見出し画像

シンポジウム「各国でどのような家族療法のトレーニングを行っているのか」報告(日本家族療法学会第39回淡路島大会)

日本の家族療法を牽引する学術団体「日本家族療法学会」の学術大会が9月16日から18日にかけて淡路島にて開催されました。

ファミラボ運営顧問である若林英樹医師が国際交流委員会によるシンポジウム「各国でどのような家族療法のトレーニングを行っているのか」(2022年9月16日開催)に登壇しました。若林医師の報告より紹介します。

シンポジウムの概要

シンポジウムでは英国でトレーニングを受けた森野百合子先生、田村毅先生、米国でトレーニングを受けた私と小笠原知子先生から、各国の教育の特長、チャンスの見つけ方等についてプレゼンしました。大森美湖先生、大西真美先生からは日本から見て、海外にどんな期待があるのかについて指定発言がありました。さらに、英国よりPercy Aggett先生とRachel Watson先生、米国よりMax Zubatsky先生から、各国の家族療法とそのトレーニングの特長について、動画での講演があり、その後当日会場参加者と討論を行いました。

若林医師の報告・発表

私の発表では特に、総合診療医としてどのように家族療法に関心を持ち、留学の機会を探索したのかについてお話しました。

私が総合診療の道に入った医師7年目の頃、家族アプローチを竹中裕昭先生より学び始め、実際に活用してみるとうまくいったケースと、かえって大変になってしまったケースも経験し、さらにどうすれば学ぶことができるのか、当時の総合診療部教授、伴信太郎先生にご相談しながら探索しました。当時アライアント国際大学の臨床心理日本校が開設されるという広告を見て、連絡を取ったところサンディエゴ大学のTodd Edwards先生を紹介していただきコンタクトしました。また、ロチェスター大学で家族志向のケアを研修してこられた松下明先生に連絡をとり、同大学のSusan McDaniel先生を紹介していただきコンタクトしました。いずれもメディカルファミリーセラピーを先進的に進めている大学でした。留学先候補をこの2つに絞り込み、見学に行ったり、集中セミナーに参加し準備を重ね、サンディエゴ大学大学院に何とか入学することができました。トレーニングの内容やカリキュラムについては既に報告しておりますので1)2)、ここでは省略します。

実際の現場では、プライマリ・ケア、在宅医療、小児・思春期支援などニーズが高いため、帰国に際して、留学での学びを活かした臨床の場を得ることについては、心配する必要はないと考えました。私の場合は、岐阜大学医学教育センターに助教として入職し、非常勤で在宅医療クリニックや大学病院総合診療科などで機会を得ました。留学前や留学中から国内の機関とつながり、報告、相談を継続しておくことが、留学を終えたあとも臨床、教育活動にしっかりコミットするために重要かと考えています。

また、海外での学び方には様々な形があることを紹介しました。大学院での留学は、経済的にも時間的にもコストは非常にかかりますが、学びや経験は最大かもしれません。しかし、そこまでやらなくても、1ヶ月程度の短期留学や、数日~1週間程度の短期集中セミナーまたは見学、また国際学会への参加などもリーズナブルなコストで、一定の学びや交流が可能です。また、いきなり長期間の留学に出発するわけでもありませんので、その前段階には下見をかねてそのような短期間の活動もお勧めだと思います。

最後に、家族療法とそのトレーニングは各国共通の基盤をもっているため、各々の取り組みからお互いに学ぶことも多いです。ぜひ関心を持っていただきたいと思います。そしてもし関心があれば、何がやりたいのか、どんな貢献がしたいのかできるだけ目標を明確にし、海外での学びや交流をしていただけると貴重な経験になると思います。

参考文献

1)若林英樹、プライマリ・ケアが全人医療であるということ~ 行動科学トレーニングへの挑戦~、日米医学医療交流財 団編、シリーズ日米医学交流No.7、家庭医学・総合診療に みる医学留学へのパスポート、2007, 47-60, はる書房
2)若林英樹、米国大学医への留学経験 異文化の中で学ん だ家族療法、家族療法研究 2010, 27, 75-79

以上、若林医師よりシンポジウムの報告でした。

プライマリ・ケアの現場ではたくさんの家族の相談ごとが持ち込まれ、また家族との関係性が健康や病気に影響を与えていると感じる場面は少なくありません。家族志向のケアに関心を持つプライマリ・ケア医が、家族療法家ともっと協働できるよう、家族療法学会はじめアカデミックな活動を今後も続けて参りたいと思います。

来年度の家族療法学会学術大会は福岡で開催予定です。家族や家族支援について様々な学びが得られると思いますので、関心ある方はぜひご参加ください!

●最新情報はこちらからお知らせします。
Facebook:https://www.facebook.com/familabo113rd/
Twitter:https://twitter.com/familabo_113rd

●オンライングループページ運営しています。(医師限定・無料)
詳細こちら:https://note.com/familabo_113rd/n/nd829c2550aa7

●お問い合わせ:https://forms.gle/SoRrCeCswAqv4dxf6

執筆:若林英樹(三重大学総合診療部/亀山地域医療学講座)
編集:宮本侑達(ひまわりクリニック)/田中道徳(岡山家庭医療センター)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?