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【活動報告】日本家族看護学会第30回学術集会

日本家族看護学会第30回学術集会が9月9日に大阪大学吹田キャンパスで開催されました(現在オンデマンド配信中)。

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筆者(宮本)は「家族看護と医師との連携」という交流企画を行いました。また、他企画もとても勉強になるものばかりでしたので、その感想もお伝えします。

日本家族看護学会(JARFN)とは

日本家族看護学会(JARFN)は、家族の健康を支援する「家族看護」の臨床・教育・研究活動を積極的に行う学術団体です。学術団体としての歴史は古く、国際家族年であった1994年に設立されました。まさに、一般医療分野における家族支援の学問の先駆け的存在です。

看護学における家族支援の実践の歴史は、戦後の結核対策での家庭訪問指導まで遡ります。その後、子育て支援を中心に実践され、在宅医療の普及によって高齢者の家族支援にも実践の幅を広げました。

学問としての深まりもあり、その実践の土台に、「家族モデル/理論」「家族社会科学理論」「家族療法学」が結びついて「家族看護学」という学問が成立しました。

医療分野における家族支援の学問の先駆け的存在で、その活動は非常に参考になるものばかりです。

交流企画「家族看護と医師との連携」

プライマリ・ケア領域における家族支援の臨床・研究の先駆者である竹中医院の竹中裕昭先生にお声かけいただき、企画に携わりました。

企画に先立ち、以前の学術大会で看護師から集めていた「看護師から医師への要望」を医師にフィードバックし、ディスカッションを行いました。

今回は、医師間でやり取りした内容を看護師に開示し、それをもとにしてグループディスカッションを行うという企画を行いました。

主なテーマは以下の2つです。

①医師に家族支援に関して聞いてみたいことは何ですか?
②医師に家族支援に関してもっとこうして欲しいことは何ですか?

当日は40名近くの看護師さんが参加してくださり、医師との連携の重要性に対して強い熱意を感じることができました。グループ・ディスカッションも大いに盛り上がり、普段医師に対して感じていても言えないことがたくさんあると実感することができました。

多くの看護師が医師とのコミュニケーションが「一方通行で困る」という意見を持っていました。それは患者・家族に関することだけではなく、看護師を含めた他の職種とのやり取りに対しても同じように感じており、看護師が医師とは違う視点で患者・家族をみているのに、それを伝える場がないことや、伝えても相手にしてもらえないと感じるとのことでした。

システム理論から考えると、患者・家族との「治療システム」や看護師などとの「医療システム」での相互作用がうまく噛み合っておらず、機能不全に陥っているものと感じました。システムがうまく機能できるように、医師は双方向に対話をしていくことが大切と痛感いたしました。

私自身も肝に銘じて、今後の実践に活かしていきたいと思います。

当日のグループワークの様子

また、竹中先生は、今回の企画で出た意見を学会や医師会を通じて医師にフィードバックするだけでなく、看護師側にも共有されるとのこと。これをシステム理論的に捉えると「医師サブシステム」と「看護師サブシステム」の間に入って、竹中先生が翻訳/仲介して学会という集団単位で両者の連携を促進しようとしているんだと感じました。

リフレクティングチーム的(新たな視点を提供してチームの振り返りを促す方法)でもあり、とてもおもしろい取り組みだな、と思いました。今後のさらなる活躍が期待されます。

この取り組みの最新情報は、直近で開催される日本プライマリ・ケア連合学会の春季・秋季セミナーでのフィードバックを予定しています。興味を持たれた方は、この機会にぜひ参加を検討してください。

参加しての感想「医療現場での家族支援の教育・研究」

他にも興味深い内容がたくさんありました。特に、家族支援を現場でどのように教育していくかに関しては、かなりのノウハウや研究がなされており、本当に勉強になりました。参加した内容を簡単にご紹介します。

  • Dyadic Approach:Dyad(二者関係:患者-家族)のへのアプローチFriedmanは家族看護を5段階に整理しました。
    ①患者中心のアプローチ
    ②一家族員へのアプローチ
    ③二者関係(Dyad)へのアプローチ
    ④システムとしての家族へのアプローチ
    ⑤社会の構成要素としての家族へのアプローチ
    家族システムへの介入の前に、二者関係へのアプローチを重視するというところがとても新鮮でした。

  • 家族環境地図:視覚的かつ包括的に家族を把握するアセスメントツール
    家族看護ではカルガリー・モデルによるアセスメントが有名ですが、機能的側面(コミュニケーションパターンなど)に特化していました。そこに構造的側面(家族内のグループ、支援体制など)も含めた包括的かつ視覚的にわかりやすいツールとなっています。

  • 家族看護実践力を伸ばす研修計画案に役立つ教育ツール(現任教育版)
    家族看護ではすでにたくさんの教育実践がなされております。それを難易度別のグレードに分けて体系的に教育するツールが開発されました。看護師にとどまらず、一般医療現場でどのように教育するかについて参考になると思いました。
    https://jarfn.or.jp/work/doc/kyoiku-sokushin/kyoiku-tool-202203.pdf

企画者での集合写真

長い間、私は家族カウンセリングや家族療法を学び続けてきました。しかし、その知見と一般医療の現場での実践との間には、ややギャップが存在しており、このギャップを埋めるために翻訳が必要だと常々感じていました。

そして、今回学術大会に参加してみて、このギャップを埋め、一般医療の現場での翻訳役として長年にわたって活動してきたのが、家族看護の分野だと実感しました。

このような気づきをを得る貴重な機会をくださった日本家族看護学会の皆様、竹中先生、心より感謝申し上げます!

今回の経験と学びを通して、家族支援の重要性とそれを実現するための連携の大切さを再認識しました。一人ひとりが持っている専門性や視点を生かしながら、より良い医療を追求していくために、今後も情報交換やコラボレーションの場を増やしていきたいと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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執筆:宮本侑達(ひまわりクリニック)
編集:田中道徳(岡山家庭医療センター)


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