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【#11】“英語好き”を育てる教師のMindset❸ 〜教育をICT化する意味【前編】〜

こんにちは!
Sakaue Wataru | English Teacherです。

英語教師としての「信条」(自分軸)を磨きたい想いから、英語好きを育てるために意識すべき「考え方や視点」(マインドセット)について言語化しています。

前回の記事では、子どもたちの「個」が輝くOutput活動について考察しました。ICTを活用することで、すべての子どもたちが学びがいを感じられる授業子どもたちが「主人公」になる学校の実現に寄与できればと思っています。

詳細が気になる方は、こちらの記事をぜひご覧ください。

今回の記事では、「そもそもICTを活用するメリットは何なのか?」という本質的な問いについて考えてみたいと思います。


1.「教育のICT化」は何のため?


教育をICT化する目的は様々ありますが、個人的には以下の6つを大切にしたいと考えています。数字が小さいほど、優先順位が高いです。

① すべての子どもたちが学びがいを感じられる授業の実現
② 自分で考え、行動する「創造的な人材」の育成
③「情報収集・情報活用」能力の育成
④「協働的な学び」の充実
⑤「ITスキル・知識」の育成
⑥ 授業や業務の効率化

参考資料:文部科学省HP (https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/056/shiryo/attach/1249668.htm)
Google for EducationTM 情報発信サイト G-Apps.jp(https://g-apps.jp/ict-education/ict-purpouse/)

ICTを闇雲に使うのではなく、「何のため?」「誰のため?」と問いかけてみます。そうすると、本当に必要な活用方法が見えてくるのではないかと思います。

つまり、ICTを実際に使い、児童生徒への活用を促す教師の考え方(Mindset)次第で、ICTの効果や意義をさらに高めることができるのではないかということです。

普段、ICTをどんな目的で活用されていますか?

2.「学びを止めないICT」から「学びを加速させるICT」へ


コロナ禍においては、感染症予防対策の観点から、「リモート授業」や「三密」を避けた活動を実現するためにICTが活躍しました。行き先の見えない未曾有の出来事をきっかけに、120年以上大きな変化が見られなかった授業形式や教室の風景にも変化が見られるようになってきました。

特に、1人1台のタブレット端末の導入(教師も、児童生徒も)は、大きな教育変革のトリガーとなりました。導入から約3年が経ち、最初は抵抗感を抱いていた先生や、真新しいシステムにはしゃいでいた子どもたちも、良い意味でその環境に慣れてきているのではないでしょうか(本校や近隣の学校はそんな様子です)。

ただ、ここで1つの疑問が頭をよぎります。
一気に浸透した「1人1台」のシステムですが、その恩恵をフルに活用できているのか?ということです。

先に述べたように、ICTを活用することは、「創造的な人材」の育成、「情報収集・情報活用」能力の育成、「協働的な学び」の充実など、多くの教育効果が期待できます。
では、具体的にどのような実践ができるでしょうか?

3.  ICTで 子どもたちの「エンゲージメント」を高める


少し目を閉じて、今年度担当していた学級の子どもたちを想像してみます。

積極的に意見が言える子、物知りな子、タブレット端末の使い方に長けた子、誰にでも優しく接することができる子、勉強にあまり気持ちが向かない子。色んな子どもたちが共存しているのではないでしょうか。

ICTには、そのような多様な実態を持つ子どもたちのよさを生かしながら、学ぶことの楽しさや面白さ、奥深さを実感できる授業にTransformできる可能性があります。

今年度、よく耳にした言葉があります。
それが「エンゲージメント」です。

「エンゲージメント」とは、「子どもたちが課題に没頭している状態」のことを言います。様々なニーズを持った子どもたちが、誰しも没頭できる課題を用意することは至難の業です。

しかし、子どもたちが夢中になる授業にはいくつかの「条件」があります。

1985年にアメリカの心理学者Edward L.Deci と Richrd M. Ryanによって提唱された動機づけ理論、「自己決定理論(Self-Determination Theory」)」では、「自律性」「有能感」「関係性」の3つの心理的欲求が満たされれば、モチベーションとパフォーマンス、そして精神的健康(=Wellbeing)が向上すると言われています。

子どもたちが持っている「3つの願い」を実現して、心に火を灯しましょう

「自律性」「有能感」「関係性」という3つの心理的欲求を満たしながら、子どもたちの「エンゲージメント」を高めることができたと感じる事業事例を3つ紹介させていただきます。

⑴ 「一人学び」ができる子どもの育成


子どもたちはどんな時に「授業が楽しい!」と実感できるでしょうか。
1つの答えに、「できた!」という達成感を味わえた時が考えられます。

授業の中では、子どもたちの「できた!」を引き出すため、教師は様々な工夫を凝らしています。丁寧に解説をしたり、わかりやすいプリントを用意したり、友達同士で教え合う場面を作ったりします。

ただ、学習で大切なことは、「最後は ”個” にかえす」ことだと考えています。つまり、他者の助けを借りずに、自分で考え、問題解決ができるように育てるということです。なぜでしょうか。

受験や進路選択、社会に出て働くときのことをイメージしてみます。
人生の大切な場面では、自分で考え、行動することが求められます。
自分で課題や改善点に気づき、修正し、よりよい成果を上げることが要求されます。

ですから、授業では他者と協働する力を磨き、互いの良さから学び合う場面を用意しつつも、「自分の力だけでできるようになっているか」を確かめる場面が必要だと考えます。

ただ、自分の課題を客観視したり、解決策を見出したりすることは容易なことではありません。

そこで、救世主となるのがICT端末でした。

例えば、英語学習においては「音読」が大変重要となってきます。
英文の意味や文法、意味のまとまりを意識しながら発音することは、アウトプットだけでなく、ReadingやListeningなどのインプットにも大きな波及効果が期待できます。音読を聞けば、その生徒がどれくらいの英語の力を持っているのか、英語教師なら大体わかると思います。それほど、音読は大事です。一人で音読する習慣がつけば、確実に英語の力は爆上がるするはずです。

ですが、音読を習慣化するのは簡単ではありません。
毎日続けるだけのモチベーションを保つことは難しいからです。

そんな状況を打破するために、「音読をしたい」と思えるようなシステムを構築することが大事になってきます。

① Microsoft Teamsによる音読課題


今年度、私が重宝してきたのが、Microsoft Teamsの「音読課題」です。
これは、生徒が録音した音読をAIが自動採点してくれる優れものです。
発音の正確さや音の連結・消失、表現力などが具体的にフィードバックされ、改善すべき箇所を集中的に練習することができます。

この音読課題は、下記のように2〜3回繰り返すスタイルが効果的でした。

【1回目】
 授業で練習し、一番良くできた音声をAIに採点してもらう。授 業の最後に、「次の授業の最初に2回目の録音をします。うまくできなかった箇所を練習してきてください。良い方を評価に入れ ます」と伝える。
【2回目】
 次の授業の最初に、2回目の録音を行い、AI採点の結果を即時 返却する。結果に満足していない生徒には、家で「3回目」に取り組んでも良いことを伝える。

音読課題で、「家庭学習」(ひとり学び)を促進!

AIは良くも悪くも「正直」です。ですが、1人の教師が時間をかけて行うフィードバックを、AIは瞬時に、40人に返すことができます

また、正直だからこそ、2回目以降に点数が伸びていた時の喜びはひとしおです。

何回も繰り返して挑戦してみたくなる課題を用意することは、多くの生徒の動機づけを高めていました。

②「ロイロノート」で選択式の音読課題を用意する


私の自治体では、ロイロノート・スクールを採用しています。
これを活用して、3種類程度の音読コースを用意しています。

クラスの中には、英語が得意な生徒もいれば、そうでない生徒もいます。
学習状況に応じて、自分のレベルに合った課題を選択することができれば、達成感や成就感を得る場面も増えてきます。

これらの音読に関する実践については、
4月12日発売の『英語教育』5月号(大修館書店)にて紹介していただくことになりました。

もし興味がありましたら、ぜひ手に取っていただきたいです。
他の先生のご実践も魅力的なものばかりです!

4.次回予告


今回(前編)の言語化はここで一旦区切らせていただきます。次回は、

⑵ 「思考・判断・表現」の楽しさを実感できる課題設定
⑶ 学級をエンパワーする「協働学習」の在り方

について、実践の記録を紹介させていただきます。
ここまで長文・乱筆にお付き合いいただき、ありがとうございました!




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