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ファッション性と実用性の両立


両立は容易ではない事

最近の繊維製品購買動向を見るとファッション性を重視した製品が購入される傾向



衣料品を購入する際の大きな要因であるファッション性は、目に見えるものであるが、実用的なファッション性は目には見えない。

この目には見えない実用的な品質にも配慮することこそ、衣料品の企画製造をする上で非常に重要である。

ファッション性と実用性は相容れない事(相入れない)がある。具体的な例としては、

①装飾性を表現するためにラメ糸を使用すると、肌への刺激が問題となる。

②淡い鮮やかな色目の生地は魅力的であるが紫外線による変色を起こしやすい。

③袖部に皮革を使用し身頃部にウールのニット素材を使用した衣料はデザインとしては斬新であるが家庭では洗濯ができないなどがある。

新製品の企画にあたっては、見た目重視のファッション性だけでなくて、着用や取り扱いなどの消費過程を想定する必要がある。素材、加工方法、縫製繊維などの選定の際には、繊維製品品質管理師が参加、関与し企画担当者にプラス面とマイナス面がある、技術の限界がある事や使用時の取り扱いの利便性を考慮する必要性を認識してもらう事が重要である。
その上で、ファッション性と実用性が両立する方策を見出すために、必要に応じ素材や加工法の変更、デザインの修正を行う。あるいはデメリット表示や注意タグをつける。
近年グローバル化が進み、世界各国の素材を使用する事が増加している。諸外国の素材を使用したり、製品を購入したりする場合には現地の品質管理体制をチェックし日本の市場に合致した品質保持の徹底を図り指導を強化する。また日本国内への受入時のチェック体制を強化する必要がある。
店頭の販売員が実用的な品質に関わる知識を持ち消費者に適切な情報が与えられる様に教育する事も繊維製品品質管理師の役割である。

繊維製品のファッション性を重視する事で消費者が抱く品質水準の間に差が生じる原因は二つある。一つはファッション性を強調するあまり実用性が劣ってしまう事が技術的な限界のため不可避だとしても(例えば鮮明色の変退色)その事を消費者が知り得ない場合である。

この場合はその製品のデメリットについての注意喚起を促したり、販売時のコミニュケーションにより正しい取り扱い方法を伝達する事で消費者があらかじめ製品に関する情報を得た上で選択できる様にする、このことにより期待とのギャップを埋める事が可能になる。
もう一つは本来ファッション性と実用性を両立できるにも関わらず最適でない水準の製品が市場に出てしまった場合である。これは製品が生産される過程で、経営、企画、製造、品質管理、販売の部門が連携せず、さらに市場における期待などの大切な情報が共有されず、また監督もされない体制において生じる。この場合はその製品を目指す品質水準についての情報を各部門で共有できる様な体制を構築する。そうする事で消費者の期待にそぐわない製品を市場に出す事を回避し、消費者の想定する品質水準との差を埋めることができる。
繊維製品品質管理師の果たすべき役割として前者の原因に対してはいかに消費者に分かりやすく伝えるか検討し具体化する。後者の要因に対しては企画段階で消費時におこり得る問題点を指摘し、必要に応じてデザインや素材、加工方法あるいは縫製仕様などの変更を提案する。さらに生産ライン上の各工程のパイプ役として全体を把握した上でスムーズかつ適切な情報の共有化を推進する、

消費者がファッション性を重視すると言っても実用性を求めていないという事ではなく当然備わっていると思っている。製品の実用性を検証する術を持ち得ない消費者に対して期待に添えるだけの力を発揮することがTESに求められる。


以下

新しさを強調して織物とニットを組み合わせた製品あるいは生地を横方向に使った製品が着用や洗濯を繰り返すことによって形態変化を起こす

ファッション性を強調した蛍光色や淡色で鮮明色の製品が店頭ディスプレイ中の紫外線により変色、あるいは洗濯後日干ししたら変色した

合成皮革、人工皮革を使用した製品はクリーニングできるがポリウレタン樹脂が計時劣化を起こし剥離

柔らかさを強調した製品で、着用によって縫い目滑脱やスリップ、ピリング(毛玉)を生じやすい

光沢素材のラメ糸(ナイロン素材のフィラメント)は皮膚障害をちくちく感を発生する可能性がある

皮革と生地の組み合わせた製品はクリーニングが不可能、水洗いできない夏物衣料をドライクリーニングに出すと汗成分が残留し変色しやすい。対策として原則皮革製品はクリーニングできないので、企画段階で皮革を取り外しできるデザインに変更する

セルロース系繊維のプリーツ加工やシワ加工したものは着用時や、洗濯時、雨に濡れたりするとプリーツやシワ加工が消失した。

対策としては企画段階で中止もしくは購入者に携帯安定加工でないことの情報提供を心がける

光沢や風合いをもとめて維度の低い糸使いや浮きの大きい織り、目よれやスナッグ毛羽立ちの発生しやすい生地を使用する場合外観や風合い等が類似で物性がより良い他の素材への代替

インディゴ染料による染色品は摩擦堅牢度が低い

反応染料による染色品は計時劣化で加水分解が起こり色なきや逆汚染が発生しやすい

カシミヤやアンゴラのニット製品は毛玉や抜けが発生しやすい

シルク、レーヨン、リヨセルはフィブリル化しやすく白化や毛羽立ちが生じやすい

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