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【フェムテックの社会学的探究シリーズ】Vol.1 フェムテックに関する政策の流れ

初めまして、Femtech Community Japanリサーチ担当の城口と申します。
現在東京大学院でフェムテックについて研究しています。本記事ではフェムテックの対象である女性の健康や身体に関する政策や政府機関の動きについての全体像をまとめてみました。


女性の健康に関する取り組みが具体化

女性の社会進出というワードはみなさま馴染みがあると思いますが、そのために女性の身体、健康が重要であるという認識が大きく動き始めたのは実は2021年頃です。 遡ると2018年の男女共同参画白書(内閣府)で初めて「女性の身体」が課題として明確に位置付けされました。 「フェムテック」というキーワードが登場したのは2020年10月に野田聖子議員を筆頭とした自民党「フェムテック振興議員連盟」発足後で、議連からの働きかけもあり2021年から各政府機関で対応が進んだと言われています。

注目すべき点は2021年以降、フェムテックが「女性の活躍」の中に織り込まれているだけでなく、女性の健康に関する取り組みがより具体性を増していることです。

2024年度、国立女性健康センターの開設

「女性の健康」に特化した国立高度研究センターとして、更年期、不妊、ホルモンバランスの崩れに伴う不調など、女性の不調に対して支援を行ったり相談を受けられるようにするようです。このように女性特有の研究を深めることは女性の健康ギャップを埋めるために重要な第一歩として2024年1月に発表されたマッキンゼーとWEFのレポートでも行動計画(Action Plans)として定言されています。

プレゼンティズム・アブセンティズム

2022年に内閣官房「人的資本可視化指針」および経済産業省による通称「人材版伊藤レポート2.0」が発表され、2023年3月期より上場企業を対象に人的資本経営情報の開示義務が定められました。女性管理職比率や男女賃金格差の開示に加えて生産性の指標としてプレゼンティズム、アブセンティズム(心身の不調による生産性の低下や欠勤など)が含まれています。これによって月経痛や不妊治療、更年期等による体調不良や通院での生産性の低下にも取り組み、改善しようとする企業が増えています。

更年期の注目度アップ!

2022年に厚生労働省によって初めて更年期に関する調査が行われました!(更年期症状・障害に関する意識調査)。管理職世代の中心である女性の更年期症状・障害による就労への影響は測りきれていません。更年期対策は企業にとっても女性にとっても重要な課題の一つとして社会の理解が進むこと、そして更年期に関するフェムテック(通称メノテック)への投資や市場が拡大することを期待しています。

2024年以降女性の健康のデータ化のニーズはますます広がり、フェムテックサービスの活用が求められるようになるでしょう。

2023年の「女性特有の健康課題」についての取り組みの詳細はこちらの記事をご参照ください😊



年表を作成しましたので、合わせてご覧ください。
(今回は各政策についての詳細は割愛します。)

「女性の活躍と健康」年表(2013年〜2023年)

参考文献を元に筆者にて作成、追記

参考文献

川崎 唯史 (2023). フェムテックと「女性の健康」 : 誰のための研究開発か  現代思想 51(6) 31-39  https://cir.nii.ac.jp/crid/1520296818738430080

渡部 麻衣子 (2023). 政策的関心の対象としての「フェムテック」とその倫理的課題  現代思想 51(6) 22-30  https://cir.nii.ac.jp/crid/1520296818738792320

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