兎る虎

たったひとつの詩を求めて、試作る。

兎る虎

たったひとつの詩を求めて、試作る。

最近の記事

「 散歩 」

用水路に流れる 水は 水のりみたく、 何層もの膜で ひかりを遮っていて 不純物まんてんだ だのに どこか 何カラットの輝きを 映していた

    • 「 次の季節でも 」

      桜、お前は春になると 一所懸命に命を咲かせる 私は一瞬のお前だけを捉えて 持て囃すけれど 過ぎ去った春のなごりにだって お前は次の季節の準備に大忙しだ 一所懸命に命を実らせる 私と同じ 四季を生きる木々よ花々よ いっしょの季節に 喜怒哀楽で応えてくれて 生きて、いてくれて ありがとう

      • 「 日常とさけび 」

        今朝も聴こえた お風呂から、洗濯機から 生活にまぎれた 助けて、とふり絞るような 不気味な音 夜が明けると、 昨日の私たちは用済みで 日常のなか 違う何かが 成り変わっているのではないか そんな予感 今日の私が 私らしく寝坊して 私だけはもとのまま、という わけでもないのに 他人がいっそう怖くなる いつか、いつかの好奇心で 手を伸ばしてしまったとしたら 今日の私もいなくなるのだろうか ああ それはとても さびしいような、気がする

        • 「 静寂 」

          目を、耳を澄ましてみる 色とりどりの小人の演奏会 時計が針を刻むように 気付いて、と 音を立て始めるのがわかった いままで気にも留めなかった 彼らの息づかい それはまるで 彼らには彼らの 定めた、 六十秒があるようにも思えて 時計を失ったら 僕らも その日暮らしのばか騒ぎ、に きっと 夢中で取り掛かれる 仲間はずれなんて、いない 一生を

        「 散歩 」

          「 日々 」

          鏡にうつる お髭ひとつ 生長する命を踏みつぶして 今日も、生活がはじまる 誕生を祝福できないこと、 死は事実になりさがったこと 洗面台に振り返るだけで 当たり前じゃないか、と囁かれる 今日の僕は誰の何を奪ったのか それすら定かではないけれど 人の迷惑、なんて言葉 生きるためには言えなくなった いただきますと、ごちそうさま おはようと、おやすみ なくしてしまった 生活のおと

          「 日々 」

          「 またね 」

          齢二十を超えて 疎遠になって あなたの元気でね、という 言葉選びに さよならの重みを感じた

          「 またね 」

          「 灰のなかで 」

          誰も彼もが踊っている 熱といっしょに踊ってる 燃え尽きるまでの一瞬を 逃れようもない抗いようもない 生まれたときから そう決まっていたのだ いや 熱のない暗がりを 確かめたくはないから そう決めたのだったか 灰のなかを夢にみる 線香花火のような 星を追うのではなく、 ただひとつの燻る宝物を 持っていられたのなら、と いまはまだ 熱のなかで

          「 灰のなかで 」

          「 ひかり 」

          誰かひとりに 倚りかからぬ夜がほしい 醒めたさめた 朝がくる あの、陽だまりに眩るまでは なければ、を手放して いきたここち

          「 ひかり 」