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【活動報告】第14回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会

日本のプライマリ・ケアを牽引する学術団体「日本プライマリ・ケア学術大会」の第14回学術大会が5月12-14日に愛知県で開催されました。

普段ファミラボに関わっている方々も家族支援・家族志向のケア関連の企画・運営に携わりましたので、報告致します。

学会合同シンポジウム『家族療法家と考えるプライマリ・ケアの現場における家族志向のケアの可能性』

企画責任者:若林英樹(三重大学 総合診療部/亀山地域医療学講座)
                           児島達美(KPCL:Kojima Psycho-Consultation Laboratory)

日本プライマリ・ケア連合学会学術大会と日本家族療法学会の合同シンポジウムが行われました。

座長:
上別府圭子(国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科家族看護学領域)
松下明(岡山家庭医療センター 奈義・津山・湯郷ファミリークリニック)

講演:
①プライマリ・ケアの医療現場における家族支援・家族志向のケアの実際
宮本侑達(ひまわりクリニック)

医療現場における家族支援・家族志向のケアの現状を事例の紹介を含めて紹介。Doherty, Bairdらによる家族介入モデル段階のうちレベル4(家族アセスメント・家族カウンセリングの実践)が日本ではまだまだ行われておらず、家族療法家と家庭医/総合診療医の教育面での協働の重要性を結論に訴えられました。

②プライマリ・ケアと家族支援、家族療法
若林英樹(三重大学 総合診療部/亀山地域医療学講座)

家庭医/総合診療専門研修における行動科学/家族志向のケアの現状と課題を提示された上で、国内外の家庭医と家族療法家のコラボレーションプログラム事例を紹介。これから望まれることとして、1. 家族志向のケアについての研修目標の設定、2.指導者の確保、養成、3. カリキュラムの開発、4. 医学部カリキュラムにおける行動科学、メンタルヘルスの強化を述べられました。

③精神科外来で活用している家族療法技法 -二つの家族へのアプローチ-
渡辺俊之(渡辺医院/高崎西口精神療法研修室)
前日本家族療法学会会長。自身の精神科外来での家族療法の実践を事例をもとに紹介され、特に患者を実際に取り巻く「現実の家族」と、心に存在し影響を与えている「心の家族」へのアプローチをそれぞれ紹介されました。プライマリ・ケア領域では、家族が同席することや自宅に行って家族の中に入ることでの家族理解ができる利点があるため、家族療法の理論や技法が大いに活用できるため今後の教育面での協働の重要性を述べられました。

④医療チームにおける家族療法モデルによる心理士の役割 -心身医療現場での経験から-  児島達美(KPCL:Kojima Psycho-Consultation Laboratory)
現日本家族療法学会会長。自身の心身医療現場での経験を交えながら心身医療と家族療法の接点の歴史を語られ、Diseaseとillnesが医療と家族をつなぐキーワードになること、協働の実践例としてメディカルファミリーセラピーを紹介されました。家族療法の医療現場への実装に向け、家族療法の誤解や偏見の改善、医療制度/経済面からみた家庭医や家族療法の再配置、現代日本の多様な家族構造の著しい変化への対応が課題と述べられました。

質疑応答:
指定質問者として、村山医師より「医療者が自身の家族を振り返ることの有用性と方法はどのようなものか」、河田医師より「学会単位として、家族療法学会と協働の前に心理士全体との協働ができていないが、どのような順序が良いのか」と質問がありました。他に「家族を見る上での自身のバイアスにどのように気がつけば良いのか」などが質問がありました。

所感:
印象的だったのは、どの先生方も「家族療法というと家族を治療する権威的で難しいと思われるが、それが本質ではない。その思考や技法を普段の家族理解や支援に活用することが何よりも大切なこと」と述べていたことが印象的でした。今後その活用を家族志向のケアという形でさらに深めていきたいですし、日本でも家族療法家と家庭医のコラボレーションが進む兆しをみたシンポジウムでした。(宮本)

シンポジウムの様子

インタラクティブセッション『ファミカンを体験してみよう!~ケースカンファレンスから学ぶ家族志向のケアの実践と指導〜』

企画責任者:田中道徳(岡山家庭医療センター)

ファミラボメンバー7名で家族志向のケアを事例検討から学ぶ「ファミカン(ファミリーカンファレンス)」を学会で開催しました。

事例を提示し、フロアの先生方のグループディスカッションをメインにしながら、ファミカンを体験してもらう企画。

40席限定の企画で、おそらく20名くらいしか参加者がいないのでは、と考えて、30枚しか資料を用意しませんでしたが、いやはや始まる前からたくさんの方に来ていただき、まさかの立ち見まで来ていただける状況。約120名くらいの方に参加いただけた大盛況の企画となりました。

アンケートも非常に好評で、家族志向のケアを大切に思っていただける人がこんなにいることに感動しました。「知識面もっと教えて!」とか「こんな企画をもっとやってほしい」という熱い思いが込められたメッセージもいただきました。皆様の熱い思いを受け取り、ファミラボ一同さらに熱い思いで家族志向ケアを広めるべく燃えました!

これからも頑張って行きます! 次の企画をお楽しみに!(田中)

当日の会場の様子

ポスター『家庭医によるジェノグラムワークの実践と今後の展望』

久保田希(河北ファミリークリニック阿佐ヶ谷/にじいろドクターズ)

支援者自らの家族を家族図を用いて振り返るワーク(ジェノグラムワーク)を総合診療専攻医2名に行った実践報告。行なったのちの参加者の満足度は高く、自己覚知として有用であり、今後もワークの機会提供を行いたいと締めくくった。

ポスター発表『プライマリ・ケアにおける家族志向のケアの学習目標の考案』

宮本侑達(ひまわりクリニック)
家族介入モデルを参考に自由にグループディスカッションを行ない、キーワードを抽出し、家族志向のケアのラダー式学習目標を作成した報告。今後、国内外の家族支援の学習プログラムの調査、日本の家族支援の実態調査、本学習目標を基にした教育プログラムの実装・評価が必要と締めくくった。

最後まで読んでくださりありがとうございます!

シンポジウムに関しては、6月中旬-8月31日までオンデマンド配信にて視聴可能、ポスターはEポスターにて随時閲覧可能です。是非下記リンクより参加登録ください!

https://jpca2023.org/

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●お問い合わせ:https://forms.gle/SoRrCeCswAqv4dxf6

文責・編集:宮本侑達、田中道徳


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