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なにごとのおわしますかは知らねども

むかしむかしあるところに一人の若者がおりました。若者は少しお金に困っていました。
そこで神社にお参りして金運アップを願いました。神社にお参りしたことで、いいことありそうな予感とともに、気持ちが安らぎました。

その日、家に帰る途中で銀行口座からおカネを引き出そうとしました。お金に困っているといっても、生活してゆく程度のおカネはあります。
ところがです、預金の残高がガッツリ減っている。何ごとかと確かめてみると役所が口座を差し押さえていたのです。

実は若者は住民税を滞納していました。
払おうと思えば払える額でしたが、払うとフトコロが寒くなる。
はじめのうちは役所に連絡して分割納付にしてもらったりしていました。しかしそのうち連絡もおろそかになっていました。
口座を差し押さえる通知が来ても放置していました。すぐに差し押さえられることもなく数ヶ月すぎ、忘れはじめていたときに差し押さえられました。

神さまに金運アップを祈願した日に差し押さえられるなんて、神も仏もありゃしないと若者は考えました。

それからしばらくしてのことです。
金銭的にも精神的にもショックから回復しつつあるときに若者はふと気付きました。

チマチマ払っているよりも、全部払ったほうが長期的にはオトクであると。
延滞金や遅延利息といった余計な支出はしなくて済むし、何より払うものを払ってしまうと気持ちがサッパリする。
そうか、神さまは願いを聞いてくれたんだ。
そこで若者はあわてるように神社へお礼参りをしに行ったとさ。
めでたし、めでたし。

こんばんわ、唐崎夜雨です。
神さまはおそらくいると思ってます。願いも聞いてはくれる。ただ人間の目先の利益には応じてくれない可能性はある。
上記のむかし語でお参りした神社は八幡さまです。八幡さまは、国家鎮護しようという御託宣があり宇佐から都に近い石清水に移られた神さまですから、見ている規模が違う。
人間の平民と国家鎮護の神とでは向いている方向が同じでも高さが違うとでもいいましょうか。
そういえば、八幡さまのお使いはハトでした。地上を歩いているだけでは見えない景色を見ていらっしゃるのでしょう。

これが商売繁盛をウリにする俗っぽい神様だったらまた違うかもしれない。

こんな感じに体験的にいると思うだけで、ホントのところは知らない。

おっと、体験談ではなく、むかし話でした。

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