堀江圭子

小説書いたりしてます。フィクション多め。 金のインディアン19。 Xしてます。 イ…

堀江圭子

小説書いたりしてます。フィクション多め。 金のインディアン19。 Xしてます。 インスタしてません。 趣味は読書とギターとジムと、、ライブ行ったり、BAR巡りしたり、小説書いたり、最近はカクテル作り始めました。好きなの多めです。 よろしくお願いします。

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性的マイノリティ

「朝井リョウさんの正欲って本があるじゃないですか。あれほんとすごいですよね。マイノリティをすごくよく描いてて」 あの本を、普通の人が読むのと、マイノリティ側にいる人が読むのとでは、感想が結構分かれる。 「めちゃめちゃ好きな本です。あの本に、「水」に性的興奮を抱く夫婦が出てくるじゃないですか。セックスなんてしたことないのに、この世の中を生きていくために2人で協力して、結婚して、なんとか「普通」になろうとしてるみたいな。わたしあれ、すごく理想です」 「あの……なんていうか、

    • 求められるレベル以上を

      夜ご飯を食べながら、この前の配信ライブのアーカイブを見る。 「あんた俺がいるときによくチャラ男見れるな」 「あんただって私がいるときに地下アイドル見てるじゃん」 結局、主人と一緒に見る。 「このマサって人はねー、ライブ面白いの。ちょっと話したことあるんだけどね、インディアンだからすごいサッパリしてて好き。あ、チャラに絡みに行くよ。ウェーイ、チャラー!」 画面に手を振る私。 「へぇー」 「今回現地行かなかったんだけどね。何人くらい客いると思う?」 「俺、KAKA

      • あれから10年

        ウエディング写真撮影。 「もうちょっと顔を寄せ合ってくださいねー」 「やだ! もういいよ。気持ち悪い。やだ」 「えええ!? 奥様、そんな……」 ウエディングドレスを着た花嫁が、花婿と顔を近づけるのを全力で拒否。 慌てるスタッフさん。 私の特性を知ってる主人は苦笑い。 「一回だけ我慢しろ」 「そうですよ。せっかくのウエディング写真なので。今回だけ我慢しましょう奥様」 「我慢」という言葉を使われるほど、顔を寄せ合うのは大嫌い。 顔だよ? 顔に相手の体温が近づくわけ

        • 同じ脚本でも

          推しの役者が出てる舞台によく行く。 恵比寿にあるシアター・アルファ東京という小劇場で舞台を観たとき。 この劇場は、小さいながらもすごく綺麗で、椅子もしっかりしていて、段差もあり、とても観やすく居心地が良い。 そこで舞台を観ていたら、途中から知ってる内容だと気づいた。どこかで観たことある内容。 舞台が終わった。 内容はなぜか知ってたけど、役者の方が素晴らしく、とてもとても楽しかった。この舞台は2回観ました。 劇場を出た後に主人に聞いた。 「なんか今日見た舞台、どっ

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        性的マイノリティ

          好きになった男の子はいつも

          好きになった男の子はいつも縛られている。 小学5年生の頃に好きな男の子は、後ろ手に手を縛られていて、男子トイレの個室に押し込まれていた。 「やめろよー!」と個室の中で叫ぶ彼を、いじめっ子の男子がドアを塞ぐ。 仲間の1人がバケツに水を入れて持ってきて、それを持ち上げて彼がいる個室の中にぶちまけた。 バシャ 頭から水をかぶり、びしょ濡れになる彼。 髪の毛はおでこに張り付いて、たぶん泣いているのだろうけど、全身びしょ濡れなのでよくわからない。 手はうしろで縛られているので

          好きになった男の子はいつも

          会えない人でもよくて

          誕生日は12月24日。 本屋に行って、彼との相性を調べる。付き合えるのか、付き合えないのか、そんな妄想を楽しむ。 彼の好きなブランドはFILA カタカナの「ラ」を反転したようなロゴが特徴で、部活で使う運動靴やウィンドブレーカーはFILAにした。 キャップを被った横顔は、長い前髪で目が見えなくて、そのお気に入りの写真を、週刊少年ジャンプから切り抜いて、生徒手帳に入れて肌身離さず持ち歩いてた。 彼はテニス部で、わたしもテニス部に入りたかったけど、テニス部がなかったのでバド

          会えない人でもよくて

          嘘ついてまで褒める人がいるから

          「今日の舞台、どうでした?」 目の前の可愛い推しに言われて、嘘がつけない私は狼狽える。 「えっと……。いつもより長かったね」 「あ、そうなんですよ! ちょっと長いんです!」 ニコニコする推し。 推しとツーショットチェキを撮り、主人と一緒に小劇場を出る。 出て、周りにオタクがいないことを確認して、口を開く。 「え、ありえなくない?」 「なにが」 「今日の舞台。クッソつまらなくない? 何あれ。まじかよって思った」 「つまらないって言うなよ。合わなかっただけだろ」

          嘘ついてまで褒める人がいるから

          好きすぎると帰る人

          レッチリレッチリうるさいからなんのことかと思っちゃった。なんかケンタッキーフライドチキンにある激辛味のチキンみたいね。 「レッチリとは」で検索したの。 レッドホットチリペッパーズの略で、海外のバンドみたい。やっぱりケンタッキーフライドチキンにある激辛味のチキンみたいよね。 すごいわね。ぜんっぜん知らないんだもん私。あ、なんかの小説に出てきたなぁってくらいの感想。30数年間生きてきて、私のまわりにレッチリが好きな人なんかいなかったし、聴いたこともないわ。それなのに東京ドーム

          好きすぎると帰る人

          見せない美学

          「あんたのアルバム、全部顔見えないな」 推しのライブ写真を貼り付けているアルバム。 主人に言われて改めて見ると、たしかに、ほとんどの写真は顔が見えない。 「わたしさー、極論言えばライブ写真以外の写真見たくないんだよね。自撮りとか加工写真」 「チャラも?」 「ホストんときの写真あるけど超キモいよ。見る?」 「見ない」 「テーブルの前に酒並べてさ、頭の悪そうな男3人くらいと一緒に酔っ払って変顔してんの。ムンクの叫び見たいな顔。気持ち悪い。こういう写真を堂々とアップでき

          見せない美学

          売れていく人

          ライブを3回見れば、ほとんどのアーティストを好きになる。 慣れ。 慣れたことって、気持ちに余裕ができて楽になる。 安心できて、落ち着く。 この人はこんなライブするって分かっていれば、気持ちの準備もできる。 楽しむための、心の準備。 逆に3回見て好きにならなければ、どこかおかしい。 「この人は自分のライブにお金を払って見に行きたいと思うのかな」 「家族や職場の人、好きな人とか大切な人にお金を払わせて見に来てもらいたいと思うのかな」 「その程度のライブパフォーマンスで、

          売れていく人

          父親

           父方の祖父母が暮らす家のすぐ隣に建てられた新居は大きかった。  父と母と兄と兄と私と弟の6人家族。2階建の新居で、2階に4部屋。兄と兄と私と父の部屋がそれぞれあった。母と弟は、1階にある部屋で一緒に寝ていた。  深夜0時を過ぎると、いつも1階から怒鳴り声と悲鳴が聞こえる。「きゃー! やめてよー!」という母の声。ガシャンと何かが割れる音。ドンッと壁が蹴られるような音。  うるさくて寝られない。  いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも。  早く収まってほし

          頑張らなくていいので

          「……というわけで、明日までに企画書書いて提出してください」 「分かりました! 頑張ります!」 「頑張らなくていいですよ。仕事なんで」 「え」 「前年比がこれなんで。目標は103パーセントです。だからこの数字を達成できればいいです」 「頑張ります!」 「だから頑張らなくていいですって」 「え」 「頑張らなくていいので、結果を出してください」 「がんば……。はい……」 「よろしくお願いしますね」 頑張ります頑張ります頑張ります頑張ります頑張ります頑張ります

          頑張らなくていいので

          自分のステージに立つ

          「他人の過去を晒して何が楽しいの? 得意げになって」 「私は自分が見たこと聞いたことしか信じないし、全部読んだ上で関わってるの」 深夜3時頃に1人のアーティストさんから連投されたポストに目が釘付けになる。共通のフォロワーさんがたくさんいて、1、2回リプで絡んだことのあるアーティストさんだった。 どうしたんだろう? 「私はこれからもSさんにしかサポートを頼まない。私は私が関わりたい人としか関わらない」 Sさん……。 背中にスッと冷や汗が伝った。 わたしへの私信ポストだ

          自分のステージに立つ

          直木賞受賞

          「堀江圭子さん、直木賞受賞おめでとうございます」 「ありがとうございます」 「小説家を目指したきっかけがあれば教えてください」 「ギターを5年習ったことです」 「は?」 「ふふ。ギターを5年習ったおかげで小説家になれたんですよ、わたし。ギターの先生には感謝しかないです」 ポカンとするアナウンサーの顔を見ながら、理解に苦しむであろうことを発言している自分がなんとも面白いと思う。 「今から6、7年前ですかね。はじめてギターに触れたその日から、習い始めたギター先生がい

          直木賞受賞

          身内を広げる

          「そのリュック、ジュエティでしょ? あたしもジュエティ好きなんだー!」 BAND-MAIDのメンバーに、まだ普通に接触できた時代。ドラムの茜さんに言われたこの一言で、恋に落ちた。 特典会に並ぶのはあまり好きではなく、でも買ったCDにサインしてほしかったので、彩姫さんやミクさんに人気が集まる中、わたしはいつもMISAを指名して並んでいた。 茜さんと話したことはなかった。 ライブが終わり、特典会も終わり、そろそろ帰るかなぁとフロアを出ようとしたときに、 「そのリュック、

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          魅力がありすぎると引いてしまう

          「なんだ。ライブ行かなかったのか」 仕事から帰ってくるなり、家にいるわたしに向かって主人は言った。 その言葉にプチッとキレる。 「行かなかったんじゃなくて行けなかったんだけど、あきらかに仕事のせいで行けなくなったんだけど」 「ダッシュすれば間に合っただろ」 そう。たしかにダッシュすれば間に合った。でも違う。わたしがBAND-MAIDのライブに行くのは年に1、2回だ。この1、2回に合わせてどれだけ準備すると思ってる。 「BAND-MAIDはあんたが行ってるしょーもない

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