見出し画像

 萬年筆くらぶの会報誌『fuente』88号が完成した。1994年に創刊号を発行して今年で30年となる。30年もの間、『fuente』は基本的なものは何も変化することなく発行されてきた。
 初めの頃はホームコピー機で印刷して手作業で製本していた。ところが大量にコピーすると機械が熱を持ち、紙がクシャクシャになるなどのトラブルが発生するようになり、印刷のみ外注することになった。その後何年も、印刷は外注、製本は私の手作業で製作を続けた。
 ところが、数年前から手作業で製本することが難しくなってきた。私も歳をとった。本のセンター(綴じるライン)がよく見えない。ステープラーの針で綴じる際に力が足りない。何度も失敗するようになり、『fuente』が傷だらけになってしまうようになった。『fuente』の製本は手間と時間も掛かる。ここらが潮時と、81号から製本も外注することになった。
 「手作り100%感の『fuente』がいいんですよね」という声も多かったので製本を外注することへの迷いはあったが、「変化は歴史です」という、銀座の鉛筆専門店「「五十音」店主の宇井野さんの言葉に励まされた。

 『fuente』は白黒印刷で、華やかな冊子ではない。発行部数は多くない。年に3冊のペースなのでスピード感はない。ネット社会で生きる人達にとっては時代遅れの象徴のようなものかもしれない。たとえそうであっても、『fuente』はいまのスタイルで続けることになるだろう。

 変わらないことの魅力。それを大切にしながら発行を続ける。しかし、時には変化する。
 『fuente』も生きているのだ。

(23.4.26)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?