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(無謀にも)詳解(してみる)鈴鹿スタジアム訴訟判決

 原告が求めていた、鈴鹿青少年の森公園へのスタジアム建設許可取消訴訟の判決が出たようです。
【PDF】判決文(鈴鹿青少年の森を愛する会HP)

 却下判決(そもそも提訴自体不適法なので具体的な審議に入らず門前払い)という事です。原告敗訴ですが、不戦敗と言ったほうが正確ですかね。
 結局原告が求めてる審議は何一つされませんでしたので、おそらくスポーツ好きなみなさまが求めてる情報はここにはないです。
 なので、あまり意味はないのですが、自分なりに判決文を読み込んでみます。あ。私弁護士じゃありませんので、間違いあれば指摘して下さい。
 そんなわけでここでは許可の是非について論ずるつもりは一切ありませんので、そういうのはよそでやって下さい。


1.そもそも前提として

 行政に対する訴訟(行政訴訟)って誰でもいつでも訴えられるわけではなく、法律で訴えられる条件が決まっています。
 今回被告と裁判官が「え?訴えられる条件満たしてないんじゃないの?」と思った点が2つあります。
 一つ目は原告適格がないのではないかという点。もう一つは出訴期間経過してないかという点。

2.出訴期間経過後の不適法な訴え?

 原告適格についてはひとまず置いておいて(※1)、出訴期間のほうをまず検討する事にしたようです。
 行政訴訟では訴えられる期間というのが決まっています。何年も経ってから進行中のプロジェクトをひっくり返されたら損害が大きすぎますからね。その期間を「出訴期間」と言います。
 今回のような取消訴訟では、原告が許可とかがあった事を知ってから6ケ月以内の提訴が条件です。(他にも色々あるけど思い切って省略します。※2)
 原告は令和4年2月14日に提訴していますので、令和3年8月14日よりも前に、今回の許可の事を知っていたらアウトです。

 令和3年8月2日にスタジアムに関する記者会見があり、翌日中日新聞と伊勢新聞にこの記事が載りました。
 原告らは令和3年7月20日に、鈴鹿市が行ったスタジアム設置許可申請に関する情報を得ていたそうです。以前からそれくらいこの件に関心がある人であれば、令和3年8月3日に新聞報道があればそこで当然許可があった事を知るはずですよねーそこから6ケ月以内なので令和4年2月3日までに訴えなきゃいけなかったですよねー2月14日では過ぎてますよねーと裁判官は判断したようです。
(判決文9ページ目エの正当事由のくだりとか、他にも細かい論点がいくつかありますが省略します。)

 実は原告は訴状(※3)の中で、令和3年8月3日の新聞報道で多くの市民がこの許可を知ったと書いちゃってるんですよね。当然原告もその市民に含まれるわけで…
 提訴が不適法な事を原告自ら訴状の中で証明するとは、当時レイソルの某GKの伝説的オウンゴールなどかすむくらいのオウンゴールでございます。
 某GKはそれから18年経った今も現役で素晴らしい選手ですから、原告のみなさんもこれからの人生気持ちを強く持って!(この年齢での大ケガ本当につらいですが、ちょうど今日練習場に戻られたようで。おかえりなさい。)
 とにかく、6ケ月ルールを守ってない以上、不適法な訴えなので具体的な審議に入る必要もなく門前払いという判決です。

 ちなみに、そもそも住民監査請求を経ていない(一旦は住民監査請求をしたものの取り下げてしまった模様)という点でも不適法な提訴なのですが、判決文でさらっと触れてるだけなので省略します。

3.ちょっと余談で栃木市の判決を

 栃木市での栃木シティのスタジアム設置許可に関連する税の免除に関して提訴があった件は、原告勝訴で一審判決が出ています。(その後栃木市が控訴しています。)
 たぶん、栃木市の事例は、市が勢いで栃木シティの話に乗ってしまったんだと思うのです。栃木市議会議事録読むと手続き的に色々ずさんだったようなので(※4)。そこでさすがにそれはおかしいだろと、そして、しっかり弁護士つけて適法に提訴し原告が勝訴したというのが栃木市訴訟の流れです。

4.まとめ

 鈴鹿市のほうは、原告は争点に触れない不当判決だ!控訴する!とおっしゃってるようですが、こういう事情なのでどうなんでしょう…
 結果論ですが、栃木市判決が出てしまった事が原告にとって不幸だったのかなと。あの事例は特殊で鈴鹿市のほうに全く活かせないのに、訴えたら勝てる!と思ってしまい、途中で急に路線変更して、行政訴訟手続きの勉強が足りないまま突っ込んで、結果本来の目的を達成出来ない状態に自らしてしまった。
 また、出訴期間をクリアしたとしても、原告適格のハードルを弁護士なしで超えるのは難しい(※5)のではないかなあ…と。さらに、被告側は万が一具体的な審議に入った時のために、事前に反論を提出(※6)していますが、それを読むと、少なくとも裁判官を納得させられる手続きを三重県は踏んでいる印象です。(ただこれはあくまで私の感想で、仮に審議に進んだとして実際の判決がどうなったかは分かりません。)

 行政側がやらかさなければ提訴自体が難しいし、審議まで進んだとしたとしても、少なくとも行政側は反論できるような準備をしているのが一般的です。
 なので、個人的に栃木市と鈴鹿市の事例があったからと言って過剰反応はしないほうがいいと思いますし、また、不安に感じてる方がいるなら安心して欲しいなと思います。
 また、スポーツの公益性を世間に認めて欲しい!という事であれば、訴訟における反論でという事よりも、みなさまがスポーツ観戦の場等で楽しそうにしていれば、自然と世間が認めてくれるのではないでしょうか。


※1
その人が提訴する資格があるのかどうかという話です。行政訴訟における原告適格については、例えば、100人中100人が納得する行政ってありえないわけで、納得しない1人がその度に提訴してたら収集つかないわけです。
なので、提訴できる人を法律上の利益を有する者に限定しています。じゃあ法律上の利益を有する者って誰?って聞かれるとまあその…(いや長くなるので…気になる方は「原告適格とは」とかでググって下さい。)

※2
行政事件訴訟法14条

※3
【PDF】訴状(鈴鹿青少年の森を愛する会HP)

※4
例えば必要な条例改正を忘れてたとか…(これ以外にも色々アレなようで)
令和2年9月2日栃木市市議会議事録

※5
※1で書きましたが、原告が本件に関して「法律上の利益を有する」とどう構成するのか訴状等で見えてこなかったので。

※6
【PDF】被告答弁書(鈴鹿青少年の森を愛する会HP)

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