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作者の愛と努力の結晶✨至福の回文絵本と回文カルタ✨

回文あれこれ

なぜこれほど回文にグッとくるのだろう。

上から読んでも下から読んでも同じ文章になるという、
ただそれだけのことなのに。

回文という漢字からして、このシンメトリックな魅力。

トマトや八百屋といった3文字言葉や、新聞紙(しんぶんし)などの身近な回文も可愛らしいが、
長い回文を暗記して口ずさむのも、これまた良き快感で、人それぞれ、自分のお気に入り回文があるかと思う。

わたしの場合、まず思い出すのは、高校時代に学校で流行った、

お菓子が好き好きスガシカオ
(おかしがすきすきすがしかお)

この回文が妙に好きで、今もふと意味なく口にする。

また、『三丁目の夕日 夕焼けの詩』という漫画を読んでいて、良い初夢を見るために3回唱える和歌の回文があると知った時もときめいた。

なかきよの
とおのねふりの
みなめさめ
なみのりふねの
おとのよきかな

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『三丁目の夕日 夕焼けの詩』(小学館)
51巻140ページから引用

回文仕立ての和歌は「回文歌」と呼ばれているらしく、昔からいかに日本人が回文を楽しんでいたかを感じられてしみじみする。

そして、回文は世界中の言語に存在するらしい。

わたしが嗜むスペイン語でも、回文を扱うサイトは山ほど存在しており、人気ぶりが窺える。

最近見つけたお気に入りは、

Yo hago yoga hoy.  
訳:わたしは今日ヨガをする。

シンプルながら見事な回文だ。

ちなみにスペイン語で回文はpalíndromeパリンドロメという。パリンドロメ、これまた可愛らしい響きで好ましい…

そして、どうやら地球の東西南北を問わず今も昔も人の心を魅了する回文は、やはり子ども心も掴むらしく、回文絵本なるものもけっこうたくさん出版されている。

その中でも特に敬愛して止まない大好きな一冊がこちら。

『さかさことばでうんどうかい』 
西村敏雄(福音館書店)

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愛らしくもどこかとぼけた味のある動物たちが織りなす運動会の絵本なのだが、物語の始まりから裏表紙まで、全てが回文で展開し、しかも、その回文一つ一つが、絵の味と相まって、凄まじいパンチ力を放っている。

運動会の演目はこちら↓

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物語はこのプログラム通りに進行して、様々な動物が登場する。

例えば、パンくいきょうそうにはゾウが出場するのだが、
では、ここで問題です。
「ゾウがパンをどんな風に食べたのか、三行の回文で説明しなさい。」

私の頭では、いくら考えても全く出てこない。
こうやって、自分で一瞬でも考えてみると、
この絵本がいかにすごい偉業かが実感できる。

絵本はどのページにも素晴らしい絵と回文が溢れているが、
特にわたしが好きなのは、途中の「昼休み」が描かれた見開きページ。
ブルドックや、ねこさんの、短くも滋味深い回文が…

あぁ、ここで言ってしまいたい。

しかし、ここで書いてしまっては、
この一冊のために七年以上の年月をかけた作者の方を冒涜してしまう。

語りたいけど語れないジレンマ。
そう、これこそが、この絵本が素晴らしいが故に孕む、
ネタバラシができな読者の苦しみなのだ。
口頭で人にお勧めしたい時なんぞ、
相手を目の前にして回文を言わずにおく苦痛たるや。

ちなみに、この絵本を一体これまで何冊買って贈ったことか。
手元にある自分用もすぐに人にあげてしまうので、
今のものが、もはや何冊目なのか不明なほどである。

なるほど、ネタばらしができない分、
絵本を配って、
語り合う仲間を増やしたい、
そういう衝動に駆られる一冊なのだ。

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👆裏表紙のカメくんたちにも素敵な回文が添えられている。
絵本を閉じた後の最後の最後まで作者の美学を感じる、
とんでもなくグッとくる一文である。


さらにもう一つ、わたしには手放せない回文商品がある。それがこちら。

『かたるかかるたか』回文カルタ

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こちらは、山梨県北杜市小渕沢の森の中に佇む素敵な玩具屋「イカロス」さんで見つけて即買いしたカルタ。

作者は北杜市高根町在住の佐藤明子さん、佐藤柚香さんのお二人。

「イカロス」さんは、玩具屋という言葉では括りきれない豊富な品揃えのお店で、木工玩具やボードゲーム、カードゲーム、珍しい形のクレヨンだとか、オルゴール、時計、グッとくる小物類や地元の作家さんのグッとくる作品が所狭しとひしめいて、一歩店内に足を踏み込むと、その品々にツボをグッとグッと押されすぎて、毎回過呼吸を起こしそうなほど興奮してしまうお店だ。

中でもわたしは、杉山亮さんという素敵なおじさまが作っていらっしゃる「おはなし迷路」が大好きで、それを買い求めるために、一時帰国する時はできるだけ寄るようにしている。むむ、この「おはなし迷路」の素晴らしさについても伝えたい…

が今回は回文のお話。

この回文カルタに出会ったのも「おはなし迷路」目当てに訪れた時だった。絵柄に惹かれて手に取って、しばらく箱を眺めていると、気前のいい御店主が中身を全部出して見せてくれた。瞬間に一目惚れ。消しゴムハンコ的な、素朴ながらもグッとツボにくるユーモラスな絵柄はもちろんのこと、これまで出会ったあらゆる回文を凌駕する笑いのクオリティに腹筋破壊力。カルタをめくりながらその場で泣き笑って、膝をついて崩壊した。

カルタというと、遊ぶ機会が少なそうな感じがするかもしれないが、とんでもない。自分にとって、最も好ましい、シンプルかつ笑える"みぢんこ的"回文が、絶妙な絵札とともに45個も詰まっている小箱は、書籍以上に回文を楽しみやすい。わたしは、机の上に置いて、日めくりのように毎日堪能し続けている。

しかし、やはりこれも回文。作者の方の知らぬところで中身を紹介するのはやはり失礼かと思っていたところ、イカロスのオンラインショップで数枚のサンプル画像を発見👀✨

というわけで、この販売サイトから2枚ほど拝借。

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たまらない。たまらなく素敵だ。

しかも、この中には、わたしのベスト5は入っていない!

ということは、これだけでもグッとくる回文の奥にはさらに…

魔物である。

まさに回文の秘境である。

ちなみに今気づいたが、わたしはこのカルタでまだカルタ遊びをしたことがない。気になる方、気に入った方といつか、できる日が待ち遠しい。



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