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定時交信のお作法

#10年前の南極越冬記  2009/8/29

ちょうど10年前になる。当時、僕は越冬隊員として南極にいて、こんなことを書いていた。

◇◇◇

今週は2パーティが野外オペに出ているので、基地には普段の2/3の人数しか残って居ない。今回は僕も珍しく基地でお留守番。人数が少なくて寂しいので、シェフの発案でみんなで一つの大テーブルを囲んでの食事になった。おまけにMWF以来のコース料理!みんなでワインで乾杯なんかもして、楽しい晩餐会になった。「留守番もいいなあ!」なんて思ったけど、僕は来月のほとんどを基地の外で過ごす事になっているので、ちょっと複雑な気分だ。

前回のブログにも少し書いたが、野外に出ると毎日決まった時間に必ず定時交信を行う決まりになっている。そのために旅行隊は必ずUHF無線機、VHF無線機、HF無線機、イリジウム電話を携帯する。もしも定時交信が成立しなければ、昭和基地は何かあったと判断して直ちにレスキュー体制をスタンバイさせる。

通信隊員が交信をミスると横から「オマエそんな交信でホントに旅行隊の命を預かっている自覚があるのか!」と普段は優しい(?)先輩隊員から容赦なく罵声が飛ぶ。それくらいにみな真剣で、定時交信は重要なのだ。遠くに離れた場所に居る旅行隊との交信は、電波状況によってはいつ切れるか分らない。そのため交信の内容も明確に優先順位が決まっている。その中で一番重要なのが『人員・車両の異常の有無と現在位置』で、最低限これさえ問題ないと分れば定時交信は一応の成立となる。

ただし「これで定時交信を終了とします」の交信の後はフリータイム。情報に飢えている旅行隊に、基地での出来事や国内の雑多なニュースなどを伝えたり、お互いにくだらない話をしたりして、時間と電波が許す限り、遠く離れた場所に居る仲間との交流を楽しむ。

・・・・・・でも今回のディナーの件は旅行隊には内緒にしておいた。

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