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ファームエイジ これまでの実績

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【放牧の専門家集団】ファームエイジ㈱が過去に取り組んだ事業などをまとめています。
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記事一覧

【NZ北海道羊協力プロジェクト】日本の羊文化を守っていくために

以前、「ニュージーランド(以下、NZ)北海道酪農協力プロジェクト」について、少しお話ししたかと思います。 https://note.com/farmage/n/n7e9db95a76cd 北海道の酪農家に先進的な放牧ノウハウを取り入れてもらうことを目的とし、2年間の徹底的な調査と2年間のコンサルを行った結果、農業所得が3倍、労働時間が3分の2になったという内容です。 今回は、その羊バージョンとして現在も進めている「NZ北海道羊協力プロジェクト」について、簡単にご紹介させ

日本で初めてNZ放牧牛の凍結精液を輸入

私の背中を大きく押してくれたのは、別海町の今井さん(酪農家)でした。 今井さんとは創業前からの付き合いで、私がニュージーランド(以下、NZ)に放牧を学びに行く際も、何度かご同行いただきました。日本の放牧普及を共に推し進める同志です。 そんな彼に言われました。「NZのような牛を日本でも飼えるようにしてほしい。お前が入れないで誰が入れるんだ」 そこから、放牧型の牛づくりへの長い戦いが始まります。 NZは酪農が盛んで、乳製品は国の主要な輸出品目の一つとなっています。 そんなN

小笠原諸島(父島)で世界初のプラナリア用電気柵を開発したときのこと

小笠原諸島が世界自然遺産に登録されたのは、2011年(平成23年)6月。 今回お話しするのは、そのさらに3年前、2008年の出来事です。 ミッション:プラナリアから島を守れある日、会社に一本の電話がかかってきました。 「プラナリアをなんらかの手段でコントロールしたいのですが、できますか?」と。 これだけでは何のことかさっぱりわからないと思いますので、順を追ってご説明しましょう。 まず、小笠原諸島には100種以上のカタツムリ(陸産貝類)の仲間が生息しており、そのうち9割以

知床五湖の電気柵がつなぐ、ヒグマと人の共生関係

クマ用電気柵への挑戦「ヒグマの生息する知床五湖に電気柵を」という話が立ち上がったのは、確か2004年(平成16年)のことだったと記憶しています。環境省からの依頼でした。 人間が知床の自然の中に入っていけるような遊歩道をこれからつくりたい。そのためには、ヒグマが登ってこられないような仕組みが必要である、というわけです。 ここでのテーマはあくまで、「観光客の安全」と「ヒグマとの共生」。 排除のためではなく、なるべくヒグマのあるがままの姿を守りながら、それを安心して観察できるだけ

【持続可能な農を考える】フィールデイズ・イン・ジャパンが再開します

お知らせ 2022年9月17日(土)に、農業と食とエコロジーのイベント、第17回フィールデイズ・イン・ジャパンが開催されます。 詳しくは創地農業21のこちらの投稿をご覧ください↓ 感染症の影響から、実に3年ぶりの開催となります。 これまでは当別町のファームエイジ本社と恵庭市のえこりん村を隔年で会場にしていたのですが、今年は心機一転、道の駅とうべつの外の広場をお借りして行うことになりました。 今年は「グラスフェッドを食べる」ことをテーマとし、グラスフェッド食材を用いたチ

旭山動物園に電気柵を 動物を見つめる者同士の結びつき

はじめに 私が訪れた頃、1994年(平成6年)の旭山動物園は、こう言ってしまってはなんですが、ほぼ壊滅状態でした。 その最も大きな原因は、エキノコックス症です。 経営難に加えて人気動物の病死、風評被害と悪い事態が続くわけですから、園にとって一番のピンチだったのではないかと思います。すべてを払拭して立て直すには、園の動物たちを野生のキタキツネから守る必要がありました。 この「キツネを園内に入れない」対策の一つとして、電気柵の設置をご提案させていただいたところから、ファー

「NZスタディツアー」の目的 やってみること、継続すること

ニュージーランド(以下、NZ)は言わずと知れた放牧酪農の先進国です。 一年中温暖な気候を生かして栄養豊富な牧草を育て、牛や羊などの動物を集約的に、効率よく飼育しています。 輸出品のうち約6割は農林水産品が占めており、特に乳製品の輸出量は、世界でもトップクラスのシェアを誇っています。 そんなNZの放牧を生で見て、触れて、体験型で学んでいただこうという取り組みが「NZスタディツアー」です。 期間は基本的に6泊7日(うち1泊は機内)。本場の土づくり、草づくりや搾乳技術など、多

ニュージーランドと日本&北海道の調印に、実は少し関わっていた話

ニュージーランドと日本が調印を結ぶまで あれは8、9年前のことだったでしょうか。TPP関連の騒ぎが非常に大きかったときに、ニュージーランド(以下、NZ)の新しい駐日大使が北海道にいらっしゃいました。 こういうとき、通常は道知事が対応するのですが、なにせTPPの真っ只中。公の方々はみな記者対策で慎重になっており、ならば民間でなんとかせねばということで、NZと関わりの深い私に声がかかりました。 大使は普通では考えられないほどフランクな方で、「北海道の農業などの実態が知りたい。

「グラスファーミングスクール」の使命

創地農業21が主催する、グラスファーミングスクール。 日本にいながらニュージーランド(以下、NZ)の集約型管理放牧を本格的に学べる唯一の機会として始まったものです。 ここで第一に目指すのは、放牧の知識・技術に加え、商品化、さらには経営全般に精通する、全方位型の“強い”酪農・畜産生産者の育成です。 早いもので、2022年春現在で42回を迎えているスクールですが、参加者の方々の農業に対する想いはいつの年も熱く、主催側も背筋の伸びる思いです。 私たちがスクールを開校するにあた

「創地農業21」誕生秘話

私が代表を務める、「創地農業21」という団体があります。 「地球環境に負荷をかけず生活(経営)として成り立つ農業を世の中に広める」ことを使命とし、「グラスファーミングスクール」を主とした取り組みを行っています。 創地農業21は1995年に発足、1996年より活動を開始しました。 発足当時、私は副会長であり、会長を務めていたのはハンバーグレストラン「びっくりドンキー」の親会社である「株式会社アレフ」の創業者、 故・庄司昭夫氏でした。 庄司社長は非常に勉強熱心な方でした。

国内初「エゾシカ対策用電気柵」誕生秘話(後編)

この記事は、先週に書いた「国内初『エゾシカ対策用電気柵』誕生秘話(前編)」の続きとなっています。 まだお読みになっていない方は、よろしければこちらからどうぞ↓ 貢献の実感、目の前の一人から シカ用電気柵の商品化に成功してすぐ、私は車で美幌峠を下っていました。すると、周りを森に囲まれたその場所に、大きな畑があるのが見えました。 「いかにも野生動物の被害に遭っていそうだな」と思った私は、すぐに車を止め、畑の隣の民家へと足を運びました。飛び込み営業です。 応対してくださったご主

国内初「エゾシカ対策用電気柵」誕生秘話(前編)

1985年創業当時、エゾシカによる北海道の農作物の被害額は約1億円と言われていました。 現在(約40億円)と比べるとまだ軽い方だと感じられるかもしれませんが、1980年代といえば、メスジカの狩猟禁止などの鳥獣保護政策が先立ち、シカの個体数が急激に増加し始めていたころ。 農業に携わる人たちが段々と、危機意識を持つようになっていました。 放牧用の電気柵の販売営業に回っていた私も、もちろん例外ではありません。エゾシカ被害は生産者さんの経営、生活に大きく影響します。被害防止のために