見出し画像

マザーテレサにはなれなかった女

昨晩、まだ熱は下がりきっていないものの 丸一日寝続けて少し調子が良さそうだったタミオ君に
今まで会話が成り立たなかったのは調子が悪かったせいなのかどうかを確認し、今なら可能かと許可を得て、夜ご飯の後お話しました。


久々に人間としゃべった気がする。
というか、久々にタミオ君が人間に戻った気がする。


まず、ちょうどテレワークが終わる頃に目覚めて寝室から出てきたタミオ君は『おなかすいた』と言った。おなかはいつも空いている。食欲があるのは良いことだ。

しかし私の仕事が定時で終われなかったので、そのまま寝室に戻ってしまい、終了後に改めて声をかけに行くと『もう少し寝る』という。

お昼に用意していたご飯を食べずに寝ていたので、すぐに食べ物を与えることもできたけど
おなかが空いてるんじゃないのかい、と言う質問には『御飯ができたら起こしてくれればいいよ』という返し。

調子がいいのか悪いのか
お腹が空いてるのか空いてないのか

どうするのが正解なのかまた見失った私は、布団にもぐっているタミオ君に聞いた。

『私は今タミオ君がどういう状況なのか全然わからない。いつも家ではどんな看病をされているのか教えてくれ。』

『全部?事細かに?』

『説明できるならしてほしいけど、細かくなくてもいいから ご飯はどうしてるのか、常時放置されてるのか、家族から具合を聞かれることはないのか、色々。』

『御子ちゃんは看病がうまいと思う。』

『衝撃なんだけど。何を言ってるのかもう全然わからない。私は会話の成立しないタミオ君にどう接していいのかどこまでがありがたくて何が迷惑なのか全くわからなくてものすごく困ってる。』


実家でも自分から状況を説明することはなく、ご飯は用意してくれてるけど食べれる時に食べればいいという感じで基本的には放置、熱があれば氷枕を持ってきてくれたりはするけど、特にそれぐらい らしい。事細か とは何ぞや。

実家にいても病院には自ら行くタイプではないから、あまり酷い時は親に連れて行かれて診察するそうだ。だから私が無理矢理医者に連れて行ったことは間違いじゃないらしい。


調子が悪くて動きたくないとか、予約するのに電話するのも億劫だとか、理由はいろいろあるけど
それでも自分から行きたいと思えば、予約してほしい・連れてって欲しいと言えばいいわけで、無理矢理連れていかれるのを待って『間違ってない』と言われても 何様だよ って話である。

この場合、自分のためだけじゃなく
一緒に働く同僚や一緒に住む恋人のために、早く治したい・正しい治療をしたい と自ら考えるようになってくれることが理想ではあった。

こればっかりは考え方の問題だから仕方がないけど
私ならそうする という意見は伝えておいた。



そして夜ご飯の用意ができたら起こすことを伝えて、再び寝室に閉じ込めた。

しばし呆然としたが、意を決して夕食作りに取り掛かり
用意ができてから呼ぶと アッサリ起きてきて食卓についた。


そのまま感染対策も兼ねて黙ってご飯を食べて
食後にお話の続きをした。


*****


昨日の日記に記したことを、改めて伝えた。

普段から口数少ないタミオ君は、具合や気持ちを(リアルタイムに)伝えて欲しいと願う私に対して 案の定『何もかも知りたいの?』と問う。

そう感じてるんだろうな、とはわかっちゃいたけど
実際言われるとなんだかショックだった。

そうではないし、どう説明したらわかってもらえるのかわからないけど という前提で

タミオ君はいつも、ちゃんと伝えたほうが良いことほど口に出さないことが多いし、そのほとんどが【御子ちゃんはわかってるはず】と決めてしまっている。わかってることもあるけれど、そういう問題ではない。

私は他人だから、家族ならわかることも気付けないかもしれないし
私は少しでもお互いが負担にならないように仲良く平和に暮らせるように、いろんなことを報告するようにしてる。聞いてもらいたくて話すことばっかりじゃない。
これまでも何度となく話に出してきたけれど
お金のことだったり、交友関係のことだったり、家族や仕事のことだったり、身体のことも全部
タミオ君やタミオ君の家族に安心してもらえるようにいつも考えて動いてきたし、何かを決める時にはそれが第一の基準になってる。
同じように考えてほしいと強制するつもりはないけど、他人と協力し合って支え合って暮らしていくためには
一人なら考えなくていいことも、伝えなくていいことも
考えたり伝えたり話し合ったりしなきゃいけないと思ってる。
それができないのは致命傷だと思ってる。
楽しい嬉しいことばっかりじゃないから、苦しい時に助け合えなきゃ長い目で一緒にいることは考えられない。

タミオ君は、これからも二人が一緒に暮らしていくために
この生活を平穏に続けていくために何か努力していることはある?

前に聞いてみようと思っていたことを、聞いてみた。



しばらく黙った後、

『そう言われてみると、俺は何も、、御子ちゃんに全部甘えてしまって、最近は家のことも何もできてないし、、』と言った。


家事に関しては、私もやりたくないわけじゃないし
やれる方がやればいいとは思うけど

二人が一緒にやるべきこととして、役割分担を決めることにした。

その上で、できないことを相手に頼んだりできる方がやるのはいいとして
私がやるのが当たり前 という暗黙の了解は解除してもらうことにした。

とりあえずインフルから復帰したら
自分の部屋と荷物を片付ける。
家事より何よりもそれが最優先で、私もそれまではできることはやって
その後にちゃんと分担して家のことを二人でやろうと決めた。


あとは、とにかく自分の思ってる気持ちをできるだけリアルタイムに言葉にしてもらうこと
話し合える環境をちゃん確立しておきたいことは お願いした。





発熱してからの3日間
世話することも家事することも苦ではなかったけど

ひとりの大人と対峙してるのに
会話も成立しない、まともに返事もしてくれない状態で、目に見える姿から必死に状況を確認するしかなくて気が張って、できる限りのことをしたいのに何をすれば正解なのかわからなくて苦しかったことも 伝えた。

話も通じない生き物が死なないように必死で世話をする、子育てってこんな感じなのかな なんてポロッと口にしたら
『子供はもっと大変だよ』とタミオ君が言った。

ど の 口 が 言 う 。
わかっとる。

『それなら子供はやっぱり無理だ。私はタミオ君のお世話で心身ともにいっぱいいっぱいだよ。』



もう中田氏禁止だ。



ついでに、もし逆だったら(私が潰れてタミオ君が元気だった場合)のシミュレーションをしといてくれ と、お願いした。



私は医者じゃないし、すべての状況に正しい判断なんて下せないけれど

ベビーシッターの(資格を実は持っている)勉強をした時に、ある程度基礎的な体調不良の対処法は学んでいるし
甥っ子が生まれてから、いざとなった時のために各種応急処置を自発的に学んだり、救命救急の無料体験に参加したりなどしている。
昔から自分が虚弱体質で薬漬けの生活を送ってきたが故に、一般的な薬の種類や用法容量は、一般的な人より把握しているつもり。

もちろん、ちゃんと診断が必要な時には医者に連行するけど
少しは相談を持ち掛けて欲しい とお願いした。


今回、私がインフルに感染することもなく
タミオ君の容態が落ち着いてきたのは不幸中の幸いである。

タミオ君の知らないところでものすごく頑張ったし
自分にも移ることで会社にも迷惑がかかるし、自分もエライ思いをするし、完治していないタミオ君の世話だってできなくなる。

ダイソーの次亜塩素酸水は3日で1本消えた。
ありとあらゆる場所に、スプレーで噴射して磨き続けた

毎日洗濯を回して、栄養の取れそうなご飯を用意して
タミオ君が寝れば寝室に、ご飯の時間にはリビングに、空気清浄機を運んだ。

数時間おきに体温を測って、飲み忘れのないように薬を渡した。

よくやってる、もうすぐ良くなる、自分で自分を褒めて励まさないと頑張れなかった。


何故いくつも持ってるのかわからなかったタミオ君の加湿器は、ありがたいことに全部屋で稼働しており 湿度も保っている。雑菌がわかないように毎日水を変えたし、こんな形で役立つことになるとはあっぱれである。



あ っ ぱ れ じ ゃ ね え し 



責任を感じたのか、昨日タミオ君は私がお風呂に入っている間に夜ご飯の洗い物をしてくれた。
調子が悪い時にやらなくてもいいよ、と途中で止めたけど 最後までやってくれた。

洗い物中に若干不調がぶり返したようで、結局タミオ君はお風呂に入らずに寝てしまったけど

今朝、ついに平熱に戻った体温計を見て
歓喜の舞を踊ったのは言うまでもない。


まだ本調子ではないだろうし
熱が下がったところで保菌はしてるから
もう少し別居生活は続く。


別居生活は続けるけど
ちゃんと会話ができて、自分の気持ちも伝わって、少しだけどタミオ君の気持ちも聞けて 心が落ち着いた。


触れ合い不足による情緒不安定 という言葉で片付けてしまってはいけない気はしてる。確かに触れ合い不足だし、それによる心の寂しさが埋まっていないことは事実だけど、私ももう少し自分のメンタルをコントロールしながら大きな心と愛情で接することができるように なりたい。


所詮他人である。
無償の愛で支え続けてあげられるほど、私は神様じゃなかったし
きっとタミオ君も神様じゃない。

話し合いができたタミオ君に
『やっと人間に戻ってくれた気がする』と、思わず言ってしまった。

会話ができるようになったタミオ君との時間を、少しでも長引かせたい気持ちでいっぱいだったけど


あと少しの辛抱だ。



安心して寄り添えるようになるまでは
共倒れの危機も乗り越えるべく、感染対策と安全管理
心の距離までもが離れないように、頑張ろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?