【同人女の戯言】「ちゃんとした大人であれ」という呪い

こんにちは、同人女です。
今回の記事は、一文で書くと「十年来の同人友達とケンカして絶縁しちゃった事の禊」です。まあ15年同人やってりゃそんなこともある。私は彼女に対して激怒し、サブ垢も愚痴垢も知っている全てのアカウントをブロックし、もらった年賀状も何もかもを燃えるゴミとして処分しましたが、でも、十年とても楽しかった。きちんと禊でもしようかなって思うくらいには彼女のことが好きでした。私はクソ物書き女なので、「禊」イコール、note記事のネタにすることです。きっと彼女は、私のそんなところが嫌いだったと思います。

なんかさ、同人、長いことやってると「良い歳してまだそんなことやってるの?」って言われるんですよね。
 SNSのアカウントでさ、z軸のないイラストにはしゃいで、ガチャとかいう何の生産性もないものに大金ぶちこんで爆死して、ぬいぐるみに服着せてスイーツと並べた写真撮って、公式にはありもしない妄想をさも事実であるかのように書き散らし、挙げ句の果てには物凄い労力注ぎ込んで原稿書いて、売れるかもわからんし売れても黒字は絶望的な価格設定の本出して、早起きしてロリータ服着て髪巻いてイベント会場に突撃して、……。
20代前半くらいだったらいいけど、30超えてるの? いい年した大人でしょ? 現実見えてる? みたいな。

私と、私の友達の話をします。友達は、RちゃんというHNでした。私が大学生、彼女が高校生の時に、今は亡きTwitterで知り合いました。
はじめてコンタクトを取ったのはイベント前で、彼女からのリプライでした。
「こんにちは、はじめまして。私は今高校三年生です。同人女さんの新刊がとても欲しいのですが、R18なので買うことができません。私が高校を卒業するまでお取り置きをお願いすることはできますか」
正直者で、いい子だな〜って思いました。私は快諾し、そこから私たちの十年にわたる友情が始まりました。
年齢は私の方が五つ以上年上だったのですが、私は同人活動に命懸けのバカだったので、とても情緒が幼かった。化粧とかファッションとか恋愛に興味を持ち始めたのも遅くて、逆に同年代の女の子とは話が合わず、年下の友人の方が気楽でした。
一方。年下の彼女からは、私のことがどう見えていたんでしょう。わからないですが、一応年上風を吹かせてご飯とかお茶とかは奢っていたので、もしかしたらいいお姉さんに見えていたのかもしれません。私たちは好みの美少年のタイプが同じで、しかもお互い東京近郊に住んでいたので、何度も会い、色々なところにたくさん遊びに行きました。Rちゃんが20歳になったとき、はじめてお酒を出すお店に連れて行ったのも私です。Rちゃんが終電逃した時に家に泊めたこともありました。旅行もしました。旅行先で新聞の取材受けて、記事になったのでお土産に夕刊買って帰った。ナイトプールでパリピごっこもした。Rちゃんがいなければ、私の20代はきっととても寂しくつまらないものになっていたと思います。

そんな私たちの友情にヒビが入ったのは、私が30歳くらい、Rちゃんが25歳くらいになった時でした。

Rちゃんがオタクを卒業したのです。
じわじわと推しの話をしなくなり、ごく普通の、スポーツとか動物の話題が増えました。
私は同人活動以外に何の趣味もない女で、しかもメディア嫌いの偏屈ものなので家にはテレビがありません。だから、流行りのスポーツ選手のことなんてわかんない。
話がめっきり合わなくなりました。

z軸のない男の子に熱をあげることがなくなったRちゃんに、私は何を言えばいいかわからなくなりました。
一応、「昔の推しは今でも好き」と言ってはいましたが、タイムラインでしつこくその話をするわけではありません。
たまに、私の推しと彼女の推しが、サムネイルで見るとちょっと似ているので「〇〇くんだと思ったら違った」と不満を呟いているくらいでした。
彼女がオタクを上がった理由は、たぶん沢山あると思います。その中には男性オタクからのセクハラもありました。成人向け作品を書いている若い女の子というのは一部の心ない男性からセクハラ被害の標的になることがあります。彼女は可愛い子で、コスプレイヤーとしても活動していたので、そういった不快な視線に晒される機会は私より多かったように思います。
一方で私は、自分の同人小説の読者である男性と交際し、結婚しました。(参照:同人女、結婚する)囲いの男性が気持ち悪くて無理で同人活動をやめた彼女から見て、私はどんな存在だったんでしょうか。拗れそうですよね。拗れました。

しかも、私はずーっと、大学生のオタクメンタルのままでした。
毎日Twitterで推しの話をする。〇〇くんの乳首は何色かな? みたいなくだらなくてお下品なアンケートを取ってバズる。原稿を書く。本を出す。今月クレカの支払い100万近いわ〜とか言って草生やしてる。
毎日そんなことやってんのに「妊娠した♡」とか言ってるもんだから、さすがのRちゃんも、私に苦言を呈しました。「遊んでないで子供のために生きなよ」みたいな感じでした。言われても仕方ないよな、と思いました。事実だもん。私が「だらしない」のは。

私はとっくに、Rちゃんにとって、尊敬できる年上のお姉さんではなくなっていったのでしょう。
そのことについて、私は「仕方ないな」と思っていました。前にどっかの記事でも書きましたが、私に「尊敬に値する部分」があるとしたら、それは「めちゃくちゃ同人活動をやっている」というその一箇所に尽きるのです。同人活動というフィールドを離れた人にとっては、私はただのダメ人間だし。

ダメ人間。
まあ一応、それでもさ、ちゃんと大学卒業して、国家試験受かって、正社員で働いてるんですよ。趣味のフィールドで気の合う男性と出会って交際して、子供も授かって。出産を前提にしてたので福利厚生面を優先した会社に転職して三年しっかり勤務して満を持して産休に入った。そんくらいめちゃくちゃ計画立てて計画通りに事を運んだ。
実家の近くに家を買って、自立した生活して、住宅ローン払って、親に孫の顔見せることもできそうだなーって感じで。
その合間に親指の先で「〇〇くんのちんちんって包茎かなあ…」って呟いてても、2ヶ月に1回のイベントでロリータ着てはしゃいでても、私はたぶん、それなりに立派に30代の大人だと思うんですよね。でも、大人ぶって生きるのは嫌だったから、いつでもはしゃいでいる同人女として振る舞っていた。

遊んでないで子供のために生きなよ。

私は「言われるよなぁ!ガッハッハ!」と思うと同時に、「いや、やるべきことしっかりやってるが? むしろ遊ぶことで人生にしっかり向き合う英気を養ってるが??? お前に何がわかる?」と思ってしまった。

でね、
このRちゃんが、ちょっと色々あって、無職で、実家暮らしで、
Twitterで親御さんに文句言ってる姿を毎日見てたもんだから、──「朝早くから掃除機かけるな」とか「昼ごはんの盛り付けが気に入らない」とかそういうね。
年下だ年下だと思ってたけど私が三十過ぎてるんだから、あちらも20代も半ば、もしかすると後半? 立派なアラサーだ。わたしはその頃実家から自立して一人暮らししてた。ちょうど、20歳になった年下の友達にお祝いにオシャレなバーとか連れて行って奢りで飲ませたりさ、その子が終電逃した! って言うから家に泊めたりしてたと思うんだけど。
そんで、お腹大きくても毎日休まず仕事して、ご飯は自分で用意して、掃除機も自分でかけてるひとに、「ちゃんとしなよ」って偉そうに言うかな? みたいな疑問が、ふっと胸によぎる。

「あれ? 年齢不相応にダメ人間なのってどっちだろう?」って。

そんな疑問を抱えていた折、ちょっとしたことが大喧嘩に発展して、それに関しては私がにも非があったようや気がするんだけど、その時また「お前は年上なんだから年上らしく私に優しく接しろ」みたいなことを言われたり、あと極めつけは「そういうのは創作でやれ、私に対してやるな」って言われてしまって。
私はRちゃんのことを自分の読者で、オタク友達だと思ってて、究極的には「私の創作に魅力を感じて」繋がる関係でありたかったし、SNS上の私なんて「創作に毛が生えただけの人間」でしかないということを理解していてほしかったんだけど。
そう言われた瞬間、
「いやむしろ、オタク(創作)友達ではないRちゃんに私の友達としての価値がないという自覚はないんか?」
と思った。
恐ろしいことだけど、言語化するとそういうことなんだ。情を失う瞬間って、知覚できるんだね。パリーンってガラスが割れたエフェクトがつくような感じだった。いや、ここまで色々書いたけど、正直べつに無職でも実家暮らしでもいいんだよ。私は全然そんなこと気にしない。でも、お互いの創作や趣味を尊重し合える間柄であればそういうことは「気にしない」もしくは「多めに見る」のであって、趣味もろくすっぽ合わない、むしろ私の趣味を否定してくるような相手なら、こっちも趣味以外のフィールドで相手を評価するしかないじゃん。
私の趣味を否定するってことは、私の「趣味友だから多めに見る」を否定するってことやぞ。その覚悟があって私のその部分に文句をつけたんだな。私がどれだけ趣味に極振りで、趣味だけで生きている人間か承知の上で。そうか。それなら言ってやる、趣味友ではないお前には私の友達としての価値はない。
……とまあ、そんな具合に。日々の生活を見ていて、ちょうど「もしかして合わないかも…」と思っていた、そういう歪みが積もり積もっていたところに、トドメの一撃みたいな。
Rちゃんはいつの間にか、「かつて創作で繋がっていたからまだなんとなく繋がっている、情のある元友人」になっていた。その立場から「私はお前の創作には興味がない」とはっきり言われたことで、私の情は一気に冷めてしまったのだった。

かくして、ブロック、絶縁である。
友情って呆気ないな、と思った。

毎日毎日推しの妄想と共に生きているダメ人間がさ、そんな理由で自分をブロックしたと、Rちゃんは気づいただろうか。彼女の中では、失礼なこと言ってきて、喧嘩した挙げ句、年下に怒られて正論ぶちかまされてキレてブロックした、バカでしょうもない年上の女という認識なんじゃないかと思う。愛想を尽かしたのは自分の方だって、そう思っていそうだ。
むしろ、いい年してそこまで趣味に極振りで生きてて恥ずかしくない? とか言われそう。たかが趣味否定されただけで、友達ブロックするんだフーンみたいな。

ちゃんとした大人じゃないなから仕方ないか。

被害者ヅラはしない。だって、ちゃんとした大人でない、自分のだらしない部分を、露悪的に書き散らかして笑いをとって、「人間いつまで経っても青春時代さ!」みたいなノリでバカ騒ぎして、同人女やってるのは私だから。
家事して、働いて、育児して、実家の両親とマメに連絡とって、お金ないな〜とか言いながら口座睨んで、育休のあとのキャリアどうしようとか、そんなつまらんこと、つまらん、世知辛い、私の中の「まともな大人」の部分が嫌で、向き合いたくなくて、塗り隠してインターネット上の人格を作ってるのは、私だから。
日々の苦労とか口に出したら、呪われてしまう気がして、言ってない。言わなければわからない。そんなものを理解してほしいなんて、無茶だ。バカやってるんだからバカにされて当たり前。そのバカさに命懸けになるあまり、冷静な人間に「お前のバカな部分に興味ないんだけど」って言われたら逆ギレしてくるの、むしろ理不尽すぎて可哀想まである。

でもよ、創作のフィールド離れちゃったら、もうそれしかないんだよ、私には。

べつに若者は、わたしみたいな人間を尊敬する必要はない。幻滅してくれ。存分に幻滅してくれ。そして願わくば、「ちゃんとした大人になんかならなくていいんだ」と気付いて、自由に生きてほしいくらいだ。

そのはずなのに、そんな私が「年下とはいえ看過できないくらい、ちゃんとしてないな」って思っちゃって、友達をブロックしたのが、とてもかなしい。いっそ笑える。
趣味が共通、って人間関係におけるものすごいバフなんだよね。そこがすれ違ったら、たぶん相手の生活態度とか精神性とかに評価基準がシフトしちゃう。
私は、そのバフを取り除いた世界で生きるのがすごく嫌で。いつもクリエイティブに楽しいことして浮かれて生きていたいんだけど。それを落ち着きがないって言われちゃったらもう、さ……。

若い子って大体、大人に対して落ち着いた振る舞いとか精神性を求めてて、家庭とか仕事とかお金とか、そういう地盤がどうとか、そこまで気にしてない場合が多いから、そこすれ違うとどうしようもないんだよね。10代くらいまではそれでいいけど、さすがにアラサー以降にそういうこと言ってるのは幼過ぎるんじゃないかと、私はつい思ってしまった。でも、それは私の持論に過ぎず、元気な同人女としてお子様メンタルを振りかざす反対側の手で、他人に押し付けていい呪いではないような気がする。

まあ結局、趣味というバフを失った結果、お互いに「お前はロクな大人じゃない」って言い合って終わってしまったのだ。

悪かったと思っている。
でも、お互いに相手の欠点が目について、長所を評価できない関係はつらいからさ。私たちはもう関わらない方がいいんだ。

一緒にいて、楽しかったから、友達をなくすのはつらいとおもう。
別れがつらいと思えるくらい大切な友人に出会えたんだから、同人活動しててよかった。たとえ、同人活動が別れの理由であったとしても。

以上、禊でした。


おしまい。



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