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本屋で紙の本を買う意味

友達に勧められて今年の4月に購入したKindleが、思いのほか使い勝手が良くて読書がはかどるし、持ち運びも楽だし、自分時間のお供になっている。約半年間で大体30冊位の本を購入したが、そのほとんどはKindleである。
先日久々に本屋で本を買ったのだが、その際に本屋で紙の本を買う意味を改めて考えた。

私が訪れた本屋は最寄りから2駅先にある駅に接続している本屋さんだった。先日最寄り駅から本屋が撤退してしまい、商店街に移ったはいいものの、外出時の立ち寄りであるとか、ついでの買い物、仕事帰りに本屋に立ち寄りにくくなってしまい困っていた。本屋さんにとっては大変迷惑な話かもしれないが、本を買わないのに本屋をブラブラしていることが多かった。雑誌コーナーで最近のトレンドや季節の移り変わりを確認していたし、新刊を見ながらあーこんな本が最近は注目されてるんだなぁだとか、流行のキーワードはこれかなどと考えていたので、本屋さんが身近になくなった時は情報源を失う危機感を感じた。
2駅先の本屋さんはたまに立ち寄る事はあったが、それほどじっくり見た事はなかった。ワンフロア全てが本屋さんでかなり広い。欲しい本を探しているうちに別の本に目が止まった。新書のコーナーの新刊だったので、おそらくKindleにもあるはずだ。Kindleで本を買うと言うのは、自分にとっていつも通りの行動であり、ちょっと本屋さんに悪いなぁと思うこともこれまであったが、利便性や自分の物の管理の考え方などを優先して、ためらいなく、Kindleで買っていた。

ただその日はなぜか、その本屋さんで本を買いたいと思った。本を探している間店の中をかなりウロウロしたのだが、店の空いてるスペースに貼ってあったチラシが頭から離れなかったのだ。
「この本屋さんの好きなところ」と題されたチラシにはユーザからの声が書いてあった。
「品揃えが多くて欲しい本が見つかるところ」
「新刊の紹介が丁寧なところ」
「店員さんがいつも笑顔で親切に案内してくれること」

私は常連ではないが、そのチラシに書いてあることに共感した。広いから品揃えが良いと言うのはもちろんあるが、単純に本の数が多いのではなく、探しやすいように工夫されているレイアウトだなと思ったし、新刊がきれいに並べてあるだけではなく、紹介文を書いてあったり、また未発売の新刊のポスターもきれいに並べてあった。
(この店はきっとたくさんの人から愛されているに違いない)
そう思った。

そして同時に私の最寄り駅の本屋さんが商店街に移転してしまったように、本屋の売れ行きによってこの本屋の立地が変わっていってしまうかもしれないと言う危機感を持った。商品が売れなければ、当然利益は上がらない。しかし駅に近い利便性の高い立地にお店を構えるとなると、賃料が結構かかるはずだ。もしかしたら最寄り駅の本屋さんにもそういった事情があったのかもしれない(結構儲かっているように見えたけれど)。

昔どこかでこんなことを聞いた。

本屋に入って若者がたくさんいる国は、これから発展していく国だ。

それを聞いたせいか、私の中では、本屋さんという空間が、その国の文化、治安、そして発展に強く関連していると思っている。なにも日本と言う大きな単位で見なくても、私の住んでいる街が文化度の高い街になってほしいと願っている。だからこそ、本屋さんが駅から離れた事は結構私にとって衝撃だったのだ。

せめて2駅先のこの地域の本屋さんは今後も存続し続けてほしい。そしてユーザからも愛されるべき素敵な本屋さんなのだとチラシからわかったので、Kindleで買わないでその本屋さんで買い物がしたいと思った。

私はマーケティングには全くと言っていいほど知見がないが、近年何を買うかではなく、誰から買うかがより重視されているように思う。特に趣味のスキー用品は高価なものもあるが、顔なじみの店から買いたいと言う人が多い。ネットで同じ商品を探せばもっと安価に売っているお店を見つかるだろうし、もしかしたらポイントもいっぱい付くかもしれないにもかかわらず、この人から買いたい!と、わざわざお店にない商品を取り寄せたり、休日に時間をを使ってその店に行ったりする人も多い。

私はきっとこの先もKindleで本を買うだろう。そしてKindleで買わなかった本が読みたくなったときに、Kindleのアプリ本棚に無いことにむっとするかもしれない。そんな時に(あの雰囲気の良い本屋で本を買ったなぁ)と思い返せる思い出があるのも面白いなと思った。
私がKindleではなく、本屋で本を買う理由は、本の中身だけではなく、素敵な本屋さんを記憶に残したいからだ。

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