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ドルトムントの今季ここまでを考える

今回はドルトムントの話です。
あまり需要はないかもですが、吐き出したいので書きます。

前半戦は何が起きていたか

まずは前半戦の話を少し。前半戦は苦労の連続だった。が、正直なところ予想は出来たことだった。フロントは予想してなかっただろうが。

よく「テルジッチには戦術がない」と言われている。これに関しては、戦術が全くないと断言はしないけど、まぁでも限りなく薄っぺらいものしか用意していないんだろうなというのは見てて伝わってくる。

まずは非保持の局面から。
非保持時、テルジッチは前からプレスを掛けることを好む。
しかし具体的なプランはあまり用意していない。「とにかくアグレッシブに前から行こうぜ」という、いわばノリというか精神論に近いものだ。

だから、まず守備の基準点が曖昧。
誰が、どこからプレスを掛けるのか、相手のどこにボールを誘導して、どこで奪うのか。

今季のドルトムントの試合を見ていて(全公式戦を試合フルタイムで見たわけではないが)この辺が徹底されていた試合は一度も見たことがない。

だから試合によっては前へ出ていきすぎたり、あるいは前線が何の目的もなくただ突っ立っているような守備をしてしまう。
これは誰が出ても同じような問題が起きているので、つまり人の問題ではなく仕組みの問題なのは明らか。

プレスを掛けたとしても狙いのない闇雲なプレスなので簡単に剥がされるし、剥がされたら背後には広大なスペースが広がっている。
そこに対するリスク管理は全くできていない。
というか、初めから背後に広がるスペースに対するリスク管理なんてチーム設計に組み込まれていないようにすら思う。

DFラインの背後や、DFとMFの間に広がるスペースを突かれてのピンチは毎試合何度も何度も見るが一切修正する様子はないので、テルジッチとしてはおそらく「そこを使われるまでに、前で奪いきりたい」ということなんだろう。

しかし、繰り返すが前で奪うための仕組み作りも全く出来ていないので、前で奪おうとして奪えずひっくり返されて疑似カウンターを浴びる・・・というのがお決まりのパターンだ。

続いて保持の局面。
保持の局面では、まずは前で奪ってショートカウンターで決めきりたいというのがあるんだろうが、前述したように非保持時のプレスの仕組みが曖昧なので、ショートカウンターを発揮する機会にはなかなか恵まれない。

一方で、テルジッチは最終ラインからのビルドアップにも挑戦し続けているが、これはビルドアップと表現するにはあまりにもお粗末なもので、ただ「後ろから繋いでいる」だけ。

ビルドアップの形は何パターンかあるようで、エムレ・ジャンらアンカーが最終ラインに落ちて2枚のCBと共に3バックを形成するパターン、左SBのベンセバイニが最終ラインに残って3バックを形成するパターン、そして4バックのまま両SBが高い位置を取るパターンなどが見られた。

しかしビルドアップにおいて、陣形はほとんど重要ではない。
問題は、どこに、どうやってボールを届けるか。様々な陣形は、その目的を達成させるための一つの手段に過ぎない。

その「どこに、どうやってボールを運ぶか」が見えてこないし、そのための準備もしていないのが、ビルドアップが壊滅的な原因。

まずビルドアップを設計する際に極めて重要な「出口」が用意されていない。瞬間的にブラントやロイスが気を利かせて降りてきて出口になるしかない。
誰がどういう状況でどこに立つのかも曖昧。
だからみんなボールを受けてから出しどころを探す。
よってテンポは上がらないし、相手の目線も揺さぶれない。
当然、ブロックを動かすことも出来ない。

レバークーゼンのようにビルドアップがしっかりと作り込まれているチームは、どこに誰が立っているかもある程度決まっているので、ダイレクトプレーが盛んに行われる。こういうチームとドルトムントとを見比べると、その違いに愕然としてしまう。

ともあれ、仕組みが整備されていない以上、ビルドアップからボールを繋ぐためには個人のアイデアで何とかするしかない。

今季なら、ブラントやロイスが個人のアイデアで状況を打開するテクニカルなパスやドリブルを繰り出すか、気の利いたポジショニングでボールを引き出すしかない。

昨季なら、更にゲレイロやベリンガムといった、個で状況を打開できる選手がいた。苦しい状況で相手を背負ってボールを受けても、そこから独力で1枚も2枚も剥がしてボールを前進させることが出来た選手たちだ。

しかし今季はゲレイロもベリンガムもいない。

代役のベンセバイニやザビッツァーは、決して悪い選手ではない。しかし、(コンディションが整わないこともあるが)ゲレイロやベリンガムと違って、個で1枚も2枚も剥がせるようなタイプではない。

おそらくだが、テルジッチにとってビルドアップとは「立ち位置で優位性を作り、再現性高く目的地までボールを送り届けるためのもの」ではなく、「後ろから繋いで、あとは個人個人が頑張って相手を剥がして攻めていくもの」なんだろう。

となれば、いつまで経っても立ち位置やボールの循環ルートを整備しない理由も説明がつく。
テルジッチからすれば「相手を独力で剥がせないのは困る」くらいにしか思っていないのではないかと。

そして、上手く敵陣までボールを運べたら、とにかく人数を掛けて攻め込んでいく。おそらくだが、敵陣でプレーすることでボールを失った際のカウンタープレスを効果的に発動させたいんだろう。

しかしここにも問題があって、ポジションを崩してただ闇雲に敵陣へ人数を掛けているだけなので、失った瞬間のカウンタープレスはほとんど機能しない。失った時にも適切なポジショニングというのは全く考慮されていないからだ。

となると、また背後に広がる広大なスペースを使われてカウンターを浴びる。この繰り返しだ。

前半戦のドルトムントの戦い方には論理的に組み立てられた要素が少なく、かなり精神論で「積極的に前から行こうぜ」というノリで戦っているチームなので、そりゃ苦労するわなという感じだった。

CLでは相手がドルトムントの名前をリスペクトしてくれたのか、前からプレスを掛けられることはさほど多くはなかった。
加えて、相手がボールを持てるので、ドルトムントとしては構えて守る機会が増え、つまり「前へ出て裏返される」機会はすごく少なかった。

だから一定の結果を残せたのかと。

ズーレやフンメルス、シュロッターベックらはスピード勝負になると脆いが、構えて守ると堅い。

後半戦の変化

後半戦、まだ数試合しか戦っていないが、結果が上向いているので「何が変わったのか」を考えていきたい。

答えは至ってシンプルで、選手が入れ替わって出来ることが増えた、というところに尽きる。

具体的に言うと、マートセンとサンチョが加わったことで特に左サイドでボールを保持している局面において、出来ることが増えた。

要は、テルジッチのようなタイプの監督に与えるべきは「ボールを持った時に何かを起こせる選手」だ。

何かを起こせる選手が何かを起こして、攻めていくしかない。
マートセンとベンセバイニを比べたとき、ボールを持った状態で何かを起こせるのはマートセンだ。サンチョだってボールを持てば何だってできる。

で、マートセンの加入でまずマートセンにボールが収まるようになる。
更にマートセンが内側に絞ることで相手のマークをぼかすことができる。
すると大外で待つサンチョやバイノーギッテンスがより良い状態でボールを持てるし、仕掛けられる。
サイドで起点を作れるようになれば相手はサイドを警戒するし、そうなれば真ん中も使いやすくなる。
前線の高い位置でボールが持てるようになれば、好調を維持するフュルクルクに当てるなどして、攻め込むことが出来る。

こういったところか。
それ以上の変化は、正直なところ感じられない。

そしてビルドアップ時の立ち位置はハッキリと決めるようになったとも思う。


後半戦ボール保持時の立ち位置


具体的に言うと、ジャンが最終ラインに落ちてCBと共に3バックを形成する回数は大きく増えた。ということはおそらくチームの決め事なんだろう。
右サイドはSB、左サイドは左WGが幅を取り、その内側をロイス・ブラント・マートセン・ザビッツァーらが動き回りボールを引き出す。

この辺はおそらくだがシャヒンの加入によるところが大きい。攻撃面を整備しているのはシャヒンだそうだ。

あと今季まだなんとかなっているのはフュルクルクの好調が大きい。彼にボールを当てさえすれば何かが起きる。

なので、シャヒンはとりあえずはフュルクルクまでボールが渡るように最低限の整備をした、といった感じなのかもしれない。

ただ依然として、3バック化した際にズーレ(フンメルス)とシュロッターベックが低い位置で開きすぎて詰まってしまう、アンカーを務めるジャンのポジショニングが怪しいなどの課題も多い。

あとは立ち位置は明確になったけど、どこにどうやってボールを運んで、どういう状況を作りたいかは、依然としてあまり見えてこない。
ここの改善は、今季は難しいかもしれない。

整備が行き届いていないので、ヴォルフスブルク戦の後半開始直後からが特に顕著だったが、前からプレスを掛けられると全く運べなくなる。最低限、立ち位置を明確にしただけだから、そこに対して人が当たってくると運べなくなる。その程度のものでしかない。

守備についてはベンダーの担当のようで、まだ前半戦に比べたら行くところ・行かないところの区別くらいは出来るようになったかなという印象だが、こちらは前半戦が(というよりテルジッチが)あまりにも酷すぎて、最低限の補修を行ったに過ぎないので正直どう評価すべきか分からない。もう少し試合を見てみたい。

まとめると後半戦で変わったのは
・マートセンとサンチョの加入で出来ることが増えた
・ビルドアップ時の立ち位置はある程度は明確になった

この二つ。
ただ応急処置に過ぎないので、抜本的な改善はシーズンオフまで待つほかないだろう。

そもそもの話、攻撃と守備を切り離して別々のコーチが見るなんて現代サッカーにおいて有り得ないことだと思うんだけど・・・それはとりあえず置いておく。

まとめ

監督の手腕に期待できない以上、選手の頑張りに賭けるしかない。
昨季のように、選手個々が状態を上げて巻き返していきたいところ。

幸い、選手たちもコンディションは良さそうだし、冬の移籍市場でサンチョとマートセンを加えることができたのも非常に大きい。

後半戦は好調なスタートを切ったが、下位チーム相手がほとんどだったので、この結果を額面通りに受け取ることは出来ない。
上位陣との対決やCLが始まるここからが勝負だろう。

ロイスは無事に監督と和解したようだが、前半戦の体たらくではそりゃ選手に不満が積もるのも当然。

フロントが(というよりヴァッケが)なぜここまでテルジッチに固執するのか正直よく分からない。

もし監督を退いても、SDとしてチームに残る(その際は現任のケールは退任だとか)というのだから、ますます理解に苦しむ。
結果を残せない上に次の職まで保証されている監督にいったい誰がついていくというのだろうか・・・。

不満ばかり言っても仕方ないので、冬に加入したマートセン・サンチョはもちろん、シャヒンとベンダーにも期待しながら、なんとか乗り切っていくしかない。
レヴァークーゼンの強さを見ていると優勝は難しいだろう。
だからせめてCL圏だけは何としても確保したい。
CL圏を確保して、次の監督へバトンを渡すのが現時点で現実的に考えられる最善の結果だろう。

それにしてもマートセンほどの選手が試合に出れないなんてプレミアはホントに魔境なんだなと…。


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