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髭が抜けるぞっ!




さび猫のチョコはターちゃんを保護した翌年に我が家にやってきた。
「仔猫が敷地の真ん中でぼーっとしてるよ」と同僚に言われ
見に行くと確かに親にはぐれたのか仔猫が1匹だけ立ち尽くしている。
私がどーしたのと声を掛けると、ニャーッと鳴きながら私の足元へと駆け寄って来た。そっと抱っこすると甘えてくるメスの猫だった。

 



最初は里親さんを探したのだが、その頃はNPO法人との繋がりもなく、うちの仔として迎える事になった。私がミルクを飲ませ育ててないからか、チョコは最初から人間より猫であるオスのターちゃんが大好き。ターちゃんもメスのチョコが可愛くてならない様子で、いつも二匹でまったり過ごしていた。





その後、これまたメスのプチマルも我が家にやってきたが、ターちゃんは心変わりをすることもなく、チョコと過ごすことがほとんどだった。が、しかし、プチマルがチョコをいじめだした時、ターちゃんにはチョコを守るそぶりがない!何という事だろう!可哀想なチョコは、ひっそりとソファの下で暮らすようになるし、小さなメス猫のみー子が家族として加わると、ターちゃんはミー子をしきりと気遣う。そして今ではこれでもかというくらいターっちゃんはみー子にご執心。ラブラブな二匹に人間の私があてられる始末。




心変わりを果たしたターちゃんは、いつもの様にチョコがソファの下から食事に出てきた際に、彼女がターちゃんに親愛の情を込めて彼を舐めようとするのに、ターちゃんは嫌がりシャーーッツと彼女を威嚇する。
何なんだ!一体!
ターちゃんのあほさ加減に思わずバカッツとターちゃんをなじるが、当然、彼には響かない。





さて、今年に入ってターちゃんが1週間ほど入院し、戻ってきた時の事。
彼はいつもの様にみー子に親愛の情を示して近づいて行った。が、ターちゃんが病院の臭いをつけて戻ってきたから、みー子は警戒してシャーツと彼を威嚇して追い払った。寂しそうなターちゃんの後ろ姿。だが、私は溜飲が下がる思いだ。いつだってオスというやつは自分勝手。以前のパートナーであるチョコにしたことを仕返されただけだ。私は一人でほくそ笑む。ふふっ。





そして、この三角関係にはまだ先がある。
近頃、みー子とリア充のターちゃんが余裕なのか、チョコにも親愛の情を示すようになり、私は、そーでしょうよ、それが正解よ!とチョコの気持ちが報われるようで満足していた。






だが、ある時、チョコに親愛の情を示すターちゃんの様子をみー子が真正面からみる位置関係になった。
するとどうだろうか、みー子は眼を丸くして「信じられない」とでもいうように、表情を硬くし、固まったように動かない。
いかにもこれから痴話げんかが始まる寸前といったところ。
あまりのみー子の真剣な眼差しに、私は最初、声を出して笑ってしまう。しかし、声を掛けても全く雰囲気の変わらないみー子。まるで聞こえていないかのようにみー子は、ターちゃんとチョコから目を離さない。






せっかくいい感じでソファから出てくるようになってきたチョコがプチマルに加えて、みー子にまで嫌われたらどうすればいいのだ。私は飼い主としてこの場面をどうにかしなければならない。
もっと大きな声でみー子!と声を掛けてみる。効果が全くない。私がどうすればいいのかと内心焦りだしたと同時に、チョコが痛い視線を感じるのか、するっとソファの下へ潜っていった。
だが、みー子は、そのチョコの後ろ姿までも、ずーと目で追いかけている。

怖い!怖い!人間と同じで様ではないか。
嫉妬という感情が猫にもあるのはわかっているが、あんなにもはっきりとした、みー子のターちゃんへの執着。見てはいけないものを見てしまった気がするではないか。



さりながらである。なんといっても悪いのは優柔不断なオスのターちゃんなのだ。人間でも全く同じ話をよく聞くではないか!

ターちゃん!その内には、猫神様からのバチがあたるからね!
そうだよターちゃん、髭が全部抜けるぞっ!!



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