【同人女の戯言】脱稿と鬱と見本誌と

こんにちは、しばらく沈黙していた同人女です。
七月に無事出産して、身の回りも諸々なんとなく落ち着き、来週久しぶりにイベントにサークル参加をする予定です。

さて、アカチヤンは生後5ヶ月。絶賛育児休業中。
「お前本気か!?」っていろんなフォロワーに言われました。
イベント参加自体はホラ、時間にしたら半日くらいのことだから、子供を預けて参加するのも難しくないじゃないですか。物理的には。
でも、乳飲み子抱えて原稿をやるの? できる? マジ?

大丈夫! 一応体のことも考えて、いわゆる産休期間中(産後6週間)は原稿やらないから! 9月から原稿はじめる!
……と元気に答えるくらいには、私は同人モンスターです。
何がお前をそこまで駆り立てるのよ。
なんだろうね、だって楽しいじゃん。

産休中だったか産後だったかウロ覚えなんですが、「みんな、なんのために同人活動やってるの?」っていう問い掛けとアンケートがバズっているのを見かけました。

交流のため、お金のため、自己研鑽のため、なんか色々選択肢があった気がしますが、私は「創作をするにあたって中短期スパンの締め切りや目標があるとやる気が出るから」で「せっかく頑張ったなら記念として形に残したいから」です。
究極的には1冊刷って自分の本棚にそっと置いて終わりでもいいんだけど、まあ欲しい人がいるなら手間もたいして変わらないし、ついでに頒布しちゃえ〜みたいな。
ただでさえ、そんなタンポポの綿毛のような動機で必死こいて原稿書いて、何十万も印刷代にぶちこんでんの? 正気か? って感じなのに、今わたしの目の前には生後半年に満たないアカチャンがいる。

正気か?

あ、一応お断りしておくと、私は産前から綿密に配偶者や近隣に住む実家の両親とコミュニケーションを取り、趣味の継続について賛同(むしろ推奨)を得た上で、協力体制を築いて万全の準備を行い、「もちろんアカチャンが最優先!」という当然の前提のもとで同人活動の継続を決めております。
もちろん必要だと判断したら原稿落とすし、イベントを欠席するのも躊躇しません。そういうことがちゃんとしてるヤツなんだなっていう信頼はね、日頃の行いの積み重ねだからね。

いやお前、そのタンポポの綿毛のような動機のためにそこまで根回しして必死にやるのか、同人活動を。

そうだよ。

遊びじゃねえんだ同人は(※遊びです)

なんかほら、趣味にこそ全力を尽くせってタモリだかさんまだかビートたけしだか、ちょっと芸能人には疎いんでそこらへん全部同じに見える人なんですけどとりあえずなんか有名人もそんなようなこと言ってた気がする。

で、まあ、私は有言実行する意志の固いしごとのできる女なので、早割余裕入稿で脱稿しました。ついでに合同サークル(いざとなった時にサークル欠席する可能性があるので、一緒に参加してくれる心優しいフォロワーを用意しました)の、パートナー達の〆切管理とか入稿作業とか印刷会社とのやりとりとか郵送諸々の事務作業も、やりました。
平日家にいられるって便利!(育休はそういう使い方をするものではありません)

しかしね、
入稿すると、
来るんですよ、ヤツが……。

鬱。

ヤバい。今回の鬱はひときわ強烈。
「1年ぶりのイベント、スペースに誰も来なかったらどうしよう」「刷りすぎたかもしれない、余ったらどうしよう」「いやでも足りないかもしれない、再販かけたらめっちゃ赤字出るぞどうしよう」ぐるぐるぐるぐる鬱鬱鬱鬱……。
私はこれを脱稿鬱と呼んでいます。

人によりけりだとは思うのですが、私にとって同人活動の一番楽しいところは原稿を書くところ。もしくは構想を練ってる時。次もまた面白い話を書くぞー! イェーイ! ってなってる瞬間が一番楽しくて。わくわくしながら原稿書き進めてる時はこのまま永遠に書いてたい時間よ止まれみたいなハッピーモードアドレナリン祭なんだけど。
脱稿と同時に、現実が突きつけられる。
「ゆーてそんなに面白いか、これ?」
とか
「この部分の描写ちょっと甘かったな…実力不足…」
とか
「本が欲しい人おるんか?」
とか
こう、夢から覚めたような気持ちになる。で、だんだん印刷会社に多く発注しすぎた気がしてきて、イベントこわいイベントこわい、現実こわい、ってブツブツ呟きながらお布団の中で丸くなってしまうのだ。

でさ、イベントのお楽しみのひとつはアフターとか交流だけど。今回、私は長時間の外出が困難なので、アフターのお誘いは先回りしてお断りしており。
〇〇さんと会える〜みたいなご褒美も特にない……。
だんだん不安が膨れ上がって、いっそイベント会場、行かなくてもいいんじゃ……みたいな気持ちになってくる。

1年ぶりのイベント参加だからひとがどれくらいいるかもわからないし……。

でもって書店委託の初動がビミョーだったり……本余ったらどうしよう……。
でも会場限定のノベルティあるからもしかすると逆に通販から会場に人がいっぱい流れるかもしれん……足りなかったらどうしよう……。
もうだめだいっそ殺してくれ……。

しかし、そんなイベント2週間前のある朝、玄関のドアチャイムが鳴る。
「宅急便でーす、ハンコお願いしまーす」
おかしいな、荷物の予定なんかなかったはずだけど。配偶者がamazonのブラックフライデーでなんか買ったのか?
片腕でアカチャンを抱っこしながら、玄関に向かう私。

差出人・緑陽社

アッ…
その瞬間私は悟った。

見本誌だこれ。
薄い本が一冊くらい入った感じの、エアキャップぷちぷちの封筒。緑陽社さんは今回初めてお世話になった印刷会社さんなんだけど、何せ昔からある大手だし、早割30%オフ使ったし、事前に見本誌が送られて来てもなんらおかしくないんですよね。
ヒーッヒーッと呼吸をおかしくしながら、私はアカチャンを膝の上に乗せて、そっと封筒の上をハサミで切りました。
そーっと覗き込む。工程チェックリストが見える。
やっぱ見本誌だ。

見本誌だ!!!

そこで、私のテンションぶち上がりです。表紙印刷の段階でわかる。めっちゃ綺麗!!! これが、これが緑陽社のオフセット印刷!!! 原稿の塗り足し不足に後から気づいて不安だった場所をチェックする。全く切れてない。トーンの再現度、やべえ。ただの明朝体ですら抜きが美しすぎてオアアアアアとかいう変な声が出た。オフセットしゅごい。いつも格安印刷所で読めりゃいいぜクオリティで刷ってるけど、やっぱり違う、圧倒的に違う、ウワアアアアアア! アカチャン! アカチャン見て! これオフセット印刷!!!(見せる相手がアカチャンしか居ない)

これはイベント会場でみんなに見せびらかさなきゃ……。
アー! イベント楽しみだな! はやく当日にならないかな! わっふるわっふる!

あまりにも単純、同人女ってそういう生き物ですよね。

では来週イベント会場でお会いしましょう。

おしまい。

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