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沖縄のネーネーに会いに。(後編)

noteにも、誰かを応援したい気持ちや想いをお金というエネルギーで表現する「サポート」機能がありますが、皆さんは人からお金をもらったら、どんな気持ちになりますか?

−「やったぁ! ラッキー!」
−「ありがとうございます!!」
−「いいんですか???」

わたしが初めて人からお金をタダでもらったのは、沖縄で働いていたときのこと。

当時通っていた教習所の掃除のお姉さん(ネーネー)から「沖縄をもっと楽しんで欲しいサァ」と言って 二万円もらったのが初めてでした。

前回の話▼の続きになります


ありがたく受け取ることがやっと出来るようになってきた今の わたしですが、当時は、他人から施しを受けるほど貧乏だと思われていたことに驚き、自分にとって不自然なこの状況をどう受け止めたら良いのか わからなくて、素直に喜ぶことができませんでした。

そして月日は経ち、ネーネーから受け取った2万円を思い出したのは、離婚やら家族の問題でボロボロになっていた時のこと。

お金のため、と割り切ったはずなのに割り切れず。

色々なことが限界に達していた当時のわたしは、疲労し切った頭で当時のことを思い返していました。

「沖縄をもっと楽しんで欲しい」

そう言って、わたしに2万円くれたネーネー。

本当に、それだけの理由で2万円なんて大金を他人に渡すだろうか?

そこで、わたしは初めてハッとしました。

Mちゃんが名古屋へ出稼ぎに行く際に必要だった交通費、4万円。

消費者金融からMちゃんが お金を借りることを阻止するため、4万円立て替えたこと。

もしかして、ネーネーはそのことをMちゃんから聞いて、知っていたのではないだろうか?
だから、4万円の半分を わたしに渡したんじゃないのか?

四万円のちょうど半分。二万円という額に、全ての辻褄が合った気がしました。

でも、Mちゃんに渡した4万円なら、もうとっくとのとうに、わたしの所へ戻ってきています。

だったら、この二万円は、ネーネーに返す必要がある。

初めてそのことに気づいた わたしは、流れた月日を数えて、いてもたってもいられなくなりました。

急いで携帯の連絡先からネーネーを探したのですが、機種やら何やらを変えていたため、登録されていません。

今も同じ場所で働いているのだろうか。
そのことを聞くため教習所に電話しようとしたのですが、恥ずかしいことに、わたしはネーネーのフルネームさえも知らなかったことに気づきました。

なんてこった!!


あれから、本当にいろんなことがありました。

沖縄の生活は苦い思い出ばかりだったけれど、思い返すと、いいことも沢山たくさん。

わたしが沖縄から帰ってきて他界した祖父も、沖縄で戦争を経験した人間でした。

そんな祖父がいなかったら、わたしも生まれていなかったわけで、沖縄に感謝することをカウントしたら、数え切れないほど一杯あったんです。

当時は、沖縄の素晴らしい所も行ったし、美味しいものも食べたと思っていたけれど、ネーネーが言った通り。

わたしは、本当の意味で沖縄を味わっても、感じてもいなかったことに気付きました。


もう一度、もう一回沖縄に、ネーネーに会いに行かなくちゃ。

金髪に近い茶髪のセミロング。
ピンクのエプロンと、健康サンダル。
豪快に笑う、ネーネーの顔。


当時通っていた教習所に電話して、覚えていることをすべて説明すると、ネーネーがまだ働いていることが確認できました。

電話を切ったわたしは、沖縄行きのチケットとホテルをすぐ予約。

出発は、一週間後に決まりました。

その間、もらった現金をそのまま返すのは失礼だろうか。何かプレゼントに替えて渡した方がいいのか悩んだのですが、現金だからこそ意味があると思い直しました。

変わらない景色。
変わった景色。


色んな思い出と共に、ネーネーが出勤している あの場所へ。


金髪にとてもとても近い茶髪のセミロング。
ピンクのエプロンと、健康サンダル。
豪快に笑う、ネーネーの顔。

久しぶりに会ったネーネーは、当時のまま。
ただ呼吸しているだけなのに、大量の蒸気とエネルギーを発し、そこに立っていました。

ネーネーとの再会に号泣するわたしでしたが、状況が掴めず戸惑うネーネー。

あの時くれた、二万円。
どうして、私になんかにくれたの?

まずは理由をちゃんと聞こうと思いました。

Mちゃんに渡したお金の半分であるならば、ちゃんとMちゃんからお金は返ってきたよ。

だから、ネーネーにお金を返しに来たんだよ。

理由はわからないのですが、涙が止まらず。
泣きながら説明する わたしに「そんなことあったかね? 覚えてないさー」と とぼけるネーネー。

そして言った言葉は、数年前と変わりませんでした。


「ハーナーにただ、沖縄を楽しんで欲しかっただけさー」


どうしても お金を受け取らないネーネー。
でも、今度はわたしが引き下がるわけにはいきません。

お金のために犠牲にしてきたことがあるからこそ、このお金は、どうしてもネーネーに渡したい。

「じゃぁ、この二万円はもらうね」

そう言って、わたしは二万円をありがたく受け取ると、一旦財布に入れてから、もう一度二万円を取り出してネーネーに言いました。


「わたしの気持ちです。受け取ってくれる?」


わたしがそう言うと、ネーネーは困ったような、嬉しそうな顔で、やっとお金を受け取ってくれました。


渡す喜びと、受け取る喜び。


苦労したり、悩んだり。
恨まれることも、あるかもしれないけれど、自分次第で感謝や喜び、気持ちを表現できる お金というツール。

どう扱うか、捉えるかで、全く違う世界が広がるのであれば、できる限り、感謝や喜びで満たされたお金を受け取り、それをまた誰かに渡して生きて生きたい。

ずっと願ってきたことが果たせた。

そう思いました。

でも、冷静に社会を見渡したとき、ほとんどの物やサービスは、誰かの役に立ちたいだとか、誰かを喜ばせたいから生まれてきたんじゃ、ないのだろうか?


そう考えたら、わたしが自ら、お金の奴隷になっていた。
ただ、それだけのことだったのかも、しれないな……。


ありったけの感謝、そして想いを込めてネーネーと抱擁を交わし、歩き出した先には、沖縄の海がどこまでも広がっていました。






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