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【関西人がゆく】 #4 京都・丸太町 「十二段家」

 地元民にはお馴染み。
 十二段家。お食事処である。

「平氏にあらずんば、人にあらず」
 by平家一門。

 京都市営地下鉄烏丸線、丸太町駅から徒歩数分、その店は聳え立つ。

 *  *  *

 平安末期、権勢を誇った平家は、その上から目線ゆえからか、最期には幼い安徳帝を抱いて、壇ノ浦の藻屑と消えた。
 驕れるものは久しからず。
 後世の人々は、彼らを儚んで平家物語を編んだ。いまだに涙なしには読めない名作である。

 今の京都人が、平家のように驕り高ぶっているということではない。そんな人は京都人に限らず、どこにでもいる。
 ただ、単細胞な大阪人(すんません)に比べ、格段に取り扱いに注意を要する。

 いわゆる「平家問題」である。
 現代の京都人は、平家のDNAでも受け継いでいるのであろうか?
 彼らは、謎の上から目線で、私ににじり寄ってくる。

「あんたはん、ええお召しもの着てはるなあ。私、知ってますえ。それ舶来物でっしゃろ。高かったんちゃいますの? ようお似合いになって。ええおすなあ」

 量販店で手に入れた2,900円のコートを着る私に、ここがポイントなのだが、周りに聞こえよがしに、その京都人は真顔でのたまう。

 言われた私は、「安物やけど、俺の着こなしがコートに命の息吹を吹き込んでるんやなあ。メイドイン中国のタグが舶来物の証や。ひょっとして俺、いけてる?」
 などとすっかり得意になる。

 ここでしゃしゃり出てくるのが、通訳者。
「なに気持ち良くなってんの? あれはね、「お前、そんな安物着てよく外を出歩けるな。まあ、あんたみたいな庶民にはお似合いやけどな」って意味だから」

 嘘やん!?
 俺、京都人に真顔で、しかも公衆の面前でディスられてんの?
 なんという謎の上から目線、これが平家問題か……。
 恐るべし、京都人。

 もちろんすべての京都人がこうではない。

 さて、十二段家。
 武家屋敷かよ、とツッコミたくなるような仰々しい店構え。
 十二段家、というただならぬ響き。
 一瞬、往年の演歌歌手、段田男(だんだだん)が耳にこだまする。
 田舎者には、とっても敷居が高いのだ。
 この入り口の向こうでは、十二人の京都人による言葉責め、どすえどすえの仕打ちが待っていて、注文すらままならず、店から引き摺り出され、御池の本能寺を尻目に、三条河原まで引っ立てられた挙句、首を刎ねられるのでは!?

 私は、店名も、その佇まいも、謎の上から目線な「平家問題」を喉元に突きつけられ、そして叫ぶ。

 助けて! 光秀公!

 軒先で、もじもじする田舎者(奈良出身)の私……。

 *  *  *

 料理は、お茶漬けが有名なのだが、京野菜を使ったメニューはどれも上品で美味しい。
 店員さんもとても丁寧で親切である。
 京都御所を見学した後、ランチに最適。人気店のため予約したほうが吉。
 あなたの京の旅に、花を添えてくれることは間違い無い、みやこ人自慢の名店。


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