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安西先生に学ぶ:創発するチームを作るために

こんにちは。HRBrainのプロダクトデザイナーのあんどうです。
みなさん、バスケットはお好きですか?
「スラムダンクの湘北はスタメンの5人だけでなく、ベンチのメンバーにまでリーダーシップが浸透していて、あの姿が目指すべきモデルだと自分は感じてる」という話をチームにした時に、「あんどうさんは安西先生ということですか?」という質問がメンバーから飛んできて、「いや、自分はプレイングもしてるから、どちらかというと翔陽の藤真の状態だと思う。」という話をして、プロダクトデザインチームとして大いに盛り上がりました。

少し冗談チックに話したことではありましたが、チームのことを比較的よく考えながら仕事をしている身として、安西先生が作中で行ってきたことを「個人と組織の創発」という切り口で考えると色々面白いかもということで、記事を書くことにしました。
自分の経験と紐づけて記事を書いていこうと思いますが、作中でスラムダンクへの言及が多くなるのはご容赦ください。
また組織論や学習論といったところの正しさや、スラムダンクはこういうことを意識して書かれたのである!と言うつもりは全くありません。
なお、スラムダンク未読の方は作中の特定の状況に言及しますので、ネタバレになる可能性があることをご容赦ください。


🔸 創発とは

さきに自分が使った「創発」という言葉について、言葉の定義だけ照らし合わせたいなと思います。
創発とは

A:「要素」間の「局所的な相互作用」が
B:全体に影響を与え、
C:その「全体が個々の要素に影響を与える」ことによって、
D:「新たな秩序」が形成される現象。

Weblio辞書

これを人と組織として当てはめて自分なりに解釈をします。

A:「誰かと誰か同士」の「互いに行いあうこと」が
B:組織に影響を与え、
C:その「組織の状態が個々の人に影響を与える」ことによって、
D:「新たな当たり前」が形成される

山王戦の「花道のリバウンドによる4点プレー」を、創発が起きた代表的な例として取り上げてみたいと思います。

A:花道がオフェンスリバウンドを支配できる可能性を見せたことが
B:山王/湘北に影響を与えて、
C:新たな攻守の状況が形成され、
D:堂本監督は花道を抑えなければいけないと気づき河田兄を花道につけることになります。

組織としての新たな取り組み、新たな業務プロセス、新たな人との関わりといったポイントが様々な創発のチャンスになっているのかなぁという想像が膨らみますが、「ただ新しいことを行う」だけでは創発を促せる確率は低いと思います。
そうした時に必要とされるのが「創発を意図した対話が行える人の存在」、つまり「安西先生」だと解釈してます。

🔸 状況を整理して解釈してみる

安西先生がどういう存在だったのか?ということを改めて理解するために、先ほどの「花道のリバウンド」の場面が起きる前に、安西先生が行ったことをフロー化した上で、場面として起きたことを整理してみます。
それぞれの「行ったこと」と「場面として起きたこと」で重要なものに関して、簡単なタグづけを行っておきます。

🗣️:価値観の問い 🤩:価値観の変化 🔥:価値観の変化に基づく行動変容

🔹 安西先生が行ったこと

  1. 花道を交代させる

    • 花道が交代させられたことに怒りを感じる

  2. 花道の交代に対するリアクションを諌める

    • 花道含め他のベンチメンバーも驚く

  3. 🗣️ ベンチで全員がいる所で、まだ勝てると信じていることに言及する

    • 勝てないと思って交代したのかと思ったと花道が安西先生に質問する

  4. 🗣️ 安西先生が「新たな攻守の状況」を作ることができる場面の現状について、ベンチで花道に問いかけ、想像を促す

  5. 🗣️ 安西先生が「新たな攻守の状況」をベンチで花道に説明した上で、ミクロとしての意味(2点追加のチャンス)からマクロの意味(君が追い上げの切り札である)を繋げて説明する

    • 🤩 花道が「4点の働きってことか!」ということに気づいた

    • 🔥 ベンチで聞いているメンバーが花道に「ボールよ吸いつけ」という念を込めて、手を握り始めた

    • 🔥 花道が「早く交代させろ!」と言う

  6. 花道と木暮を交代させる

場面としてはこうした場面が起きたことではありますが、実際にどんな意味を持つことが起きたのか?を自分の解釈として伝えると

1. 「現状を再解釈し、未来の望ましい状況はまだ作ることができる」という価値観の提示によって、「僕らは負ける」という諦めの信念を問う

2. 「それはどのように行うのか?」という具体的な方法について提示することによって、「まだ可能性がある」という場面を想像できるようにし、諦めの信念を揺らがす

3. 「それを行う存在であるあなたはこんな存在だ」という意味づけをし、また望ましい未来を信じられる状況を作る

これをベンチで行うことによって、ベンチいる全員の「諦めの信念」が問われ、それが逆転に向けての希望の芽になったのかな?と解釈しています。

🔸 「オフェンスリバウンド」という創発のテコ

安西先生がオフェンスリバウンドについて伝える前に、起こっていたことも時系列で簡単に整理してみようと思います。

1. ゾーンプレスで得点差を広げられてしまう
2. ゾーンプレスを突破する方法を伝える
3. ゾーンプレスは突破するものの、ゴール下の河田を赤城が突破できない
4. 流川の攻撃で突破を試みるものの、沢北のディフェンスを突破できない
5. 三井は疲労で動きが鈍っているため、パスを受けられる状況にない
6. 宮城がミドルシュートを試みるも、シュート成功率が低いため差を縮めるだけのパフォーマンスは出せない

このようなことが起きる中で、安西先生はオフェンスリバウンドに着目しました。「得点機会の喪失が直接的に失点機会になっている」ということが「勝つこと」を最も遠ざけている要因ではもちろんありましたが、その役割を何故素人の花道に求めたのか?が気になるポイントなので、妄想してみます。

山王の堂本監督にとって、花道が素人であるということが未知であったことが要因であったのではないかと思います。つまり、「どのような創発が場に発生するか予測がつけられなかったため、対応が遅れ、勝利の可能性をあげられる」と思ったのではないかと思います。
花道の変化によって、どのような戦況の変化が起こるのか?というのを堂本監督が想像しづらいであろうということにある種「賭けた」のではないかなと「勝手に解釈します」。
少し抽象度を上げて解釈すると、「どの点をテコとして動かすと、時間軸/人軸/組織軸それぞれで、どのような変化が生まれるか?」を意識することは大事だなと思います。

🔸 価値観を覆し、信じようと思える対話

取るべき戦術としては「オフェンスリバウンド」を選択したわけですが、そもそも花道がそれを「信じられる状態」を作らないといけないわけです。現に花道は交代を告げられた時に猛烈な反発を示したわけなので。
そういう意味で「なぜオフェンスリバウンドなのか?」「オフェンスリバウンドはどんな意味を持つのか?」「そもそも試合に勝てると思っているのか?」「もう無理だ」
こうしたメンバーの暗黙的な信仰を「覆せる!」と思えるような対話が必要になります。この時に花道を後ろに連れて行って1on1的に伝えるのではなく、ベンチメンバーも聞こえる中で伝えたことは、全員が信じられるような状況をつくるためには重要なことだったと思います。
自分の想いとしては、このリバウンドのシーンにおける安西先生の最も重要な行動はこの「価値観への問いと信じようと思える対話」だと思います。HOWを伝えるだけでも、HOWとWHYを伝えるだけでもいけない。その人が「信じようと思える」信念に訴えかけられるような対話ができるということが大事なのだと思います。
そして、創発が起きていくための前提の部分にはなりますが、テコになりうる課題に対して抱いている価値観を捉え直し、行動変容を起こして、周囲のパフォーマンスも変えていく。
そうしたことが起きる前提には対話があるんじゃないかなと思います。

🔸 スラダンはいいから、具体的な実践内容を教えてくれ

ここまでスラムダンクの話をしてきましたが、ここから簡単に自分がプロダクトデザインメンバーと一緒に実践してきたことをお伝えします。
実際に組織としての創発が発生するかどうかはまだまだこれからの話ではありますが、創発を起こしていくための前提となる「対話的な関係性」を構築する部分において、自分が意識した前提とそこに対する取り組みをあげていくことで、どなたかの参考になれば幸いです。

🔹 意識した前提

  1. 対話の仕掛け人が、対話の中での「問い」を発見できるスキルを持っているか

  2. 価値観を問いかけるような対話が出来る、関係性が作れているか

  3. 価値観を問いかけるような対話が、なされる状況をどう作るか

  4. 組織として未来に目線を向けた対話が、定期的にに行われる状況をどう作るか

🔹 具体の取り組み

  1. ひとりひとりとの1on1の場で、価値観の探索を行う

    • 対話相手から「こういう話もっとしたいです」というフィードバックが来るかどうかを検証

    • 価値観の探索を行うための対話スキル再確認と棚卸し

  2. 定例の特定のトピックスにて、前提を問い直す問いを投げかけてチームとしての対話がなされる状況を作り、その結果を観察する

    • 話が膨らんで、メンバー全員がもっと話したそうな感覚があったのであれば、こうした組織として向き合うべきことについて対話をする状況を作りたいと思うので、これから定例に組み込みますとして、定常的に対話が行われる状況を作る

  3. 半期、ひいては2~3年を見据えた時に我々がどうあるか?という対話を期の始めに行いますというのを数ヶ月前からアナウンスし続けながら、定例でのトピックスベースの対話を重ねる

  4. 組織としての未来の対話を組織組成の歴史を踏まえてスタートする

結び

かなりこじつけをして書いた感覚もありますが、これを読んでくれた誰かに対して「問い」を投げかけられていて、その人が更に他の人の創発を促すようなことを考えてくれるようなことが行われたら幸いです。
HRBrainのプロデザメンバーどうでしょう?こんな記事でよかったですか?

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