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セレッソ大阪 開幕戦を振り返る

セレサポの皆さん、開幕戦お疲れ様でした。

我々の日常が戻ってきてテンション高めなので、いきなり開幕戦を振り返りたいと思います。

セレサポnote・ブログ勢としてはかなり遅いマッチレビュー投稿で、どうしても内容が他の方々と被ってしまいます。
出来る限り被らないことを書いたつもりですが、全く同じ試合を見て書いてるので多少の内容ダブりは大目に見てください…決して盗作はしていません。


キャンプを見た感想

今だから書くことだが、キャンプの練習を何度か見て、あるいは見た人の話を聞いて、あとはTMも見たりしたところ、正直なところあまり良いイメージは持てなかった。

練習してる感じがどうも良くない…やりたいことが出来ている様子はあまりなく、苦戦している様子が見てとれたからだ。

詳しく書くことは避けるが、主力組と控え組に分かれて実戦形式のトレーニングをしていても、主力組の狙いを控え組が掻い潜る場面を何度も見た。

別にオフシーズンの状態が悪いからといって必要以上に悲観する必要はないけど、でももう少し時間が掛かりそうだなという予想だった。

おそらく昨季終盤の閉塞感を打破すべく、色々試しているんだろうな、と。

それを踏まえての開幕戦だったので、僕がTMや練習を見てから開幕戦までの数週間、もしかしたら数日間かもしれないが、相当状態を上げてきたなという印象で試合を見ていた。

セレッソの狙い

最初に「あっ」と思ったのは開始40秒。ジンヒョンがゴールキックを大きく蹴る選択をしたことだ。入念にビルドアップの準備をしている様子があったので、正直これは意外だった。

これがチームとして今はこうするという方針なのか、それともFC東京という相手だからなのかは分からないので、今後も見守っていきたい。

ただ闇雲に前線へ蹴るわけではなく、時にはしっかりと狙いを持っての繋ぎ見れたのでその辺を少し。

セレッソの狙いはFC東京のボランチの背後だったように思う。(というよりも、どこが相手だろうとボランチを動かすのはものすごく大事なことだ)

セレッソはビルドアップ時、登里が田中駿汰の隣でボランチのように振る舞っていた。いわゆる偽サイドバックと呼ばれるもの。

別に偽サイドバックそれ自体はやってもやらなくてもいいんだけど、この日のセレッソはしっかりと狙いをもってこの布陣を敷いていた。

セレッソの狙いは相手のボランチ、松木と原川を動かすこと。そして彼らが動いて空いたスペースに、香川もしくは奥埜のIHが入っていき、ここへボールを送り届けること。この試合では奥埜が相手をひきつける動きをして、香川へスペースを与えることが多かった。おそらく香川・奥埜の組み合わせだと、今後もこうなることが多いだろう。

前半6分、セレッソは図のような形でビルドアップを図り、東京としてはそれを阻止すべく前から制限を掛けてくる。

前半6分の場面
見逃せないのはエンリケを引っ張る奥埜
矢印はボールの動き

このとき一瞬、内側に絞る登里を誰が見るのか?が曖昧になって、登里が空く。本来、左SBの登里を見るべきは右WGの仲川なんだけど、あそこまで極端に内側へ絞られると仲川もついて行っていいのか?となる。それに仲川が絞れば、舩木からカピシャーバへのパスコースも出来てしまいそれも困る。
それを見た松木が、登里にボールが入る直前に、前を向かれては困るってことで一気に前へ出てきた。

寄せられた登里は冷静に鳥海へ下げる。このバックパスを合図に、ディエゴオリベイラが鳥海へ、俵積田が毎熊へ、原川が田中駿汰へ出て行く。

そうして松木と原川を動かしたセレッソは、そこへ香川真司が侵入。毎熊から見事なパスでフリーとなった香川真司へ通すことに成功した。
残念ながら真司からカピシャーバへのパスがズレてしまい攻撃は終わったが、一発でそれが狙いだと分かる見事な攻撃だった。

前半15分にも似たような場面。
今度はセレッソのボールカットから松木が前へ出てきたところに真司が入って、毎熊からのパスが通り、最後はレオセアラがネットを揺らすもその直前に奥埜がオフサイド。またしてもゴールとはならなかったが、見事な崩しだった。高い位置で受けたIH香川に、トップのレオセアラとIHの奥埜が絡む、良い形。

レオで相手CBを、両WGで相手SBを、
奥埜で相手ボランチを引き連れる+
登里と田中でもう片方のボランチを引きつけられれば
真司がフリーになる場面は増えるかも?

いずれにしてもセレッソの狙いはボランチを動かすことで、前半はそれがまずまず出来ていた。

偽SBを用いるもう一つの狙いとして、IHをより高い位置でプレーさせること。ボランチの背後でIHがボールを受けることで、IHとレオセアラの距離が近くなるというメリットもある。悪いときのセレッソはレオセアラが孤立しがちだ。セレッソとしては、レオセアラを活かすために、いかに彼の近くで起点を作るかがポイントになってくる。

これも今だから言うことだが、キャンプでもレオセアラとIHの関係性を作る形は繰り返し練習していた。意識づけとして、IHはより前線の近くでプレーするということが落とし込まれてきたと思う。
あとは如何にそこへボールを届けられるか。これが田中駿汰・登里の役割になってくるんだろう。

ちなみに昨季、レオセアラの周辺で最も起点を作ってくれていたのは加藤陸次樹だと思っている。彼の退団後、レオの近くで起点が作れなくなり孤立してしまい、それが回り回って最終的にはチーム全体の得点力不足という形になって表面化した。

(あとは欲を言えば舩木とカピの距離を縮めてカピの足元へボールが入る形も用意したいが、これは他の方が詳しく書いておられたので割愛。)

ファイナルサードへと攻め込むと、右サイドではルーカス・毎熊の関係性からポケットへの侵入を試みる。左サイドはカピの単騎突破で、登里は後方でのサポート役兼ネガトラ管理要員。

右サイドのポケットを狙う動きは先制点の場面で実を結んだし、後半もたくさんのチャンスを作った。

FC東京を昨季から数試合だけだが見た感想としては、悪いときの彼らは前から追っても裏返される、裏返されたときのリスク管理がイマイチだからボランチの背中を使われがち、守備に関してはちょっと甘い部分もあるなかなと。
CBが引っ張り出された後のカバーリングも甘い場面がある。
この日のFC東京はもしかしたら状態が良くない日だったんじゃないかと思う。

だからこそ、何とかして追加点を決めて突き放して、試合を終わらせたかったところだ。

セットプレーに関して

セレッソにとって久々にセットプレーからの得点ってことで、記憶が正しければ昨年7月のサガン鳥栖戦でショートコーナーからジョルディのクロスをレオセアラが合わせて以来?
合っているか分からないので、もし分かる方がいたら教えてほしい。

クラブとしてもセットプレーからの得点の少なさは課題と認識しているようだが、この日に関して言えば色々なことを試していたように思う。

まず一本目のCKはショートコーナーを選択。
二本目はニアすらしの形。いずれも上手く行かなかったが、色々準備してきた様子は伺えた。

得点シーンのCKは、ニアを一つ超えたところに落として田中駿汰が飛び込む形。これも狙いがあったし、蹴る側と入る側の意思疎通もできていたように思う。

昨季はあまり上手く行かなかったセットプレーだが、一昨季含めて狙いは分かる部分もたくさんあった。でもそれがなかなか成就しないという難しい状況だったように思う。決して闇雲に放り込んでいたわけではない。

開幕戦はCKだけでも数パターン見せてくれたので、また色んなパターンを作って試合で披露してほしい。
セレッソのように純粋な高さに劣るチームはバリエーション増やして相手を惑わすのが一番だと思うので。

守備、そして失点の場面

セレッソの守備は、一昨季からは綺麗なラインというよりも、前線へのプレスはより人に対して当たるし、撤退してからは人海戦術的にとにかく一人一人が相手に対して体を張っていくような守備になっている。だからこそセレッソにとってプレー強度は生命線。

どちらかというと、この守備の方が怖さがある。
ラインが揃わないまま人に当たるので、スペースを与える場面も多々あった。ただ決してゾーンにすべきだと言いたいわけではない。ゾーンにはゾーンの、マンツーにはマンツーのメリットとデメリットがある。要はその使い分けと、適切な整理が必要だということ。

昨季と同様、前から捕まえる際は
442気味の布陣へ
(矢印はセレッソの選手の動き)

前線からのプレスは昨季からの継続だが、レオとIHの片方が前に出て圧を掛け、後ろのアンカーともう片方のIHはスライドし4-4-2気味の形に。(もちろん相手が3バックならセレッソの形も変わる)
このスライドが少しでも遅れたりズレたりして、この図で言うところの真司の背後を使われる場合。こういった状況が作られるとマズイ。
この試合でも何回かあったが、そこを潰していたのが田中駿汰。彼の加入は本当に大きい。

基本的には、前で奪うことを狙いつつも、蹴らせて回収がメイン。この試合はよく機能していたと思う。蹴らせた後、不慣れなポジションながらディエゴ・オリベイラにも負けずに闘った舩木の活躍を見逃すことは出来ない。

あと構えたときの守備だが、誰がどこを守るのかというやり方ではなく、一人一人がとにかく目の前の相手に対して出る、というやり方なのかなと。
なので誰かが少しでも遅れるとそこからピンチを招く。1失点目の場面、押し下げられた後カピシャーバがほんの少し、松木へ当たるのが遅れてしまいシュートを打たれた。
ラインや正しい立ち位置で守るというよりは、あくまでも一人一人が体を張るとか、しっかり帰陣するとか、そういったことが優先されているように見えるので、となれば一人一人が遅れないこと・半歩でも詰めることを徹底したいところ。

あとは2失点目の場面についても書いていきたい。
この場面では毎熊は自分の責任だと言っていたが、個人的にはそんなことはないと思っている。もちろん、目の前の相手にドリブルでぶち抜かれたのは事実だし、そういう意味では毎熊が止めていれば・・・という話になるんだろうけど。

そもそもFC東京はサイドから攻めてクロスでゴールを狙うチーム。しかしこの試合に関してはサイドの優位性ではセレッソが上回っており、FC東京は全くサイドから良い形を作れず、攻撃と言えば後方からディエゴ・オリベイラへのロングボールに終始していた。

で、これじゃ困るってことで、ウイングを2枚替え。インパクトを残せずにいた俵積田・仲川に替えて右に安齋・左にジャジャ・シルバを投入してきた。正直、この時点では僕もジャジャ・シルバがそこまで縦にゴリゴリ来るイメージはなかった。どちらかというとテクニカルで、縦にも中にも行けるタイプなのかなと。

後半30分、2失点目を喫した場面。
毎熊とジャジャ・シルバが一対一に。

あの場面、ルーカスは内側に陣取るバングーナガンデ佳史扶が気になり、内側を閉じる。(一瞬、後ろを振り返ってバングーナガンデを見る素振りがあった)
となるとサイドは一対一。

そして見逃せないのがジャジャ・シルバの受け方。ボールを持つエンリケ・トレヴィサンに対して、ほんの少し立ち位置を下げて足元にボールを受けにくる。その動きで毎熊を引っ張り出して、一瞬のスキをついて縦突破。
先ほど少し書いた「CBとウイングの距離感」はこうやって使うんだなというお手本のような場面だった。

もちろん、ここで毎熊が止めていればよかったというのはその通りだし、セレッソはこういう「一対一を勝つ」前提でチームを組み立てているところはある。完全にマンツーではないものの、マンツー色の強いゾーンとでも言うべきか。

カバーに入った鳥海のスライディングもわずか届かず突破を許してしまったが、鳥海のカバーが若干遅れたのは、鳥海の目の前にバングーナガンデが立っておりそちらを見る必要があったから。バングーナガンデ一人の立ち位置でルーカスと鳥海の意識をひきつけ、ジャジャシルバと毎熊の一対一を意図的に作り出していたとも言える。

毎熊が突破されたことを受けて鳥海は自らのポジションを放棄してスライディング、舩木・登里もそれに合わせて右サイドへスライドした結果、クロスに対してファーサイドで人数が足りておらずフリーで荒木に合わせられた。

たしかに局面を切り取れば、毎熊が抜かれた、鳥海のカバーが遅れた、ジャジャ・シルバの突破が凄かった、というのは紛れもない事実だけど、僕はどちらかというとあの場面は論理的に立ち位置で崩されたと思っているし、FC東京が(強引にではあるが)意図的に作り出した状況に見事やられてしまったという感想。

それも、あの試合でFC東京が意図的に状況を作り出して決定機まで繋げたのは本当にあの一回だけと言っても過言ではないと思っているので、余計に悔しい。

で、個人的には1点目も2点目も、アプローチが遅れた人・一対一で抜かれてしまった人・カバーが遅れた人はたしかに存在するんだけど、彼ら一人の責任ではなくて、もう少しグループでどう守るかってところが成熟していけばいいんじゃないかなと思っている。
どういう状況のときに、誰がどこを守るのか。そこの整理は、まだまだこれからと感じる。

そうじゃなくて、あくまでも一人一人が体を張る・球際で戦う・一対一を止めるというところを軸に据えて戦うのであれば、個々の力を磨くしかない。一対一を止めるとか、あと半歩寄せるとか、もう半歩早くカバーに入るとか。

次の一点を取るために

というわけで同点に追いつかれたので、セレッソとしては攻勢に出る。真司・奥埜を下げて柴山・ブエノを投入。

時間帯的にも仕方ないが、この2人の投入以降は論理的に攻めるというよりは、相手にスペースを与えてでもより攻撃的に前へ前へということで、オープンかつ長いボールが増えて、お互いにワンチャン何か起きるかも?という展開へとシフトしていったように思う。
要は試合が変わったし、理屈で動く範囲を超えてきた。

これは仕方ないというか、現状チームとして打てる手はこれだということなのかと。それでチャンスは作れていたので、そこさえ決めていれば…ということになる。

最後、上門のアンカー起用はあくまでスクランブルだと思うのであまり気にしていない。

惜しい場面はいくつもあったが決めきれず、逆に相手には少ないチャンスをモノにされる形でのドロー。
とても悔しい、まさに「勝てた試合だったのに」という結果に終わった。

最後に

勝てた試合だったのに…と言ってしまったが、この部分を少し掘り下げる。

たしかに、この開幕戦の90分だけを切り取って考えたとき、試合内容を見ればセレッソの試合でチャンスもたくさんあったし、一方でFC東京に枠内シュート数本で2点取られての引き分けというところで、「勝つべき試合だった」というのは間違っちゃいないと思う。
選手個々のインテンシティーもセレッソが上だったし、組織としてもFC東京のやりたいことをセレッソが上回る場面はたくさんあった。

ただ反面、冒頭に書いたようにキャンプはじめオフシーズンのセレッソの状態はあまり良くなかったと思っている。

そして言うまでもなく昨季終盤戦にチームを覆った重苦しい閉塞感。

それらを思えば、そこからよくぞここまで持ち直したなと。
開幕戦からは、昨季終盤のような閉塞感は感じなかった。
だから個人的には、この勝ち点1に対してそこまで悲観的にはなっていない。むしろポジティブに捉えている。ここまで持って来られたことが、本当に良かった。

もちろん、過度な楽観もできない。
キャンプで不安定な感じだったのが開幕戦では良かったってことで、まだまだ安定したレベルにあるとは思えない。特に守備面での不安はまだ拭えない。次の鹿島戦もどうなるかは分からない。

でも開幕戦から「優勝に向けて、勝てた試合を落としているようではダメだ」という見方は、もちろん優勝するためには必要なんだけど、そこまで後ろ向きになることもないのかなと。

あと気になるのは、この戦い方のどこまでが不変で、どこまからが相手によって変えるのかというところ。ここは一試合だけじゃ判断がつかない。

個人的な予想としては、守備に関してはある程度はどこが相手でもこのやり方になっていくのかなとは思う。立ち位置やラインで守るというよりは、肝心なのは人に当たる・一人一人が体を張っていくことだというスタイル。
一方で攻撃に関しては柔軟に変更を加える可能性もあるのではないかと思っている。この試合で効果的だった偽SBも、次もやるのかどうかは現時点では何とも言えない。

まとめると、プレシーズンの事を思えばかなり仕上がったと思うし、「勝てた試合だったのに」と悲観する必要はないが、一方で未知な部分もまだたくさんあるので次回以降どうなるか分からない・・・といったところか。

奥歯に物が挟まったような言い方で申し訳ないです。

要は開幕戦だけじゃ何も分からないってことです。

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