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お魚ランキング(赤い魚編)

大手のスーパーマーケットなどで流通することの少ない地魚の寄生虫を調べるべく、あちこちで魚を採取(主に購入)しています。漁港の即売所などにいくとミシマオコゼのように奇妙な形態の魚や、鮮やかな色の魚がおいてあります。魚の色の多彩さだけで勝負するのであれば沖縄県にかなうものはないとのことですが、本州では棚が真っ赤な魚です埋め尽くされていることがあります。今回は、そんな赤色の魚で美味しかったものを紹介します。

愛知県や静岡県にいくとけっこうな頻度でおめにかかるのがこのキンメダイです。

なぜ赤色?

魚の体の色はうまく身を隠すのに役立っています。例えば、青魚と呼ばれるサバなどは背中が青く、腹が白くなっています。これは、上空から見下ろした時に海の色と背中の色がまざり、海底から見上げると拡散した日光により白く見える水面と腹の白色がまざるためです。カレイやヒラメのように海底に張り付く魚は背中が海底の砂と同じ色になっています。
一方、赤色は海の色にも海底の砂の色とも異なります。しかし、水分子には赤色や黄色の波長の光を吸収しやすいという特徴があります。そのため、赤色は海の深いところでは見えなくなることから、体の赤い魚は何もしなくても姿を隠せるというわけです。また、この水分子の特徴が活かせるのは深いところですから、体の赤い魚は大体深いところに住んでいます

ユメカサゴ

今年の2月に福井県に調査に行った時に市場で、1カゴ700円くらいで売られていました。名前の通りカサゴの仲間ですが、水深130m以深に生息していることから真っ赤です。関東の方では高級魚らしいのですが、近畿や中国地方の日本海側ではそれなりに水揚げがあります。以前、太平洋のユメカサゴを検査した時には寄生虫が出てこなかったのですが、福井県のユメカサゴからはコガタツカミムシ属単生類が出てきました。今年の2月に地中海に生息しているユメカサゴの仲間から、コガタツカミムシ属単生類の新種が見つかっているので、こいつも同じやつかもしれません。そうなれば、日本新記録です。
とてもリーズナブルだったのですがサイズが小さく調理法に困りました。結局、他の検査した魚と一緒にフライにしました。上品な白身だったので、煮付けや鍋物にすればさらに美味しくなったと思います。

サイズは小さかったですが、肉厚でした。
エラにいた単生類です。期待していなかったのですが、この時の調査で単生類が出てきたのはこれだけでした。
赤い尾鰭が残っているのがユメカサゴです。

ホウボウ・カナガシラ

主にホウボウ科の魚類は100m以深の砂地のところに住んでおり、赤い体と鮮やかな胸鰭が特徴です。また、胸鰭の軟条の一部は発達しており海底を歩くことが可能になっています。底引き網による水揚げやカレイなどの海底にいる魚を釣る時に一緒に漁獲されます。底引き漁でかなりの量が水揚げされるためか、けっこうリーズナブルな魚です。クセのない白身魚でどのように調理しても美味しいです。一度、取り合いになったこともあります。

ホウボウの胸鰭を広げてみました。きれいでしょ?

ちなみに、魚屋さんではホウボウ>>>>カナガシラになっています。確かに、ホウボウの方が旨みが強いような気がするのですが、そこまで違いがあるようには思いません。しかし、人気がないのは事実でカナガシラを入手したのは、今治漁港や宮津の栗田漁港のように水揚げされた魚を直に購入できる場所くらいでした。ホウボウやカナガシラのエラには単生類をはじめとした寄生虫がけっこういます。カナガシラのエラからも単生類が見つかっているのですが、先述したようにあまり人気のないカナガシラの寄生虫は調べられていません。少なくとも日本初記録の寄生虫ではないかと思われます。

最初、ホウボウだと思っていました。
日本初かもしれない単生類です。

おまけ・ゲンゲ

全く赤くありませんが、深海に住んでいるということで紹介します。日本海側の地域で食べられています。美味しいのかと言われたら、美味しいけど調理法に注意と言ったところでしょうか?全身がゼラチン質におおわれており、これを上手いこと除けないと口の中に海が広がります。唐揚げにするか煮込むのが一般的なようです。

鳥取の市場で売られているのをみた時は、本当にこれを食べるのかと思いました。



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