若者の昇進欲のなさは責任を負わされたくないから、なのか?

 実は私も全くと言っていいほど出世欲がない。ずっと平社員のままでいいし、給料は少しづつ上がってそれなりなところで頭打ちになってくれれば、もうそれ以上は何も望まない。それより定時に帰って、ゆっくり家でゲームして小説読んで寝ていたい。

 まて、お前は若者なのか? そう訊きたくなるだろう。そうだ私も若者である。20代の半ばを過ぎそうな年齢の若輩者であり、つまり題名の話題の当事者なのだ。その私から少しばかり意見したいというのが今回のnoteである。

 さて、なぜ最近の若者は出世に拒否反応を示すのだろう。よく聞く定説というか、彼らの主張はこうだ。

「昭和のころは出世したら責任と一緒に給与も増えて、さぞやりがいがあっただろう。だが今は賃金は上がらず責任だけが肥大化した。出世なんかしてられるか!」

 月並なセリフだ。だがごもっともだ。私も正直同意見。であるのだが、やっすい給料でも責任をもって仕事をし、ぐんぐん昇進していく人間がいないわけでもないだろう。そうすると、若者は甲斐性なしになったということだろうか? 私もそうなのか? いや、違う、きっと違うはずだ!

 というわけで言い訳をさせてもらう。

 すこし、責任を取ってもいい仕事について考えてみよう。責任を取ってもいい、昇進して重責が課せられてもいいと思える仕事とは何だろう。高給? プライベートの時間が確保できる? それともやりがいがあって楽しい? どれも理由になりえるし、それ一つだけ選ぶ義理もない。全部求めたいものだ。つまるところ好条件な仕事なら責任を取ってもいい。

 だが私はそこに本質はないと思っている。私の思う、重い責任を課せられてもいい仕事はこうだ。

 それは「愛せる仕事」だ。

 一つ愛について語らせてもらう。なんか恥ずかしいが、ここが大事なので頑張って語っていく。

 まず愛とは何だろうか。古代ギリシャでは8つに分類されており、情欲的な愛のエロスとか、深い友愛のフィリアとか、無償の愛のアガペーとか、まあ聞いたことくらいあるだろう。私は聞いたことしかなくてよく知らない。申し訳ない。

 あとフロイトも愛についてよく語っている。彼は愛というより性だが、まあ語っていたはずだ。これも聞きかじりの話しか知らないので全然深いことは言えない。

 重要なのは、どれも愛は分析できるものであり、分類できるものだと捉えていたことだ。要は、愛は何らかの形を持っていると古来から考えられてきており、それはあらゆる物事に形を変えて向けられるものなのだ。現代でも、このことを疑うものは稀だろう。ここが重要なのだ。私が言いたいのは、仕事に対する愛もあるのではないか、ということである。

 仕事に対する愛がどんな形をしているだとか、その具体的な内容はなんだとかは、どうせ誰かが語っているので書籍なりなんなりに任せることにする。とにかく考えてほしいのは、どんな条件の仕事でも、それを愛していれば関係なく責任を負えるのではないかということだ。

 つまりなんだ、若者は仕事に対して愛情を抱いていないのか? と言われれば、そうだと答えざるを得ないだろう。就活は年々早期化するし、新人への風当たりはきついし、給与は安いし、SNSは仕事への愚痴であふれている。

 Xの仕事への恨みつらみなんかは、夫のことが嫌いな妻の口ぶりそっくりではないだろうか。愛情なんかなさそうである。そんな仕事、いくら給与が高くても、定時に帰れても、なんか好きになれないし責任も正直取りたくない。

 だがここで、私はもう一つ意見を申し上げたい。それは「愛する技術」を知らないからではないだろうか、ということだ。

 エーリッヒフロムの「愛するということ」なんかを引用出来たらよかったのだが、読んでいないので断念する。しかし本の趣旨だけは理解しているつもりだ。 

 愛するとはテクニックなのだ。どのようにすれば愛を膨らませ、それを維持できるのか。それは勝手に湧き上がるものではなく、技術を磨き経験しなければ発揮できないものなのだ。そんな難しいものを、私たちは仕事に抱けるだろうか。

 もしかしたら、仕事に愛情を抱けるほど心が育っていないのかもしれない。幼い子供に、さらに幼い弟ができたとき、親が自分に向けていた愛情が弟に向かい、寂しさと苛立ちを募らせ、自分に懐いてきた弟を邪険に扱ってしまうように。私たちは、いや私は、仕事に愛情を向けられるほど精神的に成熟していないのかもしれない。

 ……では結論に入ろう。若者の昇進欲のなさは何が原因なのだろうか。それは昇進に見合う見返りがなく、責任だけが重くのしかかるのを嫌うからだ。しかし私はこう考える。本質は、仕事に愛を抱けないからだ。

 これが私の言いたかったことである。いつしか私も仕事に愛情を抱ける日が来るのだろうか。未だわが子に向ける愛情すら知らないのに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?