おばさんは良く笑う

トムクルーズ

「ねえねえちょっと聞いてくれない。心に収まりきれなくて」おばさんの会話は、こんなフレーズから始まる事が多い。
「あの英語のよく出来るチョット可愛いY子ちゃん、最近結婚したの知ってる」とおばさんA子。
「知ってる、知ってる。結婚式は身内だけだったんでしょ」
「私、彼女にたまたま更衣室で会ったらご主人の話していたから、芸能人なら誰似って聴いて見たの」
「で、誰に似てるって」
「トムクルーズ」
「トム、うっそー、うらやましい」おばさんはトムクルーズが大好きだ。
「でっしょう。そしたら今日は帰りに駅でご主人と待ち合わせているっていうじゃない。トムよ。トム。私の使っている駅と違ったけど、私もその駅なのと言って彼女と一緒に帰ったの」
「まあ、あなたも暇ね」
「トムよ。トム。普通行くでしょう。」
「まあ、トムならね。で?」
「彼女、駅に着いたら何かお相撲さんのようなシルエットの人と話しはじめたの。ご主人はトム、この人はただの知り合いと思ってたら、何と主人ですと紹介するじゃない。やめてーって、おばさんの貴重な時間を返してと叫びたくなったわ。」
笑、笑、笑。
「まあ、岡目八目、結婚したばかりだからしょうがないんじゃない。内の旦那でも結婚した時は寝てる姿が素敵に見えたもの」とおばさんB子。
笑、笑、笑。
「でも、あれはダメ。不正確過ぎる。顔は似ていなくてもせめて背格好は似てないと」
「そんなに違うの?」
「違うって、あなた、駅に立っていたのは身長186cmはあろうかという巨大なアンパンマンよ」
見てはいけないものを見てしまったというかのように忌々しそうに言うA子におばさん一同大爆笑。


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