さかなとムシの研究所

在野で魚類に寄生する寄生虫について研究しているチームです。学術的な研究ばかりではなく、…

さかなとムシの研究所

在野で魚類に寄生する寄生虫について研究しているチームです。学術的な研究ばかりではなく、魚類やそれに寄り添って生きる動物について、多くの人に興味や関心を持ってもらうことを目的にしています。 https://twitter.com/Fish_Worms_Lab

マガジン

  • きまぐれ生物図鑑

    日頃の研究中に発見した生物を気の向くままに紹介します。

  • 生物あるある

    寄生虫のことをより知ってもらうために、高校生物について解説します。高校の定期試験対策・大学受験・大人の学び直しなど、たまには人のためになることをしようと思っています。

  • えらのむしマガジン

    自分の研究や巷を賑やかしている寄生虫のあれこれについて説明・紹介しています。身近な生き物である寄生虫を怖がらないでください。

  • 漁港めぐり

    調査で訪れた漁港を魚と一緒に紹介しています。地元のお魚を知って、食べるきっかけにしてくれると嬉しいです。

  • おてがる理科実験

    身近な(家にあるもの)があればできる実験と身近なものの顕微鏡画像の紹介です。小中学生の自由研究の手助けになればと思って書いています。

最近の記事

  • 固定された記事

はじめに〜魚の寄生虫と動物分類〜

私は、兵庫県の私立高校に勤務しながら魚類の寄生虫を研究しています。 この度は、寄生虫研究のアウトリーチと備忘録を兼ねてこのnoteを利用することにしました。 今後の内容は、自分の研究や自分の発見した寄生虫の紹介・調査の風景や調査で発見した動物・寄生虫の小話になると思います。 魚の寄生虫といえば、サバやイカの身の中にいるアニサキスやタイの口の中にいるタイノエを思い浮かべるのではないでしょうか? アニサキスは感染するとひどい腹痛の原因となるので注意が必要ですが、タイノエは人間に

    • 実は新種がいました!カサゴ!

      カサゴの寄生虫を検査する動画を作成しました。カサゴの寄生虫については、noteでの記事と動画で紹介したことがあります。 今回は、エラに寄生しているコガタツカミムシをピックアップして紹介しています。コガタツカミムシは、学名でMicrocotyle(ミクロコチレ)といい、海産魚の魚病の原因として有名です。特に、カサゴやメバル、ソイなどのいわゆる根魚に寄生しているものが知られています。 カサゴにも、Microcotyle sebasitisciが寄生していることが知られていました

      • 久しぶりの川釣り その2

        前回に引き続き、動く寄生虫をお見せするために川で魚をとってきた時の話の続きです。前回は釣りによって採集したカワムツの寄生虫を紹介しましたが、今回は網で採集したドンコの寄生虫のお話です。 ドンコを解剖したのは、動画のためだけではありません。ドンコの腸管には、分布境界がわかっていないGenarchopsis属というグループの吸虫がいます。境界線を探すことを2年ほど前に頑張っていたのですが、ちょっと断念しました。簡単にいうと、西日本と中央日本で種の分布が異なるとされています。しか

        • 糖分とればなんとかなる

          私たちのエネルギー源として一番有名なものにグルコース(ブドウ糖)があります。ブドウ糖は、ご飯やパンなどの炭水化物やお菓子に含まれている砂糖などに含まれています。特に、脳はエネルギー源としてブドウ糖しか使えません。このように、体にとって重要なブドウ糖ですが、たくさん摂取して、血液中にたくさんあればよいというものではありません。そんな血液中の糖分の調節についてお話しします。 肝臓と書けばなんとかなる 血液中のブドウ糖のことを血糖といい、その濃度を血糖濃度(血糖値)といいます。

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        はじめに〜魚の寄生虫と動物分類〜

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        • きになる映画館
          9本

        記事

          久しぶりの川釣り

          魚の寄生虫の検査をYoutubeを利用して紹介するようにしましたが、ちょっと物足りない思いがありました。基本的に、市場で購入した魚を検査しているため、出てくる寄生虫が基本的に動きません。「吸虫をはじめとした内部寄生虫が見られるのが、このチャンネル!」としたいので、なかなかもどかしく思っています。 「生きた寄生虫を見たければ、生きた魚を捕まえればいいじゃない。」ということで、ゴールデンウィークに姫路市の山奥の川に行って魚を採ってきました。 魚を採るだけであれば、海釣りでも良い

          久しぶりの川釣り

          あなたの好きなホルモンは?

          ホルモンと言えば、焼肉やホルモン焼きを思い浮かべるでしょうか。ホルモンのことを、動物の内臓のことだと思っている人も多いと思います。しかし、本来のホルモンの意味は体の中で情報伝達をする物質の事です。神経細胞は細胞内で弱い電流を発生させる事で情報伝達を行いますが、ホルモンは化学物質として情報を体中に伝えます。 ホルモンの使われ方 前回の復習になりますが、体の状態をコントロールしているのは自律神経です。その中心は脳でした。ホルモンも体の状態をコントロールする物質として体中に存在

          あなたの好きなホルモンは?

          見たことのない寄生虫

          先月の下旬に岡山に魚を買いに行った時に、前回のアオハタと一緒にイトヨリを購入しました。日本全国で食べられている白身魚ではありますが、関西では高級魚として好まれています。時期がずれると価値が下がるのか、夏に漁港で直接魚を買うと、二束三文で譲ってくれたりします。そのため、寄生虫の検査は何度かしたことあるのですが、狙いの寄生虫を見つけたことがありませんでした。 今回は特定の寄生虫がいるかどうかではなく、魚についている寄生虫を幅広く紹介するつもりで検査してみました。すると、思った以

          見たことのない寄生虫

          寄生虫がついている顔している

          先月の下旬に岡山に魚を買いに行きました。魚を買いに行ったのはいいものの、兵庫県と岡山県の県境にある地域(相生、赤穂、日生、備前)は、牡蠣が名物だったりします。そのせいで、岡山の地魚を買うことができませんでした(一応買いましたが)。そんな中、衝動買いしたのが、アオハタです。 アオハタはアカハタ属の魚類で、あの高級魚のキジハタのお仲間です。ただ、あまりキジハタほどありがたがられたいないのか、高くもなく、流通もしていません。しかし、ハタ科の魚類には寄生虫がよく寄生しているため、迷

          寄生虫がついている顔している

          体の中の通信手段

          今回からは、「体内での情報伝達と調節」についてお話しします。これの分野では、体の調子を一定に保っておくために、体がどのように連携しているかということです。例えば、気温が上昇すると汗をかく、走ると心拍数が上昇して息が上がる、などです。これらは、体が勝手にやってくれていることですよね?自分で汗をかこうと必死になっても出てきませんが、気温が上がると勝手に流れてきます。これは、体の中のどこかで温度があがったことを感知して、それをもとに体温を下げる手段として汗を出します。これらの一連の

          ダツ目は寄生虫と仲良し!?

          4月の頭に広島県福山で購入した魚を調べた時の様子を動画にまとめました。サヨリに寄生している単生類は、現在研究対象の寄生虫です。また、みんな大好きウオノエも寄生していることがあります。サヨリが属しているダツ目には、よく寄生虫がいます。例えば、サヨリの甲殻類やメダカのサンダイチュウなどでしょうか。そして、世界中に50種、日本だけでも30種いると言われているトビウオには、あるグループに属する単生類が寄生しています。ただ、寄生している種がトビウオの種類によって異なっていることから、宿

          ダツ目は寄生虫と仲良し!?

          遺伝子に関する話を最後に3つして終わります

          ゲノムと染色体 遺伝子とDNAの違いは覚えているでしょうか?DNAは遺伝情報の書かれた紙(物質)で、遺伝子はその内容(ものはない)です。また、DNAはとても細長い糸のようになっています。私は、この説明の時に今は無き?有線のイヤホンの話をします。有線のイヤホンを無造作にカバンの中に入れておくと、線がからまってしまいます。それを防ぐために何かに巻き付けておくのですが、DNAでも同じで、ヒストンというタンパク質にDNAを巻き付けています。ヒストンにまきついたDNAが折り重なってで

          遺伝子に関する話を最後に3つして終わります

          マアジの中にいたアイツ

          今月の頭に広島県福山で購入した魚を調べた時の様子を動画にまとめました。色々期待して購入したマアジでしたが、発見した寄生虫はアニサキスだけでした。今回発見したアニサキスは、生物に興味がある人にとっても想定外のところに潜んでいました。油断して生食したら大変なことになっていたかもしれません。 アニサキスについては、以前に記事にもしましたが、動画でもわかりやすく説明しました。まだ、動画にできていない魚がだいぶあります。期待してチャンネル登録していただけると嬉しいです。

          マアジの中にいたアイツ

          論文が出版されました4

          今回出版された論文は、以前にnoteで紹介したマナガツオという魚のエラに寄生している単生類の再記載論文です。マナガツオは、瀬戸内海に面する地域ではよく食べられますが、関東ではほとんど食べられない魚です。「西にサケなし、東にマナガツオなし」とも言われています。流通する量が少ないことから、たいへん高級な魚になっています。現在手元に寄生虫の標本が大量にあるのですが、マナガツオの単生類を優先して論文にした理由は、値段が理由の1つです。高かった。 再記載の原則 私の記事では「記載」

          論文が出版されました4

          平清盛と寄生虫

          今月の初めに広島県福山市に魚を購入しに行った時の話の続きです。魚だけ見て帰るのはもったいなかったので、音戸の瀬戸公園に行って少しだけ桜をみてきました。今頃は、ツツジが見頃になっているのではないでしょうか?音戸の瀬戸といえば、平清盛です。貴族社会から武家社会へ政治を動かした平清盛ですが、けっこう寄生虫に苦しめられていたようです。今回の調査では偶然にも、平清盛と関連している生き物を見つけることができました。どんな生き物がいたのか、気になる方はご覧になってください。 あと、動画内

          細胞の役割分担

          私たちヒトの体は、約60兆個の細胞でできていると言われています。ちなみに、この60兆個の細胞は、もともと1つの受精卵という細胞が、何回も細胞分裂を行って増えていきます。当然、中に含まれているDNAはすべて同じです。しかし、私たちの体は多様な器官があります。これは細胞の種類が異なっているためで、ヒトの場合約270種類あると言われています。同じDNAを持っている細胞なのになぜ種類が違っているのでしょう? どんな細胞がいるの? そもそも、細胞の種類と言われてもピンとこない方がほ

          片山病の跡地を散策

          今月の初めに広島県福山市に魚を購入しに行ったのですが、その時にあるところに寄ってきました。魚を購入した鞆の浦から10kmほど北上したところに片山という小高い山があります。かつて、この地には「片山病」と呼ばれる地方病が流行していました。 片山病は、水田に入ると湿疹ができ、しだいに体に不調が現れ、腹水がたまるなどしてなくなってしまう不治の病でした。この病気の究明に、地元の医師の藤井好直と吉田龍蔵、京都帝国大学教授の藤浪艦が尽力しました。 この片山病の原因は、日本住血吸虫とよば

          片山病の跡地を散策