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『オッペンハイマー』は音で自己矛盾を描く


2024年3月30日(土)朝の6:00になりました。

我は死なり、世界の破壊者なり。

どうも、高倉大希です。




日本では、公開されないのではないか。

そんな噂が出回っていましたが、どうにか2024年3月29日に公開となりました。


クリストファー・ノーラン監督の『オッペンハイマー』の話です。

休暇をとって、公開初日に観に行ってきました。


映画『オッペンハイマー』


タイトルにもなっているオッペンハイマーとは、原子爆弾の開発者の名前です。

「原爆の父」として知られる、アメリカの理論物理学者です。


『オッペンハイマー』は生涯を通して、複雑な感情や思考と向き合った男の話です。彼はこの世界に存在した最も優秀な人間の一人ですから、彼のような知的レベルの人にとっては、この世界の現実に共感するという意味で様々な困難があったと思います。一番見せたかったのは、彼が先を見越していたことです。彼は原子力を世界に解き放つことによって引き起こす多くのネガティブな結果を予測していたのです。

NHK(2024)「映画『オッペンハイマー』で描いた“核の脅威”」より


アメリカ兵の命を救い、戦争を終わらせるきっかけをつくった自分。

中性子の破裂を連鎖されて、世界を破壊しうる兵器をつくった自分。


近くの人から称賛されて、気持ちよくなる自分。

遠くの人から恨まれて、自責の念にかられる自分。


純粋に、物理学を極めたかった自分。

その先の結果を、目の当たりにした自分。


第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた「マンハッタン計画」。これに参加したオッペンハイマーは、優秀な科学者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発を行うこととなった。しかし原爆が広島・長崎に投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。

NHK(2024)「映画『オッペンハイマー』で描いた“核の脅威”」より


オッペンハイマーというひとりの男が抱える矛盾を、見事に描いた作品でした。

映像はもちろんですが、音がとにかく印象的な映画です。


光から遅れてやってくる音。

大衆が足を踏み鳴らす音。


映画『オッペンハイマー』


映像と音との差異が、絶妙な違和を生み出します。

そんな違和を、登場人物どうしの膨大なダイアログが繋ぎます。


オッペンハイマーの人生のような深刻な現実の題材を扱う場合、あまり単刀直入にどう考えるべきかなどと伝えることができないと思います。

NHK(2024)「映画『オッペンハイマー』で描いた“核の脅威”」より


スタンリー・キューブリック監督のことが、よっぽど好きなんだろうな。

クリストファー・ノーラン監督の作品を観るたびに、毎回こう思います。


神はサイコロを振らない。

あらゆるものごとは、必然性の先に生じる。


そんなことはわかっているはずなのに、自己矛盾に苛まれます。

オッペンハイマーという天才もまた、わたしたちと同じ人間でした。







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