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クリスマスの思い出オムニバス【後編】

前編の続きです。

③クリスマスプレゼントの姉妹格差は愛情格差?

これも就学前の記憶だが、私達姉妹は当時大人気だったリカちゃんハウスをクリスマスに買ってもらった年があった。

リカちゃんハウスを買うということは既にリカちゃん人形を持っていたわけだが、私のリカちゃんは姉に傷めつけられたお下がり。
服は既に無く丸裸、目の付近にはペンで青いアイシャドウが施され、栗色の巻き髪はバッサリ切られザンバラ頭だった。
そんなリカちゃんでも無いよりはマシで、誕生日にリカちゃんの服だけを買ってもらった記憶がある。

クリスマスが近づき、私達姉妹はリカちゃんハウスを求めて隣町にあるおもちゃ屋へ連れて行かれた。
その町にはおもちゃ屋が隣同士で2軒あったのだ。

姉はクリスマス商戦のチラシで既にお目当てのハウスを決めており、希望通りのものを即買い。
私はあれにしようかこれにしようかと2軒を行ったり来たり。
自分用の新品のおもちゃを買ってもらうことなど滅多にないから、なかなか決めきれなかったのだろう。

しかしその楽しい迷いのひとときは実は無駄だった。
母は、私には安いものしか買わないと決めていたのだ。
母が私に買っていいと言ったのは、家具が壁に印刷されているだけのリカちゃんハウス。
ハウスと言っても部屋は1つしかなく、2千円でお釣りが来る値段だった。

かたや姉が選んだリカちゃんハウスは部屋が幾つもあり、それぞれの部屋にミニチュアのベッドやテーブルを置くことができた。
価格は5千円くらいだったと思うが、昭和40年代の5千円ってかなりの高級おもちゃだ。
この日をきっかけに、幼いながらも薄々感じていた親の愛情格差は確信に変わり、私はますます卑屈な子になっていった。

それは第1子への特別な感情なのだろうか。
一人っ子親となった私には理解しがたいが、その後姉の素行がどんなに悪かろうがどんなに成績が悪かろうが、姉は両親、殊に母のお気に入りであり今もそれは変わらない。(孫の扱いも違う)

④クリスマスケーキ取り違え事件

あれは私が大学生の頃だったろうか。
まだ独身だった姉は、仕事が終わった後彼氏(現在は姉の夫)の家でクリスマスパーティーをすると言い、近所の小さな店にケーキを予約していた。
しかし当時の姉は連日残業続き。
姉は、冬休みで暇そうにしている私にケーキを取りに行ってくれと言い、私は言いつけ通り店でケーキを貰ってきた。

夜になり、父が帰宅する時間となっても姉はまだ帰ってこない。
すると1本の電話がかかってきた。
例の店の店主からだった。
いわく、

店主「今、別のお客さんが来て気づいたのだが、お宅に5号のケーキを渡すべきところ、8号のものを渡してしまったようだ。」

私はお使いで行っただけなのでもちろん気づかない。
ただ、受け取った時に「彼氏と2人で食べるには随分大きいな、彼氏の家族にも食べてもらうのかな」とチラリと思った。

私「まだケーキは食べていないので、お返しできますけど?」

店主「いやいや、もう閉店なので返されても困る。
そのお客さんは大変ご立腹で、ケーキの予備もなかったので仕方なくお宅の5号のケーキを持って既に帰られた。
うちは5号の代金しかいただけず損をしてしまったから、ケーキの差額をお宅に支払ってもらえないだろうか?」

今なら「はぁ!?」とブチ切れるところだが、10代の私はウブだった。
そして当時はまだ商人主導の昭和の片田舎である。
私は強気な店主の言葉にどうしていいかわからず、晩酌を始めていた父と電話を変わった。

事情を聞いた父は当然激怒。
「間違ったのはあんたでしょう!?
うちの娘が悪いわけでもないのに、なぜ追銭しなくてはならないのか?
よくも客にそんなこと言えるな、経営者として恥ずかしくないのか!?
今すぐここにあるケーキを返しにいくから、返金の準備をしておけ!」

父の剣幕に、我に返った店主は平謝り。
こちらが悪うございました、お渡ししたケーキはどうぞお納めくださいと言い、電話を切った。

「あの店、昔は繁盛していたんだけどねぇ、最近はお客が減って苦しいんだろうよ。」
ポツリと母が呟くと、心の中で父に拍手をしていた私は店主に少し同情した。

その後、店は次のクリスマスを迎えることなく閉店。
嘘のような本当の話である。

⑤涙のクリスマス

娘トラが小学生だった頃は、近所のH親子に散々嫌な思いをさせられた。
中でもクリスマス会でハブられたことは、トラは忘れているだろうが私は忘れることができない。

もう誰も覚えていないと思うので隠さずに書くが、下の過去記事の中の「××会」は実はクリスマス会だった。

当時小学1年生だったトラは、近所のHちゃんにクリスマスパーティーに誘われ大喜び。
張り切って参加人数分の手書きプログラムをこしらえていた。

ところがパーティー当日になっても、H親子から正式な誘いがない。
トラもパーティーをやると一度言われたきり、時間などは聞かされていないという。

トラのために確認をする気は起きなかった。
HママのDQN発言や行動にはいつもドン引きだったし、小賢しいHちゃんによる小さなハブりやからかいなどでトラがやられっ放しだったからだ。(鈍感なトラは気づいていないが、その鈍感ゆえにますますやられるの構図)

私は、「子供の口約束なんだから仕方がない。トラは誘われたものと思ったが、多分Hちゃんのいつもの自慢だったのだろう。」と思いつつ、トラには「今度から約束はきちんと確認しようね。」と言いクリスマス会のことを何とか諦めさせた。
確かショッピングモールかどこかにトラを連れ出したのだったと思う。

車を出した時、H家の前に車が数台停まっているのがバックミラーごしに見えた。
それが園時代の親子グループの集まりであることはすぐにわかった。(トラだけが違う園出身だった)

それから数日後。
H家のクリスマス会に参加したというママさんから意外な情報を聞かされた。
子づてに「トラちゃんはやめておこう」とHちゃんが言っていたと聞いたらしいのだ。

それがHちゃんの意地悪なのかHママの指示なのかはわからない。
いずれにせよ他園の親子グループに混ざるなどまっぴらごめん。
私は、トラには悪いが負け惜しみではなく心から、「やめてくれてありがとう」という気持ちでいっぱいだった。

さて、何でもかんでも自慢をしてくるH親子の個性は今も健在だ。
学年が上がるにつれ、H親子を敬遠する人(子)が少なからずいることを知り慰められもしてきたが、わが子が傷つき涙した日々は忘れることができない。

どうかHちゃんとは同じクラスにならないでくれ、同じ高校へは行かないでくれという気持ちは一貫して変わらず、避けて通れぬご近所のHママとは老後の付き合いをどうしたものかと思い悩む、不安症の私なのである。


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