見出し画像

伊吹有喜『BAR追分(ハルキ文庫)』角川春樹事務所 2015.7  『オムライス日和 BAR追分 2(ハルキ文庫)』2016.2  『情熱のナポリタン BAR追分 3(ハルキ文庫)』2017.2

伊吹有喜(1969- )『BAR追分(ハルキ文庫)』
進藤恵子 装画 角川春樹事務所
2015年7月刊
2017年12月3日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4758439176


「新宿三丁目交差点近く かつて新宿追分と呼ばれた街の「ねこみち横丁」の奥に、その店はある。そこは、道が左右に分かれる、まさに追分だ。BAR追分。昼は「バール追分」でコーヒーやカレーなどの定食を、夜は「バー追分」で本格的なカクテルや、ハンバーグサンドなど魅惑的なおつまみを供する。人生の分岐点で、人々が立ち止まる場所。昼は笑顔がかわいらしい女店主が、夜は白髪のバーテンダーがもてなす新店、二つの名前と顔でいよいよオープン!」

『ランティエ』2015年1月号掲載
「プロローグ」
「スープの時間」
書き下ろし
「父の手土産」
「幸せのカレーライス」
「ボンボンショコラの唄」
五篇

ハンバーグサンドイッチを食べたいです。

表紙の温玉のせカレーライスの絵柄に既視感を感じていたら、
2015年12月に読んだ
井上荒野『荒野の胃袋』潮出版社 2014.9
http://www.amazon.co.jp/dp/4267019886/
https://www.facebook.com/tetsujiro.yamamoto/posts/pfbid0EgnkFTdQnahX4d4N42Bq2QDQFnzLASnKoGZfgEyYGdf6XNoV98SfcpBffHJwqYwFl

https://www.amazon.co.jp/dp/4267023670

の進藤恵子さんでした。
https://twitter.com/keikopainted/status/506616708275003392


奥付には「2015年7月18日第一刷発行」と記載されているのに、
カバー裏見返しには「伊吹有喜の本 オムライス日和 BAR追分」
と印刷されているのは何故だろう?
と思ってググっていたら、
https://www.bookbang.jp/book/isbn/9784758439176
で、初版刊行時の書影を発見。



二冊目の『オムライス日和』を2016年2月に出版する際に、
一冊目『BAR追分』の在庫分のカバーを差し替えたんですね。

「場が静かになると、かすかに音楽が聞こえてきた。
ハスキーな声の女が英語で、愛とは何かあなたは知らないと歌っている。」
p.24「プロローグ」

ビリー・ホリディ(Billie Holiday 1915-1959)の歌う
You Don't Know What Love Is (1958.2.18)
https://www.youtube.com/watch?v=6P96s6bIeQk

を久しぶりに聴いてしまいました。
何年ぶりだろう?

和田誠・村上春樹『ポートレイト・イン・ジャズ』新潮文庫 2003.12
https://www.amazon.co.jp/dp/4101001537
「まだ若い頃にずいぶんビリー・ホリディを聴いた。それなりに感動もした。でもビリー・ホリデイがどれほど素晴らしい歌手かということをほんとうに知ったのは、もっと年をとってからだった。とすれば、年をかさねることにも、なにかしら素晴らしい側面はあるわけだ。」p.48


「温玉に少しだけ醤油をたらし、白いご飯に軽くくぼみをつくって、そこに温玉をのせた。小さな卵かけご飯だ。今度はカレールーをひとさじすくって、卵がかかったご飯にかけてみる。カレー、黄身、ご飯の三層になった部分をスプーンですくって食べる。

牛スジのカレーは、他の肉のカレーにくらべて、スジが煮とけた分、コクがある。そこに卵の黄身が合わさって、深いコクが晴れやかな味わいに広がっていく。温玉とカレーを味わったあと、カレールーを多めにすくって口に運ぶ。

牛スジはゼラチン質が多くてとろけるものと、肉が多めに付いているものがあり、食感に変化があった。そのどちらもカレーのルーとよく絡み、一噛みごとにスジ肉とルーのうまみを舌に力強く伝えてくる。来てよかった。大正解。」
p.131「幸せのカレーライス」

「青木梵 ピンチョスは何があるの?
佐々木桃子 大人のポテトサラダと、魚肉ソーセージとアボカドのマヨネーズ和え、それから生ハムです

バール追分には薄く切ったパンに小さなおかずをのせ、つまようじで留めた『日替わりピンチョス』というメニューがある。一律六十円で、コーヒーやエスプレッソを頼んだ客たちは気軽に一つ、二つとつまんでいく。ピンチョスというのはスペインのバルにある軽食らしい。
 … 
青木梵 魚肉ソーセージって言われるけど、ソーセージの代用品じゃなくて、この存在そのものが俺はこよなく好きなんだ」
p.162「ボンボンショコラの唄」


伊吹有喜『オムライス日和 BAR追分 2(ハルキ文庫)』
進藤恵子 装画 角川春樹事務所
2016年2月刊 230ページ
2017年12月5日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4758439737


「有名電機メーカーに勤める菊池沙里は、大学時代にゼミで同期だった宇藤輝良と再会する。卒業して五年、宇藤は「ねこみち横丁振興会」の管理人をしながら、脚本家になる夢を追い続けているという。数日後、友人の結婚式の二次会後に、宇藤がよくいるというねこみち横丁のBAR追分に顔を出した沙里だったが…(「オムライス日和」より)。昼はバールで夜はバー 二つの顔を持つBAR追分で繰り広げられる人間ドラマが温かく胸に沁みる人気シリーズ、書き下ろしで贈る待望の第二弾。

伊吹有喜
三重県生まれ。2008年『風待ちのひと』(「夏の終わりのトラヴィアータ」より改題)で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞しデビュー」

書き下ろし四篇
「猫の恩返し」
「オムライス日和」
「ようこそ餃子パーティーへ」
「森の診療所(リトリート)」

どれも美味しそうだなぁ。

表紙にオムライスと一緒に描かれている黒猫、
「ねこみち横丁」の地域猫の名前は
「デビイ」です。

Bill Evans (1929-1980)
Waltz for Debby (1961.6.25)
https://www.youtube.com/watch?v=wCINvavqFXk https://www.youtube.com/watch?v=gk4D7N0pzGs 
からの命名だと説明されています。

「『ワルツ・フォー・デビイ』のジャケットの写真
薄い紫色を背景に、少女とも女性ともつかぬ横顔のシルエットが描かれている。黒と紫が印象的なおしゃれなデザインだ。」
p.14「猫の恩返し」

Web伊吹有喜「折々のいぶき」
http://ibuki-yuki.jp/
によれば、1969年三重県出身、中央大学法学部卒。
同じハルキ文庫な
『みをつくし料理帖』全10巻 2009-2014
の高田郁さんより十歳年下な後輩なんですね。

「菊池沙里 そもそもどうして宇藤君、脚本家志望なのに文学部へ行かなかったの?
宇藤輝良 親にもこの間言われた。僕は子どもの頃から刑事ドラマの大ファンで、そういうのを書いてみたいなと思ったから法学部
菊池沙里 そこでまず間違ってるよ
宇藤輝良 でも無駄だったかと言えば無駄じゃなかった。法律的なものの考え方は、脚本の構成を考えるときにも参考になるし、法医学や犯罪学の講義でサスペンスドラマを書くのに必要なことは教えてもらえたし」
p.114「オムライス日和」

「朝食をとりにバール追分に行くと、桃子がごはんと一緒にスープを出してくれた。刻んだ青ねぎがたっぷりと入ったコンソメスープで、なかに昨夜の焼き餃子が入っていた。

一口かじる。カリッと焼かれた餃子の皮にコンソメ味のスープがしみ、餡の肉汁と豊かに溶け合っている。青ねぎの香りも食欲をそそり、力がわいてくるような一椀だ。

宇藤輝良 焼き餃子をスープに入れるなんて、初めてみたよ
佐々木桃子 私もこの間、初めて体験した味。九州料理のお店で鉄鍋餃子を食べきれずに残したら、お店の人がこうしてスープにしてくれたの。おなかいっぱいだったのに、あまりにおいしくて全部たべちゃった。それで真似してみた。初めて作ってみたけど、いけるね。餃子自体がおいしいし」
p.167「ようこそ餃子パーティーへ」

餃子を作った(皮も餡も)のは宇藤君で、焼いたのは桃子さんでした。



伊吹有喜『情熱のナポリタン BAR追分 3(ハルキ文庫)』
西川恵子 装画 角川春樹事務所
2017年2月刊 248ページ
2017年12月6日読了
https://www.amazon.co.jp/dp/4758440654


「かつて新宿追分と呼ばれた街の、“ねこみち横丁”という路地の奥に「BAR追分」はある。“ねこみち横丁”振興会の管理人をしながら脚本家を目指す宇藤輝良は、コンクールに応募するためのシナリオを書き上げたものの、悩んでいることがあって…。両親の離婚で離れて暮らす兄弟、一人息子を育てるシングルマザー、劇団仲間に才能の差を感じ始めた男 人生の分岐点に立った人々が集う「BAR追分」。客たちの心も胃袋もぐっと掴んで離さない癒しの酒場に、あなたも立ち寄ってみませんか? 大人気シリーズ第三弾。」

「昼はコーヒーや定食、夜は本格的なカクテルを提供する新宿の「BAR追分」が舞台のシリーズ第3弾。
計4話を収めた本書は、脚本家をめざす青年を軸に物語が進んでいく。コンクールに送るためのシナリオを書き上げた青年は、応募前にある女性の意見を聞きたがっていた……。山梨県から訪ねてきた弟とグラスを傾ける兄、一人息子を育てるシングルマザー。やがて青年は、情熱がすべての壁を打ち破ると信じ、歩み出す。お好み焼きや親子丼、ナポリタンなどの食べ物だけでなく、新宿に実在する大型書店やカレー店なども効果的に使われ、登場人物たちの息遣いがリアルに伝わってくる。
酒場という場所で流れるゆったりとした時間に身をゆだねるなら、読後はきっと優しく穏やかな気持ちになるだろう。
評者:相原透(週刊朝日 掲載)」

『ランティエ』2016年10月号~12月号掲載
「お好み焼き大戦」
「秋の親子丼」
書き下ろし
「蜜柑の子」
「情熱のナポリタン」

新宿すずやのとんかつ茶づけ
http://www.toncya-suzuya.co.jp/toncya.html
を食べてみたいなぁ。

一週間で
『BAR追分』
『オムライス日和 BAR追分 2』
『情熱のナポリタン BAR追分 3』
三冊を続けて読んでしまいました。

読み終えて感じた不満は、ティオ・ペペのシェリートニックを飲みながら宇藤君が食べる情熱のナポリタンが、前二冊のように進藤恵子さんの絵で表紙になっていないことです!

西川恵子さんの表紙は、猫は可愛いですけど、美味しそうではありません。

続きが読みたいなぁ。

「スパゲティを茹でたものを、冷蔵庫から二玉出す。ナポリタンを作るなら、スパゲティはやわらかいほうがいい。これは昼間に茹でたものを水洗いして、冷蔵庫で寝かせておいた。この一手間で麺が伸び、ソースが絡みやすくなる。

ボウルにケチャップとウスターソース、赤唐辛子と塩と糀と柚子で作った発酵調味料、かんずりを入れてかきまぜる。

「ピリッと辛いが、発酵食品だから味に広がりが出る。ソースに奥行きが出るんだよ」

鉄板に油を引き、用意しておいたチョリソーと薄切りの玉ねぎ、ピーマンを炒める。そこに麺と少量の水を入れ、塩、胡椒でさらに炒めた。ボウルのなかの特製ケチャップソースを入れて、さらに炒める。明るい朱色に染まったナポリタンにタバスコを注ぎ入れ、さらに炒める。

鉄板に油を引き、溶き卵を流し入れる。焼き上がった薄焼き玉子の上に辛口ナポリタンを置く。黄色い玉子と赤いナポリタン。赤も黄色も力強く、怖じ気づく心を奮い立たせてくれる。」
p.232「情熱のナポリタン」

定休日の「演劇鉄板屋・時雨」で宇藤君のためにナポリタンを作ったのは、「演劇屋花嵐・制作脚本部」をその日退職してお父さんの鉄板屋を継ぐ晴海空開(はるみくうかい)さんです。

読書メーターで、
ホットドッグ or アメリカンドッグが話題になりました。
新宿のコンビニで売っているのなら、その名称は「ホットドッグ」ではなく、「アメリカンドッグ」だと、元東京都民の私は思います。
同じ新宿が舞台の
安倍夜郎『深夜食堂 14 ビッグ コミックススペシャル』小学館 2015.5
https://bookmeter.com/books/9588346
では、もちろん、アメリカンドッグでした。

伊吹有喜さんは、
ttps://ja.wikipedia.org/wiki/伊吹有喜
によれば、「三重県尾鷲市生まれ、四日市市育ち」で、
アマゾンのカスタマーレビュー
https://www.amazon.co.jp/dp/4758440654
には、「アメリカンドッグを「ホットドック」という地域は三重県など存在する」とありました。

https://webfrance.hakusuisha.co.jp/posts/6090

白水社 webふらんす 2022.9.22
髙良宣孝 「ホットドッグ」の思い出
「あまはい、くまはい、いちむどぅい」第9回
「和製英語というものがありますが、どうやら沖縄独自のものもあるようです。」
によれば、「ソーセージを串に刺しまわりに衣をつけて油で揚げた食べ物」を、沖縄でも「ホットドッグ」と呼んでいたそうです。

食べ物の本棚(登録冊数751冊 著者名五十音順)
https://bookmeter.com/users/32140/bookcases/11091194
エッセイ、小説、マンガ、絵本、レシピなど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?