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【敵味方どちらも供養】 五重の塔 非公開内部を見て

建物ってなんだろう…
その時はあまり感じなかったが、今感じることがある…過去の体験を思い出した…

青森県弘前市にある金剛山最勝院。
年末年始は初詣で賑わい、夏の宵宮では普段開扉しない社や堂の一部を見せてくれる場所だ。

この最勝院には一年に一度、出向く。
寺社仏閣の建築や先人歴史に昔から多少興味があるのと、建築に関わる複数のゆかりの堂や先人石碑などもあるからだ。そして過去には五重の塔の内部も拝観できた体験もある。

建築とつながる聖徳太子の堂

大工の神様と言われ、丸太から角材を切り出す際に使用する指矩(さしがね)を、大工に教え広めたとされる小さな聖徳太子堂もある。指矩は曲尺や指金とも呼ばれ、現代も大工さん達が使用している道具の一つだ。

聖徳太子堂


仁王様の修復

2017年、最勝院入口におられる仁王像の目が経年劣化で落下。調べた所、2体の像は目だけではなく全身がバラバラになる寸前とわかり、文化財と同等に解体修復され、2022年末に特別公開された。
過去から修復寄付金箱に賽銭を入れていたので、気になり特別公開を拝観、間近で迫力ある姿から、作った先人の凄みに感動した。


五重の塔

複重塔は一般的に、塔内部中心に巨木心柱がある。
心柱は基礎に固定されておらず、地震で揺れた際には振り子のように動いて揺れを抑え、倒壊しないようバランサーの役割を果たす。揺れに対して「剛より柔」のイメージだ。昔の建築技術や知恵は本当に素晴らしいと思う。とある専門書には、平安〜室町時代の木造建築技術は高度なものだった…と書かれていたのがいつも心に残っている。

最勝院 五重の塔


塔の非公開内部へ…

非公開の五重の塔に20年ほど前、貴重なきっかけで特別に10数人の一員として、一階内部を拝観することが出来、中に入らせていただいた。

人間と同じくらいの大きさの人形(ひとがた)が十数体、入ってきた扉方向の南を向いて、数列に並んで立っていた。

開けられた扉から光が入り、人形が照らされている…
並んでいる人形(ひとがた)は、たしか…僧侶風の一般民のような感じで…武士や兵士ではなかったと記憶している。規模は違えど、中国の兵馬俑坑のイメージに近い印象だった…。


最初は少しこわさを感じたが……どこかさみしげに祈っているような雰囲気も感じた…。

五重の塔は、今から400年超さかのぼった時代の藩祖が地域統一の際に戦死した「敵と味方双方」を供養するために、後の藩主により建立された。祈っているように感じられたのは、この背景からだろうか…。


思い馳せる

建物とはなんだろう…?
建物に関わる仕事とはなんだろう…?

非公開内部を拝観した歳はまだ若造30代前半。
サラリーマンを辞め自営になる前の時期。
いわば…鼻垂れ小僧の視点でしか五重の塔内部の機会を感じられなかったんだと、50代になった自分が感じている。

敵味方の戦死者双方を供養するという意識が
どれほど貴重で純粋で強いものか…
どれだけつらい事実があったのか…
その願いの建物を作るという仕事を、当時の大工はじめ職人はどんな気持ちで技量発揮したのだろうか…
形になっていく建物、そして内部のひとがたを作って人々はどんな思いを願って未来にどんな思いを託したのか…

知りたくてしょうがなくなる…


建築業界に携わるものとして、
個々の満足や利益や都合で建築そのものを
単なる道具や手段化していないだろうか… 
技量や技術の価値を、関係ないと人ごとにして
衰退させている可能性はないか…
ものづくりや手仕事の価値をどれだけ真摯に考え、継承しようとする意識を持てるだろうか…
少なからず…心の片隅にこのような敬意を
持ち続けることは、建築や建築に関わる仕事に
感謝するために必要な視点だ。


少なくても…
私には私なりに出来ることがあると信じて
建築の仕事をしていこう。

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