます。そういった人間性を感じることができるのもフリー麻雀の醍醐味です。これまでたくさんの「名前も知らない誰か」と対局してきました。もちろん嫌な思い出もありますが、どれも貴重な経験です。この先数十年そういう場が続いていって欲しい。そのためにも今後もいろんなフリー雀荘に行こうと思います。

僕の思い出はこんなところです。ガッツリ通っていたわけではありませんが、やはり馴染みのある雀荘がなくなってしまうのは悲しいですね。「俺も行ったことあるぜ!」という方は是非その思い出をnote記事やTwitterに綴ってみてください。

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