見出し画像

体の中の通信手段

今回からは、「体内での情報伝達と調節」についてお話しします。これの分野では、体の調子を一定に保っておくために、体がどのように連携しているかということです。例えば、気温が上昇すると汗をかく、走ると心拍数が上昇して息が上がる、などです。これらは、体が勝手にやってくれていることですよね?自分で汗をかこうと必死になっても出てきませんが、気温が上がると勝手に流れてきます。これは、体の中のどこかで温度があがったことを感知して、それをもとに体温を下げる手段として汗を出します。これらの一連の流れを学ぶのが、「体内での情報伝達と調節」です。まずは、体内での情報伝達についてお話しします。

主役の細胞は?

先に紹介だけしますが、体内での情報伝達に関わる細胞は、神経細胞と内分泌細胞です。どちらも、AからBに情報を伝えるためにある細胞ですが、強いて言うと、神経細胞は有線、内分泌細胞は無線といったところでしょうか?

前衛的ですが、神経細胞です。表紙に使ったいらすとやの図の方がきちんとしています。

まずは、神経細胞から紹介します。細胞といえば、球体のものをイメージすると思います。しかし、神経細胞は細胞体と呼ばれる球体の部分から毛のような樹状突起がたくさん生えており、さらに細長い軸索が生えています。
この細胞の働きは脳から体の末端へ情報を伝える、または体の末端(足の小指を角にぶつけたとか、熱いヤカンを触った)の情報を脳に伝えることで、情報を受け取った神経細胞は”興奮”します。ここでは詳細は話しませんが、興奮している神経細胞は細胞内で電位が変化することで発生します。イメージしやすいように、微弱な電流が流れると表現されることがあります(かなりいい加減に言ってます)。この興奮を次々ととなりの細胞に伝えていくのですが、この伝わるしくみは突起にあります。細長い軸索の先端は、となりの神経細胞の樹状突起と繋がっています。繋がっているのですが、接続はしていません。少しだけ隙間が空いており、その隙間の名前を”シナプス”と言います。軸索の先端には、シナプス小胞という小さな袋があり、この中に神経伝達物質が詰まっています。神経伝達物質は名前からして、色んな物質の総称なのですが、これについては後述します。興奮が軸索の末端まで伝わると、このシナプス小胞が隣の樹状突起に向けて放り出されます。すると、小胞内の神経伝達物質がシナプスに飛び散り、隣の樹状突起にある神経伝達物質を受け取る受容体にぶつかります。すると、隣の神経細胞が興奮し、興奮はその細胞の軸索の末端に伝わります。

神経の種類

私たちの体の中には、神経系とよばれる神経細胞によってできた器官があります。この神経系は大きく「中枢神経」と「末梢神経」の2種類に分かれます。「中枢神経」は、脳と脊髄のことです。「末梢神経」は、さらに「体性神経」と「自律神経」の2種類に分かれます。「体性神経」は、運動神経と感覚神経のことなのですが、こちらについては今回は述べません。私たちの体を調節している神経といえば、「自律神経」の方が有名です。交感神経と副交感神経があるのですが、どのような働きをするのかは後述します。これら神経系は全て、前述した神経細胞でできています。

脳の役割

中枢神経である脳は、5つの部位に分かれています。役割を簡単に紹介すると、以下のようになります。

大脳:感覚器官の中枢、思考や精神活動の中枢
間脳:視床と視床下部などからなり、自律神経と内分泌系の中枢としてはたらく
中脳:姿勢保持や眼球運動、瞳孔反射などの中枢
小脳:筋肉運動の調節や体の平衡を保つ中枢
延髄:呼吸や血液循環などの生命維持の中枢

ニワトリの脳を摘出したものです。Aが大脳、Bが中脳、Cが小脳です。

今回は、体の調節のしくみを説明しているので、間脳と延髄のことをよく覚えておいてください。ちなみになのですが、間脳・中脳・延髄は生命維持に関わる中枢となっており、脳幹と呼んでいます。何かのアクシデントで、この脳幹の機能が不可逆的に停止してしまうことを、脳死と呼びます。

アクティブ&リラックス

末梢神経の交感神経と副交感神経の役割は、簡単にいうと体をアクティブモードやリラックスモードにすることです。交感神経が働くとアクティブモードになります。要は、運動をしたり、試験を受けたりする時にはたらくので、心拍数をあげたり、気管支を広げて酸素を送り込みやすくしたりします。反対に副交感神経が働くと、リラックスモードになって、血圧を下げたり、瞳孔を小さくしたりします。ただ、モード変換は脳と自律神経が連携して行います。その例を挙げると。
激しい運動を行なって、血液中の二酸化炭素濃度が上昇するとします。この二酸化炭素濃度が上昇した血液が延髄に流れることで、脳が「全身にもっと酸素をおくらなければ!」と判断します。すると交感神経を通して心臓に「心拍数をあげて!」というメッセージを伝えます。ちなみに、心臓が一定のペースで拍動するのは、心臓の右上の部屋の右心房にある洞房結節(別名:ペースメーカー)が、一定の間隔で興奮しているためです。交感神経からのメッセージは、このペースメーカーへ伝えられ、拍動のペースが上昇することで、心拍数が上がります。心拍数が低下するのは、その逆で、血液中の二酸化炭素濃度が低下して、延髄から副交感神経を通して心拍を下げる指令が伝わります。

自律神経は見えませんでしたが、視神経が見えました。

自分とうまく付き合おう

高校生物の定期試験や大学入試の観点からいうと、交感神経と副交換試験で体にどのような変化が起こるのかを覚えなければならないので、大変です。「何を覚えるべきなのか」という質問を受けることがあるのですが、「学校の先生が100点満点の試験の10〜20点分を使って自律神経の役割だけ聞いてくると思いますか?」というのが返事になります。もっと理解しているか確認したい場所がたくさんあります。「交感神経が働くとアクティブモードになるから、心拍数があがる」といった感じで判断してくれたらよいです。
試験にでるかより、この知識を使って自分の体をうまくコントロールできるようになってほしいです。私は時折なかなか寝付けないのですが、睡眠に入るには副交感神経を優位にする必要があります。自律神経は名前の通り、”自律”しているので、自分の力でコントロールできるものではありません。しかし、アシストはできます。例えば、入浴を寝る2,3時間前にするとかです。入浴すると、水圧で心拍や血圧が上昇するのですが、それを低下させるために副交感神経が働くようになります。他にも、部屋を明るくしすぎない、刺激的なゲームをしないなど、副交感神経を優位にする方法があります。まあ、それができないから寝れなかったりするんですけどね。

Youtubeを始めました。興味を持っていただけましたら、チャンネル登録していただけると幸いです。


この記事が参加している募集

学問への愛を語ろう

生物がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?