ファシアとは(25)--- New york times誌で掲載されたファシアの記事---

以前、詳細レポートするかも?と言ったまますっかり忘れてしまっていた2023年にNew York times誌で取り上げられていたファシアについての記事のツッコミをいれます。以下のリンクでアカウント登録をすると(サブスクしなくてもいいみたいです)記事が読めますので、DeepL等で日本語訳して読んでみてください。

最初の数段落は
1「ファシアは体の組織を包む膜だ」
2「そのファシアは医学界で長い間見過ごされてきた」
3「ファシアには神経が分布しており、ファシアの”異常”が
  痛みの原因になる」
4「だからファシアを”治療”すれば、痛みの治療になる」

というこのブログではお馴染みのことが述べられており、日本のおバカ治療師ちゃん達が



「ほらっ!だからファシア(筋膜)のリリースをしないと
いけないんだよ!」


とドヤ顔で日々お客さん、患者さん達に宣っている事柄でもあります(笑)


ツッコミどころとしては3の「ファシアが痛みの原因になる」というところです。確かにそうかもしれませんが、過去のブログ「痛みについて勉強し直す」シリーズで紹介してきたように、痛みは抹消からだけで起こるのではありません(と、超大雑把に書いておきます。これで意味のわからない人は過去の記事を読んでみよう!)。
なので、短絡的に「ファシアのリリースが重要だ!」とはなりません。


で、次に紹介されているのが、Steccoの説(Fascial manipulation)で、

5「体を動かさないでいると、ファシアが固まってしまう」
6「すると固まったファシアが他の部分のファシアを引っ張り、痛みや
  他の問題を引き起こす」
7「だから(倉野の補足:Fascial manipulationで)リリースしよう!」

です。5については確かにそうですが、かといってそれが痛みに直結するわけではないことは明らか。だって、姿勢が悪い(というか真っ直ぐ、左右対称でない、猫背など)な人が必ずしも痛みで苦しんでいるわけでもないし、先ほど述べた過去ブログ「痛みについて勉強し直すシリーズ」で紹介しているように、痛みの原因はそう単純なものではありません。(てか、過去ブログ読んでない情弱は読めよ、笑)

「ファシアが固まってしまう」というのは過去のブログでも紹介したGil Hedleyの「Fuzz Speech」が元ネタというか元凶と業界では言われていて(笑)、多くの誤解を生み出したとGil先生は非難を浴びています。


6の「ある部位の硬いファシアの部位が他の部位を引っ張る」というのはこの業界の大間違いの定説で、例えばこの動画が象徴的なやつです(英語ですが下の画像だけで意味がわかると思いますので見る必要ゼロです、笑)。よくおバカな治療師が「お腹の盲腸の手術の傷跡が引っ張って、反対側の肩(でもなんでもいいのですが、笑)に影響している」とか、「右肩の50肩は左の骨盤の捻れが原因だ!」とか、まあ業界では超あるあるBSです(笑)。


ちなみに記事でインタビューに答えているSteccoのFascial manipulationも業界では悪名高く(笑)、要は彼らの仮説に基づいて(そうです、科学的に証明されていない仮説です。)肘とかで思いっきり擦り上げるメチャ痛マッサージです。以前のブログでも紹介したように効果のエビデンスもないですし、そもそもファシアのリリースに必要な張力は腸脛靭帯で925Kg、足底筋膜で460kg、他の多くのファシアが385kg(three dimensional mathematical model for deformation of human fasciae in manual therapy, Chaundhry H & Schleip R, 2008)なので、どれだけ力をかけたらファシアがリリースされるのかを考えるとリリースが非現実的なことは明らか。

で記事の結論として、

8「でもフォームローラーやマッサージ器の使用は長期的効果が不明」
9「フォームローラーやマッサージ器と同様、カッピングや
  マイオフェイシャルリリースも効果のエビデンスはない」
10「なので、活発的な生活(色々動く)のがファシアにとって一番いい」

で、いろんなエクササイズ(ダンス、ウェイトトレなど何でもいい)をやろう!ですが、これは当たり前。過去のブログ「慢性痛治療に必要なこと」で紹介したことのごくごく基本的なことの一つです。そう、痛みの治療に必要なことのほんの一つです。なのに、なぜこの業界のおバカちゃん達は「リリース」の一点突破で商売をしているのでしょうか?(笑)もし本当に患者さん(と呼ぶことにしますが)の痛みを何とかしてあげたいのなら、もっとやることがあるだろ!って思います。

最後にコメント欄をざっと眺めてみましたが、案の定「Ida Rolfのロルフィングを紹介していない!」「Tom Myersのアナトミートレインズを紹介していない!」「ファシアを伸ばすにはヨガがベストだ!」などのありきたりなコメント多数でした。


てか、痛みの治療はそう単純なものじゃないんじゃ?


ああ、私も短絡的な発想で考えられる「ある意味幸せな」人間になりたい〜(笑)。

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