投資をするときに知っておきたい心理学
経験豊富な人でも、相場が荒れた時には冷静な判断ができずに失敗してしまうことが往々にある。投資においては、いろいろな分析方法ともに心理学が重要である。ここでは投資において知っておいた方がいい心理学をまとめた。
プロスペクト理論
「Prospect:プロスペクト」は「見込」、「期待」、「予想」の意味。不確実な状況下における意思決定モデルのひとつ
「利益」から得られる満足感より、
「損失」から得られる苦痛の方が、
大きい。(損失回避性)
目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスク回避を優先し、目の前に損失があると、損失そのものを回避しようとする傾向がある
人間は、利益よりも損失の方に敏感に反応し、利益が出ている場合は、損失回避的な利益確定に走りやすい。損失が出ている場合は、それを取り戻そうとしてより大きなリスクを取る判断を行いやすい。
株価下落時に、株価が上昇する根拠もないのに、損失が確定することへの不安から、その株を塩漬けにしたり、ほんの少し株価が上がっただけで、株価下落による利益の目減りを回避するために、利益確定売りをしてしまう。
このように株価下落時に、より強く損失回避的な行動を取る。
ヒューリスティック
問題を解決する時間が極力最低限で済むように、経験則や先入観によって効率良く答えを導き出す思考法
論理的に分析して出した答えではなく、直感で導き出した答えなので、必ずしも正しいとは限らない。答えの精度が保証されない代わりに、答えに至るまでの時間が短い
答えに一定の偏り(バイアス)を含んでいることが多い。なお、この手法の使用によって生まれている認識上の偏りを、「認知バイアス」と呼ぶ。
ヒューリスティックの例
利用可能性ヒューリスティック
記憶や印象に残る事例を重視して判断
代表性ヒューリスティック
特定の経験や規則性を重視して判断
固着性ヒューリスティック(アンカリング)
最初に与えられた情報を重視して判断
認知バイアス
「Bias:バイアス」とは「先入観」、「偏見」、「偏向」の意味で「認知バイアス」とは「思考の偏り」である。
物事の判断が、直感や経験の基づく先入観によって、非合理的になる心理現象。
利用可能性ヒューリスティック
意思決定を行う際、思い出しやすい、検索のしやすい、想像のしやすい身近な事例に基づいてしまう傾向がある。
何かが容易に思い出されるなら、それは重要でなければならない。思い出される事例は、容易に思い出されない事例よりも重要でなければならないと認識される傾向にある。
そのため、利用可能性ヒューリスティックの下では、人々はより最近の情報に判断の重きを置く傾向がある。新しい意見は、最新のニュースに基づいた偏ったものになりがちになる。
代表的ヒューリスティック
意思決定を行う際、代表的・典型的であると思われる事項の確率を過大評価しやすい傾向がある。「ありがちだと思われること」が、実際に起こる確率より大きく評価してしまう。
この意思決定の結果、陥ってしまう判断ミスを「連言錯誤」と呼ぶ。「連言錯誤」とは、一般的な状況よりも、特殊な状況の方が、発生確率が高いと誤判断する。
固着性ヒューリスティック(アンカリング効果)
「Anchor:アンカー」は「錨(いかり)」という意味。
アンカリング効果とは、最初に見た数字に無意識に引きずられて、その後の意思決定が左右されてしまう現象。意思決定の際に、自分が知っている物事や数字にこだわってしまう傾向がある。
株式投資で、過去の高値を意識し過ぎるあまり、さらに値上がり期待する「高値覚え」や、さらに値下がりをしてしまうと考える「安値覚え」などがある。
フォン・レストルフ効果
人の記憶には、好みとは関係なく、印象深いものや目立つものが記憶に残りやすい。似たようなものや、同じパターンで並んだものが多くあった場合、その中に、ひとつだけ種類や特徴が異なるものがあると無意識に印象に残りやすくなる。
株式投資は、新規のIPO銘柄や最近大きな値動きを見せている銘柄など、大きな話題となった銘柄が記憶に残りやすい。そうした記憶が、銘柄の正しい選択判断影響をおよぼす可能性がある。
リーセンシーバイアス
「Recency:リーセンシー」とは「新しさ」、「最新性」という意味。「Bias:バイアス」とは「先入観」、「偏見」、「偏向」という意味。
最後に与えられた情報や直前に与えられた情報が印象に残り、評価に影響を及ぼす現象。より直近の新しい記憶の方が短期記憶に残りやすく、再生率が良い状態である。
群衆心理
群集の中で生まれる特殊な心理状態。多くは判断力や推理力が低下し感受性や興奮性が高まり、無批判や無責任な言動に誘発されて、付和雷同しやすい群集に特有な心理。群集心理はけっして固定的な心理や意識ではなく、不安定で変化しやすい。
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