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【#12】“英語好き”を育てる教師のMindset❹ 〜教育をICT化する意味【後編】〜

こんにちは!
Sakaue Wataru | English Teacherです。
4月になり、バタバタな毎日を送っています😅

どうしても授業のことを考えるのが後回しになってしまうので、noteでぼちぼち言語化して、来週からの授業開きに備えたいと思います!

***

前回の記事(前編)では、ICTを活用して子どもたちの「エンゲージメント」(課題に没頭している状態)を高めることについて考察しました。

詳細が気になる方は、こちらの記事をぜひご覧ください。

今回は、子どもたちのエンゲージメントを高めるための2つのアプローチについて考察します。

1.「思考・判断・表現」の楽しさを実感できる課題設定


⑴ よく現場で耳にする悩み

「先生、テストが難しいです」
「何を書いたらいいか分かりません」
「こんなに長い文章、自分には読めないです」

そんな声を耳にすることがないでしょうか。
声には出さなくても、心の中で叫んでいる子もいるかもしれません。

学習指導要領が変わって「3観点評価」が始まってから、特に「思考・判断・表現」の課題やテストに対してどう取り組んだらよいかわからない、といった声を同僚の先生や研修会で出会う先生方から耳にするようになりました。

単に英語を理解するのでなく、理解した上で「課題解決」に向かって考え、判断し、表現するわけですから、「難しい」と感じるのも当然と言えます。

「書く問題(課題)」であれば、相手が困っていることに対してアドバイスする初めて日本に来る外国人に何かを提案する場面や状況に応じて必要事項を自己紹介するなどです。

「読む問題(課題)」であれば、手紙を読んで簡潔に返事を書く相談に乗ってアドバイスする記事を読んでコメントを書くなどの「書く技能」まで必要になる(ただし、文法やスペルミスなどに対しては考慮する)ものも増えてきました。

⑵ 意識改革に挑戦!〜「難しい」を「やりがいがある」に〜

前節のような問題(課題)を、「難しい」と感じるのはなぜでしょうか。
1つの理由に、問題に取り組む「必然性」(なぜやるのか)「好奇心」(やってみたい!)が刺激されていないことが考えられます。

そこでポイントになるのが、「目的・場面・状況」の設定です。
子どもたちが「自分ごと」として捉えられる課題を設定します。

では、どんな時に子どもたちは学びを「自分ごと」にしたくなるのでしょうか。
前述の「必然性」「好奇心」に加えて、「自己決定できる課題」にするのがポイントです。

「自己決定理論」=「動機づけ理論」

例を挙げてみます。
下の2つの課題だったらどちらに取り組んでみたくなるでしょうか。
中学校1年生、3学期に出す課題です。

A:  過去形を使って教科書に乗っている写真を説明し合う。
B:  これまで習ってきたことを活用して、1年間の思い出を紹介し合う。

きっと、多くの人が「B」を選んだのではないでしょうか。

「自己決定理論」(心理学者Edward L. Deci & Richard M. Ryanによって1985年に提唱)によると、人には「自らの意志で行動したい」「興味や好奇心を探究したい」「自分の価値観に沿って生きていきたい」という欲求を持っています。

英語の授業においても、それらの欲求に働きかけることが、子どもたちの動機づけを刺激し、エンゲージメントを高めることにつながるということです。

単元末に設定する課題に「自己決定」の要素を入れることで、自分の表現内容を考えることが楽しくなるだけでなく、「友だちの表現に触れること」も楽しくなります。

互いの表現を楽しみ、認め合える学級風土ができれば、「難しい」よりも「やってみたい!」「知りたい!」「できるようになりたい!」といった前向きな意識を高めることが可能です。

昨年度は、以下のように「自己決定」できる課題を行なってきました。

【6年生】
●ALTに意外な一面を紹介! 
●これが我が家のオリジナル・カレー 
●外国人観光客に向けた環境啓発CM作り 
●My Best Memory  など

【8年生】(中2)
●オススメ旅行プランの提案(プレゼン) 
●4年生に贈るごんぎつねの寸劇
●帰省するALTにオススメの日本土産を提案!
●地元のガイドマップ(英語版)を作成 
●私の職場体験記  など

【9年生】(中3)
●クラスメイトに「快眠習慣」を提案(プレゼン)
●My Fave(推し)をクラスメイトに提案
●学校生活をより快適にするオススメAI活用法
●HPで発信 学校紹介(英語版)
●地元をPRするCM作り など


2.学級をエンパワーする「協働学習」の在り方


⑴「協働学習」でScaffolding(足場かけ)を行う

前節で紹介したような課題は、子どもたちをワクワクさせます。
しかし、実際に表現しようとしたときに、知識・技能の定着度や発想の有無といった「壁」にぶち当たることがあります。

そんなときポイントとなるのが、いつ、どの場面で「協働学習」を仕掛けるかということです。学習者が自力では到達できない課題でも、「協働学習」という足場かけ(scafolding)を用意することで徐々に一人で到達できる力を伸ばすことができます。

「関係性」が子どもたちの学習の質を高めてくれます。

例えば、中学校2年生で「夏にアメリカに帰省するALTにオススメの日本土産を提案する」という課題を設定したとします。個別で考えさせるだけでは、達成感を味わえない生徒もいるかもしれません。

そこで、授業では次のような手順で活動を仕組みます。

① Teacher's Talkを聞いて、「ALTが夏に母国に帰省すること」「両親にどんなお土産を買おうか悩んでいること」を確認する
② ペアで、何がよいか候補を5つ挙げる
③ ALTに質問し、両親の好み、苦手なもの、趣味などを聞き出す
 ペアで相談しながら、英語で質問する

(このとき、JTEは黒板に内容を整理・分類して可視化する)
④ 個別で提案を書く(40語程度)
⑤ グループで交流して、言語面(紹介の仕方、文法など)や内容面(論理性、適切さなど)でコメントし合う(Peer feedback)
⑥ 全体で各グループで特におすすめのお土産とその理由を交流する

⑦ JTEとALTからの助言を聞く
⑧ ⑤〜⑦を踏まえて、提案をリライトする

③、⑤、⑥のような協働学習を取り入れることで、「発想(アイデア)」「書き方」「オススメする理由」などでヒントをもらえます。

例えば、「提案する時には You should~.I recommend ~.が使える」といった言語面のヒントや、「○○ならお父さんとお母さん両方が喜んでくれる」といった内容面のヒントなどが考えられます。

このように、最初は自分一人でできないことでも、「支援者」(友だちや教師)からのサポートを受けることで、少しずつ自力でできる範囲が広がっていきます

⑵ 思考ツールが「協働学習」の質を高める

現代の教育においては、使用するツールを常に指定するのではなく、「自由に選べる環境」を整えること、そして、子どもたちの「ITリテラシー」を育てることが、使命であると感じています。

思考ツールであれば、マッピングやマンダラート、フィッシュボーンやキャンディチャートなどの思考ツールを目的や用途に応じて使い分けられる児童生徒を育てたいところです。

「自己決定」によって、学習に対して主体的に(自分ごととして)取り組む姿勢や態度につながるからです。

思考ツールの利点は、考える時の道筋(プロセス)がわかり、可視化される点にあります。そのため、学習者の頭の中身(思考)を共有しやすくなります。

例えば、中学校2年生で「地元のガイドマップ(英語版)を作成する」課題に取り組んだ時には、「フィッシュボーン」を使いました。

フィッシュボーンでは、一つの話題に対して複数の提案や理由を挙げることができるので、多面的に内容を検討することができます。
今回は「オススメする理由」を黄色のカードに上げさせ、その紹介文を緑色のカードに書いてもらいました。

こうすると、他の友達と交流した時に「その理由は自分の紹介にも使えそう!」という気づきが生まれやすくなります。

***

「できないことをできるようにする」のが私たちの仕事だと考えています。
全てをICTで解決できるわけではありませんが、子どもも、教師も、ICTを「いつでも使える武器」として携えておきたいですね。

来週から本格的に授業が始まります。
ICTの使い所や利点、目的を考え、子どもたちに「思考・判断・表現」することが楽しい!と思ってもらえるような授業を作っていこうと決意しています☺️

"It's never too late to be what you might have been."- George Eliot( 1819-1880 )
「なりたかった自分になるのに、遅すぎることなんてない」ージョージ・エリオット(英国の作家)

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